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賃貸物件がオーナーチェンジとなった場合のトラブル対処法

マンションやアパートを賃借している場合、ある日突然物件が譲渡され、賃貸人が交替する「オーナーチェンジ」が発生することがあります。

オーナーチェンジが起こった際には、新賃貸人が賃借人に対してさまざまな要求を行い、結果的にトラブルに発展してしまうケースがあります。
もし新賃貸人から理不尽な要求を受けた場合には、適切に対応する必要があるでしょう。

この記事では、入居している賃貸物件がオーナーチェンジとなった場合のトラブル例や、賃借人としての対処法などについて解説します。

1.オーナーチェンジとは?

まずは「オーナーチェンジ」とは何か、法律上の取り扱いに関する基礎知識を押さえておきましょう。

「オーナーチェンジ」とは、賃貸物件の所有者(賃貸人)が交代することを意味します。

マンションやアパートを賃貸するオーナーは、投資用としてその物件を所有しています。
したがって最終的には、どこかのタイミングで他人に物件を売却し、不動産投資の利益(または損失)を確定させる必要があるのです。

マンションやアパートについては、当然ながら入居者(賃借人)がいる状態での売却となります。
このとき、賃借人の側から見れば、賃貸人が突然交代する「オーナーチェンジ」が発生することになるのです。

旧賃貸人から新賃貸人に対する賃貸物件の譲渡は、旧賃貸人の所有権に基づいているため、オーナーチェンジは認めない等々、賃借人が異議を述べることはできません。

物件譲渡によってオーナーチェンジが発生し、その物件が旧賃貸人から新賃貸人に対して引き渡された場合、賃貸借契約上の賃貸人たる地位は、旧賃貸人から新賃貸人に移転します(民法605条の2第1項)。

ただし、賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するには、新賃貸人が当該物件に関する所有権移転登記を備えることが必要です(同条3項)。

まとめると、オーナーチェンジに賃借人の承諾は不要ですが、新賃貸人が賃借人に対して賃料を請求するには、物件の所有権移転登記が必要ということです。

不動産登記は法務局へ行けば誰でも確認できますので、賃借人としては、物件の不動産登記を確認して、所有者として登記されている者に対して賃料を支払えばよいことになります。

仮に所有権移転登記が未了にもかかわらず、新賃貸人から「オーナーチェンジしたからこれからは自分に賃料を支払ってくれ」と言われ、これを鵜呑みにして新賃貸人に賃料を支払ってしまったら、旧賃貸人にも賃料を支払わなければなりません。

新賃貸人と旧賃貸人のどちらが所有者として登記されているか、注意が必要です。

【敷金返還債務は新賃貸人に引き継がれる】
賃借人が旧賃貸人に対して敷金を預けているケースで、オーナーチェンジが発生した場合には、敷金返還債務は新賃貸人に引き継がれます(民法605条の2第4項)。
したがって賃借人は、賃貸物件から退去する際に、新賃貸人との間で敷金の精算を行えば足ります。

2.オーナーチェンジ時のトラブル例

オーナーチェンジが発生すると、新賃貸人によって賃貸物件の運営方針が変更され、新賃貸人が賃借人に対してさまざまな要求を行うケースがあります。

しかし、新賃貸人による要求は、必ずしも法的に正当なものとは限りません。
もし新賃貸人によって理不尽な要求が行われた場合、その妥当性を精査したうえで、おかしい部分はきちんと反論することが大切です。

以下では、賃借人から見たオーナーチェンジ時のトラブル例と、賃借人としての対処法について解説します。

(1) 新賃貸人から立ち退きを要求される

<事例①>
オーナーチェンジ後の新賃貸人から、契約期間満了をもって居室から立ち退くように突然要求されました。
自分の家族を呼び寄せて住まわせたいからだそうですが、到底納得できません。
立ち退きを拒否することは可能でしょうか?

これについては、新賃貸人の一方的な都合により賃借人を物件から追い出すことはできません
新賃貸人と賃借人の間には賃貸借契約が存在しており、賃貸借契約の解約には、原則として当事者双方の同意が必要だからです。

また、期間満了に伴い、賃貸人が賃貸借契約の更新を拒絶することについても、借地借家法によって厳しく制限されています。

借地借家法28条によると、賃貸人による賃貸借契約の更新拒絶は、以下の事情を考慮したうえで「正当の事由」が認められなければ不可とされているのです。

①賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情
②建物の賃貸借に関する従前の経過
③建物の利用状況
④建物の現況
⑤立退料など

事例①では、新賃貸人は「自分の家族を呼び寄せて住まわせたいから」という理由で、賃借人に立ち退きを要求しています。
しかし、賃借人は現に物件に住んでいるのですから、賃借人の側にも物件の使用を必要とする事情があることは明らかです。

したがって、新賃貸人が賃貸借契約の更新を拒絶する「正当の事由」はなく、賃借人は立ち退きを拒否できると考えられます。

[参考記事] 大家都合で賃借人に立ち退いてもらう場合の立ち退き料

(2) 新賃貸人から賃料の値上げを通告される

<事例②>
オーナーチェンジ後の新賃貸人が、来月分から賃料を値上げすることを一方的に通告してきました。
周辺の賃料相場に比べて、現在の賃料が安すぎるからだと新賃貸人は主張していますが、これ以上賃料を値上げされると苦しいです。
賃料の値上げを拒否することは可能でしょうか?

