他人の土地を無断使用すると罪になる?正しい対処法を解説
普段使用していない土地を所有している場合、所有者も気づかないうちに他人が勝手に土地を利用しているということがあります
たとえば、他人が勝手に物を置いていたり、駐車場に利用したりしているといったケースです。
このような場合には、勝手に土地を利用している人に対してどのように対処したら良いのでしょうか。
今回は、他人に勝手に自分の土地を使われている場合の対処法について解説します。
1.他人による土地の無断使用の例
土地の無断使用は、意外とよくあるトラブルです。他人による土地の無断使用の具体例としては、以下のものが挙げられます。
- 他人の土地に物を置く
長年放置している土地の場合には、業者が勝手に資材置き場にしたり、近隣住民が荷物を置いたりすることがあります。 - 他人の土地に無断駐車する
近隣住民が駐車場として勝手に利用していることがあります。 - 他人の土地に不法投棄をする
きちんと土地の管理をせずに、雑草などが伸び放題の状態だと、ゴミや産業廃棄物を不法投棄されることがあります。ゴミや産業廃棄物の投棄を放置していると、次から次へとゴミなどが持ち込まれるリスクがあります。 - 空き家に住み着かれる
使っていない建物がある場合には、ホームレスや犯罪者が住み着いてしまうこともあります。 - 土地の境界をはみだしている
住宅密集地や古い住宅街などでは、土地の境界が不明確であるために、隣の住人が境界線をはみ出してブロック塀や建物などを建てていることがあります。
2.土地の無断使用をされた場合に請求できるもの
自分の所有する土地が他人に無断使用された場合には、どのような請求ができるのでしょうか。以下では、民事上の請求と刑事上の請求について説明します。
(1) 損害賠償や慰謝料の請求は可能?
土地の無断使用をされた場合には、土地の所有者の権利を侵害する行為ですので、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償請求をすることができます。
「普段使用していない土地だから損害はないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、そのような土地であっても損害賠償を求めることは可能です。
この場合の損害としては、土地の使用料相当額であり、たとえば、他人が駐車場として利用していたのであれば、近隣の土地の駐車料金の相場を請求することができます。
また、土地の所有者のなかには、上記の土地使用料相当額の他にも「勝手に土地を使われた腹が立ったから慰謝料を請求したい」と考える方もいるかもしれません。
慰謝料とは、他人による違法な行為によって精神的苦痛を被った場合に支払われる金銭ですが、土地の無断使用の場合には、土地使用料相当額の賠償によって土地所有者の損害は回復されると考えられています。そのため、土地使用料相当額に加えて、慰謝料を請求することはできません。
(2) 刑事罰はある?
他人の土地を勝手に使用する行為は、刑法上の不動産侵奪罪に該当する可能性があります(刑法235条の2)。
不動産侵奪罪とは、不動産に対する他人の占有を排除して、自己または第三者の占有に移すという犯罪です。たとえば、他人の土地に勝手に家を建てたり、資材置き場として土地を利用したりするような行為を指し、土地の所有者が不動産を侵奪されていることを認識しているかどうかは問われません。
不動産侵奪罪の法定刑は、10年以下の懲役と規定されています。不動産侵奪罪は故意犯ですので、他人の土地とは知らずに使用していたというような境界の越境事案については、適用はありません。
3.土地の無断使用の対策方法
他人による土地の無断使用が判明した場合には、以下のような対策を講じるようにしましょう。
(1) 境界線をはっきりと決める
土地の無断使用の事案には、他人の土地であると知りながら無断で使用する事案だけでなく、土地の境界が不明確であることが原因で他人の土地であると知らずに使用してしまう事案があります。
後者の事案のような越境トラブルを解決するためには、土地の測量を行うなどして土地の境界を明確にする必要があります。
土地の境界を明らかにした上で、越境していることが判明した場合には、越境部分を買い取ってもらうか、取り壊し時に正しい境界に戻す内容の覚書を作成するなどの対応をするとよいでしょう。
(2) 土地の明渡し請求
土地の無断使用をしている人は、当該土地を利用する正当な権限を有していませんので、土地の所有者は無断使用者に対して、土地の明渡しを請求することができます。
①無断使用者の特定
土地の明渡しをする場合には、まずは、土地の無断使用をしている人を特定しなければなりません。土地を駐車場として利用しているのであれば、車のナンバーから特定することができる可能性があります。
土地上に荷物を置かれているという場合には、誰が荷物を置いたのかを特定するために、土地を監視して、荷物の運び入れをしている人物・業者を調べる必要があります。
②内容証明郵便の送付
無断使用者が明らかになった場合には、土地の明渡しを求める文書を内容証明郵便で送りましょう。
内容証明を送る際には、土地の明渡しの期限を設定し、「〇日以内に明け渡さない場合には、裁判などの法的措置をとる」といった内容で送るとよいでしょう。
③土地の明渡請求訴訟
内容証明郵便を送っても相手が土地を明け渡さないときや誠意ある対応がない場合には、土地の無断使用者に対して、土地の明渡訴訟を提起します。
そして、明渡しを認める判決を得た場合には、強制執行を申し立てることによって、土地の明渡しを実現することができます。
(3) 損害賠償請求
既に説明したとおり、他人の土地を無断で使用する行為は、所有権を侵害する行為ですので、不法行為を理由として、土地の無断使用者に対して損害賠償請求をすることができます。
損害賠償請求をする場合には、一般的に上記の土地の明渡しと一緒に行いますので、任意に明渡しを行わない相手に対しては、土地の明渡請求訴訟とともに損害賠償請求訴訟も提起します。
なお、土地の明渡しの強制執行の際に要する費用については、法律上は相手から支払いを受けることができるという建前になっていますが、土地の無断使用の事案では、相手が行方をくらましてしまう・資力がないなどの理由で費用の回収をすることが困難なことが多いです。
4.まとめ
他人に土地が無断で使用されている場合には、土地の所有者は、法的手段によって土地の明渡しや損害賠償請求をすることができます。
自分の土地だからといって、土地上の物を勝手に撤去したり、壊したりしてしまうと、土地の無断使用者から逆に訴えられてしまうおそれがありますので注意しましょう。
訴訟手続きや強制執行の手続きは非常に専門的な手続きになりますので、他人による土地の無断使用でお悩みの方は、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。