不動産に強い弁護士に無料相談【東京・神奈川・埼玉・千葉】
安心と信頼のリーガルネットワーク弁護士法人泉総合法律事務所不動産問題
不動産の重要知識

購入した土地の地下に地中埋設物|売主や不動産業者の責任は?

土地を購入した際、売買実行時には明らかでなかった地中埋設物の存在が判明した場合、場所や大きさなどによっては土地の利用に支障をきたしてしまいます。

仮に撤去工事を行うにしてもかなり高額な費用がかかるため、可能であれば売主や不動産業者に対して責任を追及したいところです。

そこで今回は、購入した土地に埋まった地中埋設物について、売主や不動産業者の法的責任を追及できるかどうかを解説します。

1.地中埋設物とは?

地中埋設物とは、土地の地下に埋まっている物全般を意味します。

地中埋設物の種類や大きさはさまざまであり、主な地中埋設物としては以下のものが挙げられます。

  • 以前建っていた建物の基礎部分
  • コンクリート片や屋根瓦などの建築資材
  • 使われていない水道管
  • 浄化槽
  • 井戸
  • 大きな石(転石) など

地中埋設物の中には、土地の利用に支障がないものも存在し、その場合は特に撤去工事などをせずに放置するのが一般的です。

しかし、地中埋設物が埋まっている場所や大きさによっては、予定していた建物の建築に支障をきたすなど、深刻な影響が生じて問題となるケースがあります。

2.地中埋設物に関する売主の法的責任

地中埋設物の存在が土地の利用に悪影響を及ぼしている場合、まず売主に対して法的責任を追及することが考えられます。

地中埋設物に関して、売主が負う可能性のある法的責任は以下のとおりです。

(1) 民法上の契約不適合責任

民法では、売買の目的物が、種類・品質・数量のいずれかの点で売買契約の内容と適合しない場合には、売主が「契約不適合責任」を負うものと定められています(民法562条以下)。

土地の地下に地中埋設物が存在することが原因で、契約上予定していた方法による土地の利用ができなくなった場合、土地の「品質」に関する契約不適合が存在すると評価されます。
(※例:建物を建築する目的で更地を購入したものの、巨大な転石が地下に存在したせいで、撤去工事をしなければ予定していた建物が建築できない場合)

この場合、買主は以下のいずれかの方法により、売主の契約不適合責任を追及することが可能です。

①履行の追完請求(民法562条)

契約の内容に適合する完全な目的物を引き渡すように請求できます。

地中埋設物の場合、売主側で撤去工事を実施したうえで改めて引渡しを行うことになります。

②代金減額請求(民法563条)

相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に売主が履行の追完をしない場合は、契約不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。

地中埋設物の場合、撤去工事費用相当額の代金減額が認められる可能性が高いです。

③損害賠償請求(民法564条、415条1項)

契約不適合が原因となって、買主が被った損害の賠償を請求できます。

地中埋設物の撤去工事を買主側で行った場合、撤去工事の費用などが損害賠償請求の対象となります。

④売買契約の解除(民法564条、541条または542条)

売買契約上の債務を完全に履行することが不能である場合などには、売買契約自体を解除することが認められます。

地中埋設物が存在するケースでは、撤去工事が事実上不可能であり、かつ地中埋設物の存在によって土地の利用に具体的な悪影響が生じている場合に限り、売買契約の解除が認められると考えられます。

売主の契約不適合責任を追及できる期間は、原則として買主が不適合(地中埋設物の存在)を知った日から1年間です(民法566条本文)。

ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかった場合には、期間無制限で売主の契約不適合責任を追及できます(同条但し書き)。

(2) 品確法上の瑕疵担保責任

新築住宅を対象とした売買契約の場合、民法の規定の特則として、品確法(※住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づく瑕疵担保責任が適用されます。

「瑕疵担保責任」とは、2020年4月1日施行の改正民法で「契約不適合責任」と名称変更される前の概念です。
品確法上は「瑕疵担保責任」の用語が残っていますが、実質的には契約不適合責任と同義になります。

[参考記事] 民法改正|瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

品確法95条1項では、新築住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵(契約不適合)については、売主の責任期間を10年間に延長しています。

「構造耐力上主要な部分等」は品確法施行令5条1項において定義されており、新築住宅の敷地は「住宅の基礎」としてこれに含まれます。

したがって新築住宅の敷地に地中埋設物が存在する場合、一般的な契約不適合責任よりもかなり長い期間、売主の法的責任を追及することができるのです。

なお、売主に対して請求できる内容は、一般的な契約不適合責任の場合と同様です(履行の追完・代金減額・損害賠償・契約解除)

