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建物を一時使用目的で賃貸する場合の注意点

「いったん建物を貸してしまうと、自分や家族が住む必要が生じても、借主を追い出すことは難しい。けれど、一時的な使用目的で短期の契約をするなら、明け渡してもらうことは容易である。」

このような話を聞いたオーナーが、「一時使用目的」と書いた契約書を作って賃貸に出したところ、予想に反して借主が居座り、しかも一時使用目的ではないと主張し出すというケースが珍しくありません。

たしかに、一時使用目的の建物賃貸借契約であれば、借主に退去を求めることは難しくはありません。
ところが、裁判所は、簡単には一時使用目的の賃貸借契約と認めてくれません。

この記事では、オーナーが短期に限って物件を賃貸に出したい場合にとるべき方策を説明します。

1.借地借家法の原則と例外

建物の賃貸借契約には、借家人保護を目的とする借地借家法が適用されます。

その結果、貸主がおこなう、期間の定めのある契約を終了させる更新拒絶や、期間の定めのない契約を終了させる解約申し入れには、いずれも正当事由が要求され、それが認められない限り、契約を終了させることはできません(借地借家法28条)。

また期間を1年未満とする契約は、期間の定めのない契約とみなされます(同法29条1項)。

しかも、当事者が、これと異なる特約を結んでも、借主に不利な内容であれば無効となってしまいます(同法30条)。

これでは、貸主が建物を短期間だけ貸したいと考えても、期間満了時に確実に建物の明け渡しを受けることができるとは限らないため、賃貸に出すことは大きなリスクを背負うことになります。

[参考記事] 大家都合で賃借人に立ち退いてもらう場合の立ち退き料

ただ、このような原則に対し、借地借家法は、次の3つの例外を設けています。

①定期建物賃貸借(同法38条)
②取り壊し予定の建物の賃貸借(同法39条)
③一時使用目的の建物賃貸借(同法40条)

(1) 定期建物賃貸借

定期建物賃貸借は、法が要求する一定の条件を満たす場合には、期間の定めのある建物賃貸借契約で、契約の更新がないものを有効と認める制度です。
しかも、この制度の適用がある場合は、1年未満の契約期間を定めることも許されます(同法38条1項)。

ただし、借主保護の重大な例外を認める制度なので、厳しい条件が設定されています。

例えば、契約は公正証書などの書面で締結する必要があること、契約時に予め更新のないことを明記した書類を借主に交付して説明しなくてはならないことなどが要求されています(同法38条1項、2項)。

(2) 取り壊し予定の建物の賃貸借

取り壊し予定の建物の賃貸借は、法令または契約で一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合に、その取り壊しの際に契約が終了する合意を有効と認める制度です(同法39条1項)。

法令で一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合とは、例えば、その建物の敷地が土地収用法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法などによる収用や換地処分などの対象となっているケースなどです。

契約で一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合とは、例えば、建物の敷地が借地であって、建物所有者と地主との裁判上の和解などによって、一定期間後までに建物を収去して土地を明け渡す合意がなされているケースなどです。

やはり借主を保護する観点から、この制度の適用を受けるためには、建物を取り壊すべき事由(理由)を記載した書面で合意をすることが要求されています(同法39条2項)。

(3) 一時使用目的の建物賃貸借

上記のように、定期建物賃貸借は厳格な要件が設定されており、取り壊し予定の建物の賃貸借は、そもそも適用される場面が限定されています。

そこで、建物を短期間だけ貸したいと希望する貸主が選択することが多いのが、一時使用目的の建物賃貸借です。

借地借家法は「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」には、その賃貸借契約には、借地借家法第3章の借家に関する定めを適用しないとしています(同法40条)。

この結果、一時使用目的の建物賃貸借と認められれば、借地借家法の適用はなく、民法に定められた賃貸借契約の原則規定が適用されることになり、正当事由がなくとも、期間の定めのある契約は期限の到来によって終了し(民法622条、597条1項)、期間の定めのない契約は解約申し入れ後、3ヶ月の経過によって終了させることが可能となります(民法617条)。

2.一時使用目的と認められる条件

「なんだ、それなら短い契約期間を定めて、『一時使用のための建物賃貸借だ』と主張すれば問題ないではないか」と思われるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。

借主保護のための借地借家法の規定が全面的に排除される場面ですから、裁判所はめったなことでは一時使用目的の建物賃貸借とは認めてくれないからです。

最高裁は、次のように述べています。

「一時使用のための賃貸借といえるためには必ずしもその期間の長短だけを標準として決せられるべきものではなく、賃貸借の目的、動機、その他諸般の事情から、該賃貸借契約を短期間内に限り存続させる趣旨のものであることが、客観的に判断される場合であればよい」(※最高裁昭和36年10月10日判決

これをもう少し敷衍したのが次の裁判例です。

一時使用のための建物賃貸借とされるには、契約締結の動機・目的、建物の種類・構造、賃借人の賃借目的及び契約後の使用状況、賃料その他の対価の多寡、契約期間その他の契約条件などの諸要素を総合的に勘案し、長期継続が予期される通常の借家契約をしたのではないと認めるに足りる合理的な事情が客観的に認定されなければならない(東京地裁昭和54年9月18日判決・判例時報955号99頁)

したがって、短い契約期間を定めたうえで、契約書に「一時使用目的」などと記載しただけでは借地借家法の適用を排除することは認められないのです。

契約当時の借主が、あえて借地借家法の保護を受けない契約を選択したと認める合理的な理由が要求され、しかも客観的に判断・認定されなければならないわけです。

3.一時使用目的に関する裁判例

では、どのような事情があれば、一時使用のための建物賃貸借と認められ易いのでしょうか?