新賃貸人との間で適用される契約条件(賃料を含む)は、旧賃貸人との賃貸借契約の内容がそのまま引き継がれます。
そのため賃料についても、基本的には従前と同じ賃料を支払えば足ります

ただし、借地借家法32条に基づく「借賃増減請求権」には注意が必要です。

借賃増減請求権の規定によると、以下のいずれかの事情によって賃料額が不相当となった場合には、賃貸人の請求により、賃料が増額される可能性があります。

①土地・建物に対する租税その他の負担の増加
②土地・建物の価格の上昇その他の経済事情の変動
③近傍同種の建物の賃料と比較して、現状の賃料が安すぎること

事例②では、新賃貸人は賃料値上げの理由として、「周辺の賃料相場に比べて、現在の賃料が安すぎる」ことを主張しています。
もし新賃貸人の主張が客観的に真実であれば、借地借家法の規定に基づき、賃料の値上げが認められる可能性があります。

もちろん、新賃貸人の主張が常に正しいとは限りません。
賃借人の側としては、「周辺の賃料相場に比べて、現在の賃料が安すぎる」という事実はないことを主張して、賃料の値上げを拒否することも考えられます。

また、借地借家法32条但書では「一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」と規定されています。
このような特約があれば、賃借人の側としては賃料の値上げを拒否することができます。

[参考記事] 賃料増額請求とは?増額の要件・請求の流れ・増額条項の有効性

(3) 物件の用法に関するルールを一方的に変更される

<事例③>
これまではペット可のマンションだったのですが、オーナーチェンジによって新賃貸人となった途端に、ペット不可に変更すると一方的に告げられました。
今飼っている犬を手放すわけにもいかず、かといってマンションから退去するのも納得がいきません。
ペットに関する取り扱いを突然変更することは、法律上問題ないのでしょうか?

ペットの飼育可否など、賃貸物件の用法については、賃貸借契約または管理規約でルールが定められています。

新賃貸人が物件の用法変更を主張してきた場合、賃貸借契約と管理規約のどちらかの変更を根拠としているものと考えられます。
新賃貸人による用法変更の主張が、賃貸借契約と管理規約、どちらの変更を根拠としているかによって、法律上の取り扱いと対処法が異なります。

事例③に沿って考えますと、まず賃貸借契約においてペットの飼育を可とする規定がある場合、その規定は賃貸人・賃借人の双方を拘束します。

賃貸借契約の変更には賃貸人・賃借人双方の同意が必要です。
そのため、新賃貸人の一方的な意向によって、契約上の「ペット可」の規定を「ペット不可」と変更することは認められません。

これに対して、新賃貸人が管理規約の変更を理由にペット禁止を主張している場合には、注意が必要です。

管理規約は区分所有法に基づき、区分所有者の合意によって定められます。
そして、管理規約の変更は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数によって変更ができます。

したがって、4分の3以上が賛成すれば賃借人の意思にかかわらず管理規約が変更される可能性があり、賃借人はその変更に従わなければなりません。

もし新賃貸人の言うとおり、管理規約上の取り扱いが「ペット可」から「ペット不可」に変更された場合には、その物件でペットを飼い続けることはできなくなってしまいます。

ただし、ペットに関する従前の取り扱いを変更する場合には、「現在飼育中のペットに限り飼育可」などの経過措置が講じられるケースもあります。

いずれにしても、管理規約の内容をよく確認しましょう。

3.オーナーチェンジに関するトラブルは弁護士に相談を

オーナーチェンジの際には、旧賃貸人から新賃貸人への引継ぎに伴い、新賃貸人により、賃借人にとって不利益となるような要求が行われることがあります。

賃借人の権利は、賃貸借契約や借地借家法の規定によって守られている部分が大きいので、理不尽に思われる新賃貸人の要求は拒否できる可能性が高いです。

もしオーナーチェンジが発生した際に、新賃貸人との間でトラブルが発生してしまった場合には、弁護士にご相談ください。
賃借人としてどのような権利を主張できるのか、具体的なご状況に合わせてアドバイスいたします。

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