[参考記事] 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)をわかりやすく解説

【契約不適合責任・瑕疵担保責任の免責規定は有効?】
土地売買契約の中では、売主の契約不適合責任(瑕疵担保責任)を免責する旨の規定が設けられていることがあります。この場合、免責特約の有効性が問題となります。
この点、一般的な契約不適合責任の規定は、特約によって排除が可能な「任意規定」と解されています。そのため原則として、売主が契約不適合責任を一切負わないと契約上定めることも可能です。
ただし、以下のいずれかに該当する場合には、売主の契約不適合責任(瑕疵担保責任)を免除することは認められません。
①売主が宅地建物取引業者である場合
②新築住宅が対象である売買契約の場合

3.地中埋設物に関する不動産業者の法的責任

不動産業者が土地の売買を仲介する場合や、不動産業者が自ら売主となって土地を売却する場合には、宅地建物取引業法の規定が適用されます。

宅地建物取引業法との関係では、不動産業者は買主に対して、以下の法的義務を負担します。

地中埋設物についても、不動産業者の各義務に基づく責任を追及できないかを検討しましょう。

(1) 信義則上の調査義務

宅地建物取引業者は、買主を含む取引関係者に対して、信義を旨とし誠実に業務を行う義務を負っています(宅地建物取引業法31条1項)。
これを取引上の「信義則」といいます。

信義則の中には、買主が不測の損害を被らないように、売買の対象物を十分に調査する義務が含まれていると解されます。

したがって、不動産業者は買主に対し、土地について合理的に実施可能な調査を尽くしたうえで、土地の利用上支障を生じる地中埋設物が存在しないことを確認する義務を負うのです。

どの程度の調査を尽くすべきかについてはケースバイケースですが、一般的な不動産業者が行う調査の水準を満たしているかどうかが一つの基準となります。

(2) 宅地建物取引業法上の説明義務

宅地建物取引業者は、宅地の売買またはその仲介などを行う際、買主の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項を説明する義務を負います(宅地建物取引業法47条1号ニ)。

仮に地中埋設物が存在する可能性がある場合、土地の利用に支障をきたすおそれがあることから、不動産業者はその事実を買主に説明しなければなりません。

具体的には、最低限以下の事項について、適切な調査を行ったうえで重要事項説明書に記載しておくべきでしょう。

  • 地中埋設物に関する調査を行った範囲
  • 調査範囲内で地中埋設物が発見されたかどうか、発見された場合はその処理状況
  • 調査範囲外において、地中埋設物が存在する可能性があるものの、土地の利用に支障はないと考えられる旨

不動産業者が上記の説明義務を怠った場合、買主に対して債務不履行(民法415条1項)に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

[参考記事] 宅建業者の重要事項説明について

なお、宅地建物取引業者の義務は、業務の適正化を目的とした業法上の義務であるため、売買契約等における特約によって免除することはできません。

4.地中埋設物に関する売主側の法的責任が問題となった裁判例

地中埋設物につき、売主側の法的責任が認められるかどうかについては、数多くの裁判例が存在します。
その中で、売主側の法的責任が認められた例・否定された例を一つずつ紹介します。

(1) 売主側の法的責任が認められた裁判例

東京地裁平成29年10月3日の事案では、買主が売主・解体業者に対して地中埋設物の撤去費用等を請求したところ、買主の請求が認められました。

本件では、土地の売買契約に基づき、売主が土地上の建物を解体撤去したうえで、更地にして買主に引き渡す旨が合意されました。

ところが、解体業者が解体撤去工事の際、鉄筋やコンクリートガラを地中に埋め戻していたことがわかりました。

この点につき、東京地裁は解体業者に少なくとも過失があると認定、さらに解体業者を履行補助者とした売主についても帰責性を認定し、買主の請求を認めました。

(2) 売主側の法的責任が否定された裁判例

東京地裁平成19年3月26日判決の事案では、買主が売主や宅建業者に対して、説明義務違反等の注意義務違反に基づき地中埋設物の撤去費用などを請求しましたが、裁判所は買主の請求を退けました。

本件では、地中から煉瓦造り基礎・コンクリート・石積み・松矢板敷・松くいなどが発見されました。

しかし東京地裁は、地中埋設物はアスファルト舗装面から地下約55センチから約3メートルまでに位置していたことにつき、売主や宅建業者が地中埋設物の存在を容易に知り得たとは言えないと評価しました。

さらに、買主から地中埋設物に関する質問はなく、かつ買主は土地をアスファルト舗装された駐車場という現況有姿で買い取ったことが認定され、結論として売主・宅建業者の注意義務違反を認めませんでした。

5.まとめ

購入した土地の地中埋設物が、土地の利用に支障をきたしている場合、さまざまな法的理論構成を用いることで、売主や仲介業者(不動産業者)から補償を受けられる可能性があります。

もし土地の地中埋設物についてお困りの方がいらっしゃれば、一度弁護士までご相談されてはいかがでしょうか。

関連するコラム
現在、不動産分野の新規受付を停止しております。
皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。