一時使用のためか否かが裁判で争われるのは、貸主が一時使用のための契約であることを主張して、借主を追い出そうとする事案ですから、必然的に貸主側の事情が主張されるケースが多くなります。

過去の裁判例を少し見てみましょう。

ケース1
婚約者と1~2年のうちに結婚できる見込みであった男性が、新築家屋を購入したが、さしあたり空き家にしておくこともできないので、借主に事情を打ち明けたうえ、2年間だけの約束で賃貸したという事案で、裁判所は、実際に翌年結婚していること、権利金も家賃も相場よりも低額であることなどを指摘して、一時使用のための賃貸借と認めました(最高裁昭和43年9月6日判決・判例時報550号68頁)。

ケース2
遠隔地にある建物の所有者である貸主が、将来、貸主がその土地に転勤してきた時には、借主から3ヶ月以内に明け渡してもらうという特約を結んで賃貸借契約を結んだという事案で、貸主の希望する勤務地が受け入れられるとは限らないこと、転勤が実現する確実な見込みもなかったこと、契約の終了時期が不確定であることなどを指摘して、一時使用のための賃貸借とは認めませんでした(最高裁昭和44年9月2日判決・判例時報587号69頁)。

このように、貸主側が物件を利用する必要がある事情を主張しても、裁判所は、それだけにとらわれることなく、その主張も含めた諸般の事情を考慮してケースバイケースの判断を下しています。

【何年なら一時使用か?】
前述のとおり、契約期間を含めた契約条件は、一時使用のための賃貸借か否かを判断する事情のひとつであり、短い契約期間が定められているだけで一時使用のための賃貸借と認められるものではありません。
したがって、期間としては1年未満でなくてはならないものではありませんが(前出の最高裁昭和36年10月10日判決同旨)、最初から長期の期間が定められている場合は、短期間に限定する趣旨でないことが明らかですから、せいぜい5年程度を目安とするべきだという意見があります(※稲本洋之助他編「コンメンタール借地借家法(第2版)」(日本評論社)297頁)

4.一時使用のための建物賃貸借を結ぶときの注意点

(1) 必ず契約書を作る

定期建物賃貸借や取り壊し予定の建物の賃貸借の場合と異なり、一時使用のための建物賃貸借は、必ずしも書面での契約は要求されていません。

しかし、契約書があれば、後に一時使用のための建物賃貸借か否かが争いとなった際に、当事者がどのような意思で合意したのかを立証する重要な証拠となりますから、必ず契約書を作成するべきです。

(2) 一時使用のためであることを明記する

例えば契約書の表題を「一時使用のための建物賃貸借契約書」と記載したり、契約書内に「一時使用のための建物賃貸借契約であることを相互に確認する」との条項を記載したりしても、前述のとおり、それだけが決め手になるわけではありません。

しかし、このような文言の存在も、一時使用目的を判断する事情のひとつですから、必ず、一時使用のためであることを明記しておくべきです。

(3) 一時使用の事情(理由)を契約書に具体的に明記する

どんなに契約書に一時使用であることを明記しても、それだけでは一時使用目的であるか否かの判断に考慮されるべき詳細な事情は明らかになりません。

後の紛争を避け、万一紛争となった場合に、一時使用であることの立証を容易にするため、契約書の中に、一時使用のための契約をした具体的な事情(理由)を記載してしまうことを強くお勧めします。

例えば、貸主の息子が1年後に海外赴任から帰国して当該物件に居住する予定があり、他方、借主も工事中の新居が1年後に完成する予定があるので、1年間の短期契約に至ったという事情であるなら、その事情を書き込んでしまうのです。
書き込んだ上で、当事者が署名押印するのですから、非常に強力な証拠となります。

5.一時使用のための建物賃貸借契約書のひな形

上の説明で、一時使用のための建物賃貸借契約書に記載するべきことは明らかですが、念のため、契約書のひな形を御紹介しておきます(一般の建物賃貸借契約書と同じ部分は省略します)。

建物一時使用賃貸借契約書

賃貸人Aと賃借人Bは、本日、後記記載の建物(以下「本件建物」)について、以下のとおりの一時使用のための建物賃貸借契約を締結した。

第1条 AはBに対して本件建物を一時使用のために賃貸し、Bはこれを借り受けた。

第2条 Bは、東京都港区赤坂○丁目○番○号に新居を建築工事中(本日から6ヶ月後に完工引渡し予定)であり、工事中の仮住居として本件建物を使用するものとし、他の目的では使用しないことをAに約束する。

第3条 Aは、海外赴任中の長男Cが本契約の日から1年後に帰国予定であり、同人の帰国後には本件建物を同人の住居として使用する必要があることから、本件建物を一時使用のための賃貸借に供するものであり、Bはこれら事実を承知した。

第4条 本件建物の契約期間は、本日から1年間とし、更新はしない。契約終了後、Bは直ちに本件物件をAに明け渡す。

第5条 本契約は一時使用のための建物賃貸借なので、権利金の授受はしない。

第6条 AとBは、本契約が一時使用のための建物賃貸借であり、借地借家法第3章の適用を受けないことを相互に確認した。

以下略

6.まとめ

一時使用のための建物賃貸であることを前提に契約をしたのに、契約期限が来ても借主が退去してくれず、一時使用目的ではないと主張して居座るケースは珍しくありません。

そのような紛争を避けるために、契約時に十分な注意が必要です。お困りの際には、法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧め致します。

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