ここでは、不動産の競売と共有について、それぞれ解説いたします。
不動産の競売
不動産が競売にかけられると言っても、実際にどのようなときに、どのような流れで競売が進むのかご存じの方はあまり多くないと思います。
以下では、不動産の競売に関する基本的な事項を簡単にご説明いたします。
不動産の競売とは
不動産の競売とは、債務が弁済できなくなった債務者の不動産について、債権者の申立てにより、裁判所が差押えて売却し、債権を回収する手続をいいます。
シンプルな例では、住宅ローンを返済できなくなったときに抵当権を実行され、住宅を競売にかけられるというものがイメージしやすいでしょう。
不動産競売の流れ
不動産の競売は、大要以下のような流れで進みます。
①公告
入札期間の2週間前まで(通常は15日前)に、売却される不動産・最低売却価格・入札期間の日時場所等が公告されます。
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②購入を希望する人が物件明細等を閲覧
民事執行センターが提供するBIT(不動産競売物件情報サイト)で確認できるほか、例えば東京であれば民事執行センターにある物件明細書等閲覧室でも閲覧可能です。
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③入札期間
多くの場合は8日間です。なお、入札時には保証を提供する必要があり、売却基準価額の20%であることが多いです。
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④開札期日
入札期間内に入札した人のうち、最も高い買受価格を出した人(最高価買受申出人)を定めます。
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⑤売却許可の決定
売却決定期日に、最高価買受申出人に売却するかどうかが決定されます。通常は許可されることが多いです。
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⑥代金納付期限の通知
⑤の決定が確定後、1ヶ月程度以内の指定で代金納付期限を通知されます。
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⑦代金納付(所有権取得)
銀行振込を行い、保管金受入手続添付書を裁判所に提出するのが通常の方法ですが、現金で裁判所に納付することも可能です。
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⑧登記及びケースにより引渡命令
登記は、裁判所から登記官へ嘱託されます。買受人が引き受ける権利以外の不動産上の権利等の登記は、原則として抹消されます。
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⑨不動産の引渡し
所有権を取得した不動産について不法に占有する者がいる場合、代金納付日から6ヶ月以内に裁判所に引渡命令を求めることができます。この命令が確定すると、強制執行の手続きが可能になります。
不動産競売で落札するメリット・デメリット
不動産競売による落札のメリット
競売によって不動産を買い受けるメリットは、①市場価格よりも安価で物件を購入できることです。また②物件に付着した抵当権はすべて抹消されます。さらに、③競売手続によって売却される物件は、月に150件にも及ぶこともあり、豊富な物件の中から選択することができます。
不動産競売による落札のデメリット
反対に、競売によって不動産を買い受ける場合には、デメリットもあります。
まず、①物件明細書・現状調査報告書・評価書という資料の閲覧のみが認められ、物件の内部を調査することが原則として認められません。
そして、②現金での一括払いしか認められず、資金調達が困難です。
なお、民法改正前(2020年3月31日まで)は、③瑕疵担保責任が競売には認められず、見た目ではわからない瑕疵があった場合であっても、契約を解除するといったことは一切できませんでした(旧民法570条ただし書)。
これは非常に大きなデメリットと言えます。
民法が改正された現在では、「種類又は品質に関する不適合」以外は、解除または代金減額請求が可能です。
もっとも、不動産競売で問題となることのほとんどが「種類又は品質」であるため、事実上は、契約解除等をできないことがデメリットとなる点に変わりはありません。
不動産競売に参加する場合の大きな注意点2つ
①物件の状況を把握する
不動産競売での入札を考える場合には、第一に物件の事情・状況を十分に確認する必要があります。
特に「現況調査報告書」の「執行官の意見」は参考になりますので、必ず確認しましょう。また、「関係人の陳述等」も大切です。
