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不動産の重要知識

家族信託で必要な不動産登記

不動産を信託財産とした場合には、家族信託契約を締結するだけでは足らず、不動産登記を行うことになります。

今回は、家族信託における不動産登記について詳しく解説します。

1.家族信託で必要になる主な登記

家族信託で不動産を信託財産とした場合、家族信託を終了した場合には、信託登記所有権移転登記の2つの登記を行います。
この2つの登記の家族信託における役割についてご説明します。

(1) 家族信託における信託登記

信託登記とは、信託契約の内容を登録しておくための登記です。

信託法には、受託者には財産の分別管理義務があり、受託者の固有財産と信託財産とを明確に分けて管理しなければなりません。

信託財産の種類によって分別管理の方法は様々ですが、不動産の場合には信託登記がそれに該当するため登記する義務があります(信託法第34条第1項第1号)。

登記事項は法律で規定されており(不動産登記法97条)、以下11項目の事項を家族信託の設定時に登記する必要があります。

登記事項

  1. 委託者・受託者・受益者の氏名(名称)・住所
  2. 受益者の指定の条件・受益者を定める方法
  3. 信託管理人の氏名(名称)・住所
  4. 受益者代理人の氏名(名称)・住所
  5. 受益証券発行信託の場合はその旨
  6. 受益者の定めのない信託の場合はその旨
  7. 公益信託の場合はその旨
  8. 信託の目的
  9. 信託財産の管理方法
  10. 信託の終了事由
  11. その他の信託の条項※

※「11.その他の信託の条項」については、登記すべき内容に決まりはありません。
信託による権利関係を公示するためや、不動産を処分する場合などに内容確認できるように、受託者や信託の変更、受益権の譲渡制限など、家族信託契約書の中から不動産に関する項目を抜き出して登記しておきましょう。
また、信託不動産の売却時や家族信託の終了時には、信託の抹消登記をしなければなりません。

(2) 家族信託における所有権移転登記

家族信託設定時には、信託登記と同時に、その不動産の名義を委託者から受託者へ移転するために所有権移転登記を行います。

信託不動産は実質的には委任者の所有物ではありますが、財産の管理処分権は受託者が有しており、形式的には受託者の所有物とみなされます。したがって、信託を原因として委託者から受託者へ所有権を移転させることになるため、所有権移転登記を行います。

この場合の所有権移転登記は、委託者と受託者が共同で申請を行います。権利に関する登記は、原則として登記権利者と登記義務者が共同で申請しなければならないと、不動産登記法60条に規定されているからです。

ただし、所有権移転登記については信託登記とは異なり、現時点において法的な義務はありません。しかし、家族信託をしていることを第三者に主張できるようにするためには、信託設定時に所有権移転登記が必要になります。これを「対抗要件」といいます(民法177条)

例えば、所有権移転登記を行っていない状況で、委託者が第三者に所有権移転登記をしてしまったとします。すると、受託者は自分の権利を主張できないうえに、自分の判断で不動産の管理運用ができなくなるため、家族信託の意味が大きく損なわれてしまいます。

家族信託終了時には、残った信託財産が、通常の所有財産に戻り、信託契約で定めた帰属権利者に所有権が移転することになり、残った財産に不動産が含まれていれば、所有権移転登記を行うことになります。

また、信託不動産を売却した際にも、通常の不動産と同様に所有権移転登記を行います。

2.家族信託における登記のタイミング

では次に、家族信託における登記のタイミングを考えてみます。

(1) 家族信託の開始時

家族信託契約を締結したら、速やかに信託登記と所有権移転登記を行います。登記の目的には、「所有権移転および信託」と記載し、家族信託の契約成立日を登記原因日付として「信託」が登記原因となります。

(2) 受託者の変更時

受託者が死亡した場合や、辞任・解任した場合などには新たな受託者への所有権移転登記が必要になります。

登記の目的は、「所有権移転」となり、登記原因である「死亡」「辞任」「解任」などと登記原因が発生した日付を記載することになります。

(3) 受益者の変更時

また、受益者の相続が発生した場合や受益権を贈与する場合などには、受益者の変更登記を行います。

登記の目的は、「受益者変更」となり、登記原因が発生した日付で、「相続」「贈与」「売買」などの受益者が変更になった登記原因を記載します。

(4) 信託財産である不動産の売却時

信託不動産を売却した場合には、その不動産は信託財産から離れて購入者の固有財産になるため、売買による所有権移転登記と信託登記の抹消を行います。

したがって、登記の目的は「所有権移転及び信託登記抹消」となります。

(5) 家族信託の終了時

前述した通り、家族信託が終了した場合には、その不動産は信託不動産ではなくなり、信託登記の抹消と、信託財産の所有権を委託者に戻す、または帰属権利者へ移すための所有権移転登記を行います。

登記の目的は、「所有権移転登記及び信託登記抹消」になり、登記原因は「所有権移転」「信託財産引継」「信託登記抹消」」となります。

以上をまとめると、下表の通りとなります。

タイミング 必要になる登記
家族信託開始時 信託登記
所有権移転登記
受託者の変更時 所有権移転登記
受益者の変更時 受益者変更登記
信託財産である不動産の売却時 信託抹消登記

所有権移転登記

家族信託の終了時 信託抹消登記
所有権移転登記

3.家族信託にかかる主な登録免許税

家族信託にかかる主な登録免許税は次の通りです。

(1) 信託登記

信託登記の際にかかる登録免許税は、次の通りです。

【信託設定時】
土地:固定資産税評価額×0.3%
建物:固定資産税評価額×0.4%

【信託抹消時】
不動産1個につき1,000円

(2) 所有権移転登記

所有権移転登記をするタイミングによる登録免許税は、次の通りです。

【信託設定時】
・非課税

【受託者死亡や辞任・解任などによる新受託者への移転】
・非課税

【信託終了時】
信託契約で定めた権利帰属者へ所有権を移転する場合
・土地:固定資産税評価額×1.5%(令和5年3月31日まで)
・建物:固定資産税評価額×2%
自益信託での家族信託で、委託者兼受益者の死亡によりその相続人が相続する場合
・固定資産税評価額×0.4%
委託者へ所有権を戻す場合
・非課税

(3) 受託者変更登記

受託者の解任や辞任による受託者変更登記の登録免許税は、非課税となります。

(4) 受益者変更登記

受益者が死亡した場合や、受益権の贈与をした場合などにする登記に必要な登録免許税は次の通りです。

不動産1個につき1,000円

4.まとめ

家族信託に不動産を信託財産とするためには、「所有権移転登記」と「信託登記」の2つの登記をします。それ以外に、受益者や受託者の変更時にも登記をするため注意しなければなりません。

特に信託登記においては、家族信託契約書の条項をそのまま申請すればよいわけではなく、どの条項を登記するのか適切な判断が求められます。

泉総合法律事務所では家族信託の契約内容の設計から終了まで万全のサポートをさせていただきます。家族信託については泉総合法律事務所にご相談ください。

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