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不動産の重要知識

登記簿上の住所と現住所が違う場合はどうする?

不動産(土地建物)について、「誰がその所有者なのか」という情報は、法務局が管理しています。

法務局で保管されている不動産の登記情報のうち、物件の所有者に関する情報には所有者の住所も含まれており、所有者本人の特定のために重要な意味を持っています。

そのため、登記上の住所と実際の住所(多くの場合は住民票上の住所)が異なっている場合には、本当にその人がその不動産の権利者なのか、という本人の特定の問題が発生します。

「不動産の権利者が誰なのか」が問題となるのは、主に相続の場合と売却等の処分の場合です。
以下では、この二つの場面について、登記上の住所と実際の住所が異なっている場合にどうするべきなのかを見ていきます。

1.相続の場合

被相続人(つまり亡くなった方)が不動産を持っていて、登記がなされているものの、その登記された住所が被相続人の実際の住所と違っている場合です。

登記上の住所にそもそも住んでいなかった場合や、以前は住んでいたがその後転居して住所の変更登記をしていない場合が考えられます。

実は、亡くなった方の現住所(最後の住所)と登記上の住所が異なっていても、わざわざ住所変更の登記をする必要はなく、相続登記により相続人に権利が移転したことだけが登記されます。
(※すでに亡くなっている方の正しい住所を登記で公に表示する必要はないからです。)

(1) 相続登記の必要性

相続によって法定相続分を超える不動産の権利を承継したことを第三者に対抗するためには、相続登記を備えなければなりません(民法899条の2第1項)。

つまり相続登記は、相続による不動産の承継を、相続人以外の第三者にも主張できるようにして、権利の保全を図るための大切な手続きとなります。

現行法上、相続登記は相続人の義務ではありません。
しかし、2024年を目処に相続登記の義務化が予定されているので、きちんと手続きを踏んで速やかに対応しておきましょう。

(2) 相続登記の方法

相続登記の申請の際には、亡くなった方の登記上の住所から最後の住所(住民票の除票に記載された住所)までのつながりが分かる資料を提出して、亡くなった方がたしかに登記に記載された人物であることを示す必要があります。

住民票の転居先の記載を追って登記上の住所と亡くなった方の最後の住所がつながれば問題ありません。

なお、住民票の除票と戸籍の附票の保管期間は、最近の法律改正によりそれまでの5年から150年へと大幅に延びたのですが、すでに保管期間を過ぎて処分されたものについては写しを取得することができません。

従って、登記上の住所と亡くなった方の最後の住所のつながりを示す資料が入手できるかどうかは、住民票の除票や戸籍の附票が残っているか、というある意味運次第ということになってしまうのです。

【住民票の除票と戸籍の附票について】
改正前の住民票の除票は、従来定められていた保管期間が5年と短く、保管期間が切れた場合には、戸籍の附票という、住民票の移動を戸籍とセットにして保管している資料を本籍地から取り寄せる必要がありました。
この戸籍の附票も、戸籍に記載された人が全員亡くなったり、結婚などにより違う戸籍に移ったりするなどして誰もいなくなり除籍となってから5年が保管期間でした。

(3) 相続登記のための救済措置

もっとも、住民票の除票などが残っていないから相続登記はできない、という結果となるのは明らかに不当です。そのため救済措置があります。

まず、不動産の権利証(登記済証)あるいは登記識別情報通知書があれば、これで登記上の所有者と亡くなった方との同一性が証明できます。

登記済証や登記識別情報通知書は、不動産の所有権移転登記をしたときに法務局から発行される書類であり、登記をしたときに所有者本人に対して交付され、その後はどのような理由があっても再発行されません。

そのため、登記済証や登記識別情報通知書は所有者本人だけが持っているものであり、登記手続きにおいて所有者の本人確認の役割を果たしています。

相続登記において亡くなった方の最後の住所と登記上の住所がつながらなくても、所有者だけが持っている登記済証等を相続人が提出しているのだから、登記上の所有者の相続人で間違いないだろうとして手続を行うことが、登記実務上認められているのです。

さらに、登記済証等も見つからない場合には、相続人全員からの上申書を提出することによる相続登記手続が認められています。

この上申書は、「登記上の所有者が間違いなく亡くなった方である」ということを、相続人全員が法務局に対して書面で申告するものです。上申書は、相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付します。

この上申書だけでは足りず、戸籍の附票等の廃棄証明書や不在籍証明書、不在住証明書、固定資産税の課税明細書などの資料の提出を求められる場合もあります。

2.売却等の処分を行う場合

不動産の売却等の処分を行う場合は、登記簿上の住所と現住所が一致しなければ、売主本人だと認められずに売買が行えません。
よって、売買による所有権移転登記に先立って、売主の住所の変更登記が必要となります。

(1) 住所変更登記の方法

売却等の場合でも、上記相続の場面のような登記上の住所と現住所とのつながりを、住民票の除票などによって示せば認められます。相続の場合とそれほど異なるところはありません。
売主自身のことですので、亡くなった方の場合よりも資料は集めやすいとも言えます。

住民票の除票等でつながりが示せない場合に、上申書、不在住・不在籍証明書、固定資産税評価証明書・課税明細書・納税通知書の3年分、登記済証・登記識別情報通知書などによることも同様です。

(2) 権利証を紛失した場合への影響

売買の際の登記申請にあたって、登記済証(権利証)や登記識別情報通知書が紛失等により提出できない場合には、法務局による事前通知という制度を使うことができます。

これは、法務局(登記所)から売主に対して本人限定受取郵便が届くことで、これにより本人確認をするものです。

しかし、この事前通知は法務局がその不動産の権利者の住所であると把握しているところ、つまり登記簿上の住所に発送されます。したがって、現住所と登記簿上の住所が異なっている場合には、この方法が使えないということになるのです。

事前通知の方法でなくても、司法書士等の資格者に本人確認をしてもらい本人確認情報を法務局に提出してもらう方法や、公証役場の公証人に同様の書類を作成してもらう方法で、権利証等の提出に代えることもできます。

[参考記事] 権利証・登記識別情報の紛失と再発行について

3.まとめ

登記上の住所と現住所が異なっていると、いざという場合に困ってしまいます。面倒でも、転居等の際は、住所の変更登記もするべきです。

この他にも、不動産登記に関するお困り事、疑問な点やご不明点などがございましたら、不動産関係に強い泉総合法律事務所の弁護士にぜひご相談ください。

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