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建物明渡し

家賃滞納されたときの立退き請求の方法とやってはいけないこと

賃借人が家賃を滞納した場合、賃貸人としては予定通りの賃料収益が得られませんので、早く滞納状態を解消したいところです。
特に、滞納状態が長く継続している場合には、賃借人を立ち退かせて、新たな賃借人と契約を結びたいと考えることでしょう。

賃借人に対する立退き請求は、法律に則った手続きに従って行う必要があります。
無理やり立退きを迫ることは、違法となったり、最悪の場合犯罪に問われたりする可能性もあるので注意しましょう。

この記事では、賃借人が家賃を滞納した場合における立退き請求の方法や、賃貸人がやってはいけないことなどを中心に解説します。

1.家賃滞納された賃貸人がとれる対抗手段

賃借人が家賃を滞納した場合、賃貸人としてとることのできる法律上の手段は、主に「差押え(強制執行)による賃料回収」と「立退き請求」に二分されます。

(1) 賃借人の財産を差し押さえて賃料を回収

賃借人による家賃の滞納は「債務不履行」(民法415条1項)に該当し、賃貸人は賃借人に対して、滞納分の賃料を支払うように請求する権利を有します。

賃貸人としては、まずは口頭や内容証明郵便などで支払いの催告を行い、賃借人から任意の支払いが得られるようにアプローチを試みることになるでしょう。

しかし、それでも賃借人が滞納分の賃料を支払わない場合には、裁判所による支払督促や訴訟といった法的手続きを経て、さらに「強制執行」の手続きをとる必要があります。

強制執行の手続きでは、裁判所の命令によって、賃借人の財産が差し押さえられます。
そして、その財産を換価・処分等した代金が、滞納賃料の弁済に充てられます。

(2) 立退き請求をする

また、賃借人による家賃の滞納がある程度長期間に及んだ場合には、賃貸人から賃借人に対する意思表示により、賃貸借契約を解除できる場合があります。

賃貸借契約が解除されれば、賃借人がその物件を占有する権限がなくなります。
したがって、賃貸人は賃借人に対して、物件からの立退きを請求することが可能となるのです。

立退き請求の具体的な方法については、次の項目で解説します。

2.立退き請求の方法とメリット・デメリット

実際に立退き請求を行う際に、賃貸人が取り得る方法としては、主に「任意の明渡しを求めて交渉を行う」か「明渡請求訴訟を提起する」かの2つが考えられます。

それぞれの方法の概要について、メリット・デメリットとともに解説します。

(1) 任意の明渡交渉を行う

立退き請求の第一段階としては、賃貸人から賃借人に対して連絡をとり、任意で物件から立ち退くように交渉するのが一般的です。

[参考記事] 賃料滞納による建物明渡請求の流れ

弁護士を代理人として明渡交渉を行えば、法律論を踏まえた冷静な話し合いが期待されるほか、賃貸人としても交渉に要する手間や時間を節約できます。

任意の明渡交渉を行う主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

①任意の明渡交渉のメリット

訴訟に発展することなく任意の明渡しが実現すれば、早期解決が図れる大きなメリットがあります。

賃貸人にとって、立退き問題を早期に解決することは、賃料収入に直結するきわめて重要な問題です。
そのため、賃借人側の要求を多少受け入れて譲歩をしたとしても、トータルでは賃貸人にとって良い結果となる可能性があります。

また、任意の交渉により立退きが実現する場合、裁判費用がかからず、また弁護士費用も比較的低額に抑えられることが多いので、手続き費用の面からもメリットがあるといえます。

②任意の明渡交渉のデメリット

これに対して、任意の明渡交渉の大きなデメリットは、賃借人側が必ずしも立退きに応じるとは限らない点です。

法的には賃貸人側の言い分に正当性があるとしても、任意の交渉である以上は、解決には賃借人側の同意が必要となります。
もし立退きについて賃貸人が応じない場合には、結局明渡請求訴訟を提起せざるを得ず、交渉にかかった時間などのコストが無駄になってしまいます。

また、任意の交渉により立退きを実現するには、交渉を早期にまとめるため、賃借人側の提示する条件をある程度受け入れる必要が生じる可能性があります。

たとえば滞納賃料の一部を免除したり、合意から数か月間は(次の住居を探す期間などとして)物件に留まることを認めたりするなどの妥協は、ある程度覚悟しなければなりません。

