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不動産売買

空き家の売却方法|売却の流れ・手順について

相続で空き家を取得した人などは、その空き家を利用する機会もなく持て余しているかもしれません。

しかし、空き家を放置したままだと維持コストや税金などにより確実に損をしますし、下手をすると強制的に取り壊されたり、過料に処されたりする可能性まであります。

[参考記事] 空き家は強制的に壊される!?行政代執行の手続き・注意点

そういったリスクを避けるために、不要な空き家は早めに売却してしまうことをお勧めします。

本記事では空き家を抱えるリスクと、空き家を売却するときの流れをご説明します。

1.空き家を放置するリスク

「空き家なんて放っておいても大丈夫なのでは?」と考えてはいけません。
空き家を放置すると、以下のようなリスク・デメリットが生じます。

(1) 維持コストがかかる

まず、不動産は保有しているとそれだけで固定資産税がかかります。
その不動産を利用しているかどうかは関係ないため、空き家にも税金がかかるのです。

なお、2015年(平成27年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことにより、倒壊の危険がある空き家や、ゴミだらけで衛生上有害な空き家などは、「特定空き家」として指定されることになりました。

特定空き家には固定資産税が軽減される住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が6倍に跳ね上がることになります。

さらに、特定空き家に指定され、改善命令にも従わなかった場合には50万円以下の過料が科される可能性があります。

(2) 税制面の特例が使えなくなる

被相続人(故人・不動産の元の持ち主)の死亡から3年10ヶ月以内に不動産を売却すれば「取得費加算の特例」、または被相続人の死亡から3年を経過する日の属する年の12月31日までに不動産を売却すれば「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」を利用できることがあり、売却益にかかる税金が安くなります。

言い換えれば、これらの特例を使うには期限までに空き家を売却しなければなりません。
期限を過ぎてから売却すると余分な税金を納めることになります。

(3) 劣化が進み不動産価値が下がる

空き家は劣化が早いです。管理する人がいないと腐敗や破損が進んでいき、やがては倒壊の危機を迎えます。

「住む人がいないから壊れても問題ない」というわけにはいきません。倒壊の際にたまたま通りがかった人が巻き込まれるかもしれませんし、倒壊によって他人の財産を破損・汚損させる可能性もあります。

そういったことが起きた場合、空き家の持ち主は損害を賠償する責任を負います。

また、劣化の進んだ空き家は衛生的にも景観的にも問題があり、近隣物件にまで迷惑をかけてしまいます。
不動産価値も下がり、長く放置すればするほど思うような値段で売却できなくなります。

(4) 犯罪に使われるリスクがある

劣化した空き家があると、その空き家の中や敷地にゴミを捨てられるなどする可能性があります。
不法投棄の実行者がわからない場合、空き家の持ち主が自腹で廃棄費用を負担して対応せざるを得なくなるでしょう。

さらに、犯罪者が空き家に隠れたり、放火の被害に遭ったりする危険性も0ではありません。空き家を放置しておくと思わぬ事態になりかねないと考えるべきでしょう。

2.空き家売却の流れ

「空き家は売るべき」と言っても、何をすれば良いかわからない人が多いでしょう。

次に、空き家売却を実際の流れに沿って説明していきます。

(1) 空き家の状態を確認する

まずは空き家の状態を確認しましょう。
築20年を目安にして、以下のような形で売却することが考えられます(必ずしもこの方法でなければならないということはありません)。

  • 築20年以下(空き家に居住できる状態):「中古住宅」として売却
  • 築20年超(空き家への居住が難しい状態):「古家付き土地」として売却
  • 空き家の劣化が激しい(倒壊の恐れがあるなど):更地にして売却

「古家付き土地」とは、土地の上の建物に経済的な価値がなく、建物があっても「土地」として販売されるものです。

古家付き土地を買った人は、基本的に建物を撤去して土地を活用します。撤去費用がかかるため、安めの値段で取引されます。

[参考記事] 古家付き土地の売却のポイント・注意点

(2) 中古住宅or古家付き土地の場合

まずは、土地に建物がある状態で売却するときの流れを説明します。

①査定

不動産会社に査定を依頼し、どの程度の価格で売れそうなのかを査定してもらいます。できれば複数社に査定を依頼して比較検討することをおすすめします。

ネット上で複数社に一括依頼できるサービスもあるため、そういったものを活用するのも手でしょう。

②不動産会社を選定して契約する

査定額や担当者との相性なども考慮して、不動産会社と契約を結びます。

このとき結ぶ契約は「媒介契約」と言います。
媒介契約には以下の3種類があります。

  • 一般媒介契約:依頼主は複数社と同じ契約を結べる。契約中に自分で買主を探しても可。
  • 専任媒介契約:1社としか契約できない。自分で買主を探すのは可。
  • 専属専任媒介契約:1社としか契約できない。自分で買主を探すのは不可。