②占有者への対処に苦労することがある
競売物件には権原なき占有者がいることも少なくありません。
裁判所から引渡命令を出してもらい強制執行も可能ですが、その執行費用は結局のところ買受人の負担になります。
不動産の共有
様々な事情で不動産が共有状態になることは少なくありません。相続で共有になる場合や、夫婦で購入時から共有にしている方もいらっしゃるでしょう。
以下では、不動産の共有について、メリット・デメリットや共有の解消方法、共有物を賃貸に出している場合などについて簡単にご説明します。
不動産共有のメリット
不動産を共有にするメリットは、主に控除を多重に受けられる点です。
例えば夫婦で不動産を購入する場合、共有であれば住宅ローン控除をそれぞれが受けられるため、減税効果が高くなります。
また、売却する場合にも「3,000万円の特別控除の特例」を多重に適用することができます。例えば夫婦であれば、譲渡益に対して3,000万円×2=6,000万円の控除を受けることができるため、高額な不動産では大きなメリットになります。
不動産共有のデメリット
不動産の共有は、メリットに対して多くのデメリットがあるのが現実です。
- 共有者全員の同意がなければ変更や処分(売却)ができない
- 管理行為であっても持分の過半数の同意が必要
- 共有者の一人が亡くなると、その人の共有持分が相続人へ承継され、さらに共有者が増える可能性がある
- 住宅ローンを組む際に手数料などが増額することがある
不動産の共有を解消する方法
上記のようなデメリットを踏まえ、不動産の共有状態を解消したい場合、次のような方法が考えられます。
①共有持分の売却
共有者間で共有持分を売買することで、一人の単独所有とする方法があります。買い取る人は自己資金を用意する必要はありますが、シンプルな共有解消方法の一つです。
なお、第三者に共有持分を売却することも可能ですが、その場合は売却した人が共有から抜けて他の人が共有者になるだけであり、共有の解消にはなりません。
②共有持分の放棄
民法では、共有持分を放棄すると他の共有者に帰属するとされています(民法255条)。そのため、1人を残して他の共有者が持分を放棄すれば、共有状態が解消されます。
③分筆する(土地の場合)
共有不動産が土地の場合、「分筆」といって登記上で土地を分けることで、その分けた土地をそれぞれの単独所有とすることも可能です。
なお、分筆によって土地が小さくなり活用しづらくなる点や、土地の価値に応じて共有者全員が納得できる分筆方法を考える必要があるため、必ずしも理想的な方法とは言えません。
④共有物分割請求訴訟
上記のような方法で共有解消について共有者間の協議が整わない場合は、裁判所に分割(共有名義の解消)を請求することができます(民法258条)。
⑤共有不動産を売却する
共有不動産自体を第三者に売却し、その売却代金を共有者で分配する方法も考えられます。
共有している不動産が特に必要なく、全員が合意できる場合は、一つの選択肢になるでしょう。
共有不動産と賃貸借
ここまで、不動産の共有について一般的な解説をしてきましたが、最後に、共有不動産が収益物件である場合(アパートなどを共有している場合)について解説します。
賃貸借では、賃借人との関係で、賃貸借契約の締結、賃料の増減額、契約の解除など、様々な行為が必要になります。
通常の単独所有であれば一人で意思決定できますが、共有不動産の場合はどうなるでしょうか。
共有物の扱いについては管理、変更、保存という3つの分類があり、賃貸借契約の締結など具体的な行為がこの3つのどれに該当するかによって、賛成者の割合がどの程度必要か、変わってきます。
- 変更:共有者全員の賛成が必要(民法251条)
- 管理:共有持分の過半数の賛成が必要(民法252条本文)
- 保存:共有者単独で可能(民法252条ただし書)
賃貸借に関する行為は、そのほとんどが「変更」または「管理」に該当します。
それぞれの代表的なものをまとめると、以下の通りです。
「変更」に該当するもの
- マスターリース契約など一部の賃貸借契約における賃料の増減額
- 賃貸借契約の締結・更新(借地借家法の適用があるか、短期賃貸借の範囲を超えるもの)
「管理」に該当するもの
- 一般的な賃貸借契約における賃料の増減額
- 賃料の支払い方法の変更
- 賃貸借契約締結・更新の一部(多くは変更になります)
- 賃貸借契約の解除
- (共有物が土地の場合)借地人の借地権譲渡への承諾
「保存」に該当するもの、単独でできるもの
- 共有物の修繕
- 賃貸借契約終了後の明渡請求
- 管理、変更であっても、既に合意した内容の実行
共有不動産の賃貸借は、賃借人との関係もあって混乱しやすい問題の一つです。お困りの際は、ぜひ泉総合法律事務所までご相談ください。