(2) 明渡請求訴訟を提起する

任意の明渡交渉が奏功しない場合には、明渡請求訴訟を提起して、立退きを命ずる判決を求めることになります。

明渡請求訴訟の手続きには、準備に多大な手間がかかり、かつ法的な検討がいっそう重要となるため、弁護士に代理人就任を依頼することをお勧めいたします。

明渡請求訴訟を提起することの主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。

①明渡請求訴訟のメリット

明渡請求訴訟の判決が確定すると、確定判決の正本を債務名義として、強制執行の手続きをとることが可能になります(民事執行法22条1号)。

この場合、執行官によって鍵の交換や荷物の搬出などを行うため、賃借人が明渡しを拒否している場合でも強制的に立退きを実現できる点が大きなメリットです。

②明渡請求訴訟のデメリット

その一方で、明渡請求訴訟の判決が確定するまでには、短くても数ヵ月~半年程度、場合によっては1年以上の長い期間がかかります。

その間、賃借人が賃貸物件に居座るとすれば、賃貸人としては賃料収入を回復することができません(ケースによっては、断行の仮処分といって仮に明渡しを請求できることもあります。)。

もちろん、賃借人が賃貸物件を占有している期間に対応する賃料相当額を賃借人に対して請求することは可能です。
しかし、賃借人が無資力である可能性も高いため、結局その期間中の賃料は回収できないことも十分あり得ます。

このような時間経過による機会損失を考慮すると、和解などで任意の立退きを実現させることを目指す方が、賃貸人にとっては得策となる場合があります。

また、訴訟自体にも費用がかかります。弁護士費用や裁判所の印紙代等だけでなく、実際に立ち退いてもらう明渡しで高額な費用が発生します。

仮に明渡しを命ずる判決を得られたとしても、賃借人がそれでも立ち退かず、占有を継続した場合は強制執行手続きが必要になるからです。

最後の荷物搬出まで強制執行で行った場合は、荷物の搬出・処分費用、場合によっては解錠・鍵交換の費用などが発生します。強制執行に必要な費用は、本来は債務者(賃借人)負担のものですが(民事執行法42条1項)、回収できず賃貸人の負担になってしまうことが多いのが現実です。

以上のように、明渡請求訴訟には費用や期間でのデメリットがありますので、ご自身のケースでの具体的な対応方針については弁護士に相談しながら検討・判断するとよいでしょう。

3.家賃滞納された際にやってはいけないこと

家賃の滞納は、専ら賃借人に責任がある事柄ではありますが、賃貸人が損害を回復するにはどんな手段を用いても良いというわけではありません。

特に、賃貸人が以下のような行動をとってしまうと、逆に賃借人の側から訴えられたり、最悪の場合犯罪に問われたりする可能性があるので、十分に注意が必要です。

(1) 鍵を無断で交換する、こじ開ける

賃借人を立ち退かせるには、賃借人の意思で自ら立ち退くか、そうでなければ強制執行の手続きによる必要があります。

これに対して、賃貸人が賃貸物件の鍵を無断で交換したり、無理やりこじ開けたりする行為は、賃借人に対する不法行為(民法709条)になり得るうえに、住居侵入罪(刑法130条)や器物損壊罪(刑法261条)といった犯罪にも該当する可能性があります。

そのため、鍵を無断で交換したり、こじ開けたりすることは絶対にやめましょう。

(2) 荷物を無断で搬出する

賃貸人が賃借人の居室内にある荷物を無断で搬出する行為についても、やはり賃借人に対する不法行為や、住居侵入罪などの犯罪に該当する可能性があります。

たとえ居室の鍵がたまたま開いていたとしても、居室内に勝手に入って荷物を搬出することは、厳に慎まなければなりません

(3) 威圧的な言動で家賃の取り立て、退去の強制

賃貸人が賃借人に対して滞納家賃の支払いを請求すること自体は、法律上認められた権利です。

しかし、暴言や脅迫的な言動など、社会的相当性を逸脱した方法を用いて滞納家賃の請求を行った場合、恐喝罪(刑法249条1項)などに問われる可能性があります。

滞納家賃の支払い請求は、あくまでも紳士的な方法により、法律に則って行うことが大切です。

(4) 深夜や早朝に家賃の取り立て、退去の強制

深夜や早朝に滞納家賃を取り立てたり、賃借人に退去を迫ったりする行為も、やはり社会的相当性を逸脱したものと評価される可能性が高いです。

このような行為は、恐喝罪などの犯罪に問われる可能性があるほか、賃借人や周辺住民から騒音による生活権侵害などを理由に訴えられてしまうおそれもあるので、絶対にやめましょう。