後半ほど自由度がなくなりますが、その代わりに業者の本気度や対応力が高くなると考えられます。

③販売価格を決める

業者と相談して空き家を売りに出す価格を決めます。

ポイントは「少し高めに設定すること」です。
いきなり安くすると相場より安値で売ってしまうことになりかねませんし、購入希望者から「もう少し安ければ買います」と交渉されたときに対応しにくくなります。

少し高い金額にしておけば値下げ交渉を受けても対応しやすいですし、購入希望者が見つからない場合は値下げすることもできます。

④購入希望者と交渉

購入希望者が見つかったら、実際の売買価格や売買時期などを交渉します。

交渉に時間がかかると税制面での優遇が受けられる期間が終わってしまう可能性があります。また、相手が別の物件を見つけてそちらに鞍替えすることもあるかもしれません。
損をしない程度に柔軟な対応を心がける必要があります。

⑤契約締結と物件引き渡し

交渉成立後、不動産会社の指示に従って売買契約等を締結します。

(3) 更地の場合

建物の状態が悪すぎると購入希望者が見つからないことがあります。
その場合は建物を解体して更地にした方が購入希望者を見つけやすく、高く売れる可能性も大きくなります

ただし、解体費用が必要なので、建物を残して売った場合と壊して売った場合のどちらが得なのかを事前によく検討しなければなりません。

不動産を売るときの流れについては、更地でも建物付きでもそれほど大きな違いはありません。

(4) 不動産業者に売る

一刻も早く空き家を売りたい場合は、不動産業者に直接買い取ってもらうという方法もあります。

購入希望者を探す必要がないため早く売ることができますし、老朽化の進んだ建物があっても買い取ってもらえる可能性があります。

売却価格はそれほど高額にならないことが大半ですが、選択肢の1つとして覚えておきましょう。

3.空き家の売却にかかる費用や税金

不動産売却時にしばしば問題となるのが費用です。
どういった費用や税金がかかるのでしょうか。

(1) 費用の内訳

解体費用

更地にする場合に必要な費用です。
空き家の規模によって異なりますが、標準的な住宅の場合でも100万円以上かかります。

登記費用

相続や売買のときに必要な登記の費用です。

司法書士に依頼する場合は司法書士に支払う費用も発生します。事前に見積もりをお願いすると良いでしょう。

また、登記に必要な戸籍関係の書類を取得するお金も必要ですが、こちらは基本的に数千円程度で済みます。

仲介手数料

不動産業者に支払う手数料です。
手数料の上限額は法律で決まっており、400万円以上で不動産が売れた場合は以下の数式で上限額を導き出せます。

「売却価格×3%+6万円+消費税」

ただし売却価額400万円以下の空き家を売る際に現地調査などの費用が発生した場合、最大18万円(税抜)までの手数料の請求が例外的に認められています。

(2) 税金

税金は特例が多いため、ここでは原則的な数字の紹介に留めます。

譲渡所得税・住民税・復興特別所得税

空き家を売却して出た利益に対して課税されます。

売却した空き家を保有していた期間によって税率が変わります。

  • 保有期間が5年以内:譲渡所得税率30%、住民税9%、復興特別所得税63%
  • 保有期間が5年超:譲渡所得税率15%、住民税5%、復興特別所得税315%

保有期間には「故人がその家を所有していた期間」も加算できます。故人が5年を超えて所有していた家を相続直後に売却した場合は、保有期間5年超のときの税率が適用されます。

これらの税金に関しては、先に述べた「取得費加算の特例」や「空き家の発生を抑制するための特例措置」などの特例を使って納税額を下げられるケースがあります。特例をうまく活用して税負担を軽減しましょう。

登録免許税

相続登記や所有権移転登記の際に必要です。

  • 相続登記の場合:固定資産税評価額の4%
  • 所有権移転登記の場合:固定資産税評価額の2%
  • 空き家に抵当権が設定されている場合の抵当権抹消登記:不動産1つにつき1,000円

印紙税

不動産売買契約書などに貼付する印紙の額です。不動産売買契約書に記載された金額によって異なります。

不動産売買契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成されるものについては、軽減措置がとられており、5,000万円までなら以下の印紙税がかかります。

契約書に記載された金額 印紙税額
1万円未満 (非課税)
1万円~10万円以下 200円
10万円超~50万円以下 200円
50万円超~100万円以下 500円
100万円超~500万円以下 1,000円
500万円超~1,000万円以下 5,000円
1,000万円超~5,000万円以下 10,000円

4.空き地の放置は厳禁!早めに不動産売買を

空き家を放置しても得になることはほぼなく、損失の方が大きいです。
今後活用する予定もないのであれば売却してしまうべきです。早めに行動に移さなければ、税金が高くなるなどのデメリットもあります。

仮に税制的な優遇を受けられる期間が過ぎていたとしても、早く空き家を手放すこと自体がリスク回避となり、メリットにもなります。

できるだけ早く専門家に相談して、不要な空き家について対応することをお勧めいたします。

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