(5) 玄関先に催告書などを貼り付ける

賃借人の居室に滞納賃料の支払いや退去を求める催告書などを貼り付けると、賃借人による家賃滞納の事実が周辺住民に知られてしまいます。

家賃滞納自体は違法行為ですが、それを賃貸人が無断で周辺住民に知らしめることは、賃借人に対する名誉毀損として、不法行為や名誉毀損罪(刑法230条1項)などに当たりかねません。

したがって、滞納賃料の請求や立退き請求は、内容証明郵便などのプライベートなやり取りによってのみ行いましょう。

4.家賃滞納を防ぐための方法

滞納家賃の支払いや立退きの請求に関するトラブルが生じてしまうと、賃貸人としては対応に苦慮する可能性が高いです。
そのため、未然に家賃の滞納を防ぐことができれば、それに越したことはありません。

以下では、家賃の滞納が生じることを防ぐために、賃貸人がとり得る方法を紹介しますので、今後の参考にしてください。

(1) 入居時の審査をきちんと行う

家賃の支払いがきちんと行われるかどうかは、賃借人の「質」に依存する問題です。

賃貸人としては、賃借人の収入・資産などの財務状態に加えて、「信用できる人かどうか」という観点も踏まえて、入居時審査をきちんと行うことが大切です。

入居審査を管理会社に任せる場合は、実績やサービス内容などの面から、信頼できる管理会社に依頼することが重要になるでしょう。

(2) 口座引き落としによる支払いを義務付ける

現在では、多くの賃貸借契約において家賃の支払いは口座引き落としの方法が採用されていますが、中には依然として手渡しや都度振り込みでの家賃支払いが行われているケースもあります。

手渡しや振り込みでの支払いの場合、手間が生じますし、賃借人の都合で支払いが遅れたり滞ったりするリスクも高くなります。
家賃滞納によるトラブルが心配な場合は、この機会に口座引き落としによる家賃支払いを義務付けるのも効果的です。

(3) 保証会社を保証人とすることを義務付ける

実際に家賃滞納が発生した場合に備えて、賃貸借契約から生じる債務を連帯保証人に保証させることも有力な方法です。

連帯保証人には賃借人の家族を据えるケースもありますが、家賃の回収をより確実なものにするためには、保証会社による連帯保証を義務付けるとよいでしょう。

ただし、保証会社による連帯保証には「保証料」がかかるため、実質的な家賃の値上げとなり、借り手が付きにくくなる可能性がある点には注意が必要です。

(4) 敷金を差し入れさせる

家賃滞納の懸念が大きい場合は、「敷金」を多めに差し入れてもらうことも検討しましょう。

敷金は、賃貸借契約から生じる債務の一切を担保する性質を持ち、滞納家賃についても敷金からの充当によって回収することができます。

敷金の金額は「家賃の〇か月分」という形で定められることが多いですが、何か月分が相場であるかは地域によって異なります。
周辺の敷金相場を見極めつつ、家賃滞納への備えとして十分な金額を差し入れてもらうようにしましょう。

5.まとめ

賃借人が家賃を滞納した場合、賃貸人としては一刻も早く賃借人を立ち退かせて、家賃収入を回復したいところです。

しかし、実際に立退きを実現するためには、交渉や訴訟による根気強い対応が必要となります。
その中で、できる限り早期・円滑に立退きを実現するためには、弁護士のサポートを受けることをお勧めいたします。

弁護士は、賃借人の出方を見ながら、立退きの実現に向けた適切な対応を検討し、実際の交渉・訴訟などの手続きについても全面的に代行いたします。

賃借人による家賃の滞納にお悩みの賃貸人の方は、お早めに泉総合法律事務所までご相談ください。

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