不動産に強い弁護士に無料相談【東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪】
安心と信頼のリーガルネットワーク弁護士法人泉総合法律事務所不動産問題
0120-553-813
【電話受付】平日9:00〜21:00/土日祝9:00〜19:00
お問い合わせ
(365日24時間受付中)
入居者トラブル

賃貸アパートで火事・火災|大家が負う責任や義務は?

自分が所有し、賃貸している物件が火災による被害を受けるリスクは少なからずあり、そのような事態に備えておくことは重要です。

この記事では、所有する賃貸不動産が火災による損害を受けた場合に、大家はどのような責任を負い、どのような範囲で賠償の義務があるのか、また火災保険などからはどのような範囲で損害の補填を受けられるのかをわかりやすく解説していきます。

1.入居者の過失で火災が生じた場合の法律関係

入居者の過失により借家から火があがり、第三者に損害を生じさせた場合には、大家には後述するとおり(建物の設備等に問題があった場合などの特別の事情がない限り)何らの責任は及びません。

入居者は、賃貸借が終了した場合には、原状回復をしたうえで物件を大家に返還する義務を負います(民法第601条、第621条)。返還するまでは、善良な管理者として物件を管理する義務があります(民法400条)。

入居者の過失によって借家が焼損した場合には、この各義務を履行できないため、債務不履行に基づく損害賠償義務を負うことになります(民法第415条第1項本文)。

債務不履行に基づく損害賠償は、不法行為に基づく損害賠償とは法律上異なる制度です。しかも、債務不履行に基づく入居者の賠償責任は、大家が被った損害の範囲に限定され、損害が膨大となるわけではありませんから、失火責任法の適用はありません(※最判昭和30年3月25日)。

【失火責任法とは】
失火責任法とは、正式には「失火ノ責任ニ関スル法律」と言います。失火とは「過失により発生した火災」のことを言い、失火を起こした場合、民法709条の不法行為に基づく損害賠償の規定は適用しないとされています。したがって、通常の過失で万が一火事が起こって隣家に火が燃え移っても、損害賠償責任は負いません。
しかし、火災について重大な過失があれば、民法の原則どおり賠償責任が生じます。例えば、寝タバコを危険と知りながら特に注意もせず喫煙を続けて火災が生じた場合に、重大な過失と判断された裁判例があります(東京地裁平成2年10月29日判決)。

なお、火災を生じさせた入居者及びその他の入居者の部屋が、火災によりその全部が使用できなくなった場合には、これら入居者と大家との間の賃貸借契約は当然に終了することになります(民法616条の2)。

誰に過失があるかに関わらず、目的物の使用収益が不可能となっている以上、契約関係を存続させる合理的な理由はなく、賃貸借契約は終了とした上で、過失ある者の賠償責任の問題として処理すれば足りるからです。

火災による物件の滅失が一部にとどまったときでも、残存する部分だけでは入居者が賃借した目的が達成できないときには、賃貸借契約が当然に終了するわけではないものの、入居者は契約を解除することが可能です(民法611条2項)。

なお、アパートのように複数の入居者があり、火災を生じさせた入居者とそれ以外の入居者との間でも、失火責任法の適用により火災を生じさせた入居者は、故意又は重大な過失がない限り不法行為責任を負うことはありません。

2.入居者の過失によらず火災が生じた場合の法律関係

(1) 入居者と大家との間の関係

隣家から出火し、入居者の家財や身体に損害が生じた場合には、入居者又は大家の行為によるものではなく、入居者及び大家の賠償責任は問題になりません

また、物件が焼損し現状回復をして大家に返還できなくとも、入居者に過失がないので、大家に対して債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことはありません(民法第415条第1項但し書き)。

(2) 焼損部分の修理等の責任を負うのは誰か?

賃貸借契約では、入居者が家賃を支払う代わりに、大家は物件を使用収益させる義務を負担します(民法601条)。
使用収益させる義務を負う以上、物件が損傷した場合に、入居者が使用収益できるよう必要な修繕を施すことも、当然に大家の義務です(民法606条1項本文)。

ただし、入居者に過失がある場合は公平の観点から、大家に修繕義務はありません(同条1項但し書き)。

もっとも、大家に修繕義務があると言っても、前述のとおり、物件の全部が使用できなくなった場合には賃貸借契約は当然に終了し(民法616条の2)、入居者は家賃支払義務を免れるだけで、大家に修繕を請求することはできません。

また、これも前述したとおり、一部の損傷でも入居の目的を達成できなくなった場合は、入居者は賃貸借契約を解除できます(民法611条1項)。

では、一部損傷で入居の目的を達成できない程ではない場合、入居者がとるべき対処法には、どのようなものがあるでしょう?

次の条文を見てください。

<民法第611条第1項>
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

例えば、3Kのアパートを借りたところ、隣家の火災で一部屋の壁が燃えてしまったが、残りの2部屋は使うことができ、しかも入居者としては2部屋でも暮らせないことはないという場合、当然に家賃が減額される扱いとなるのです。

したがって、入居者は減額した家賃を支払えば足りることになります。

もっとも、法律の理屈ではこのように言えるものの、実際に減額した家賃しか支払わないという対応は決してお勧めできません。

何故なら、当然に減額されるとしても、いったいそれが幾らなのか算定は簡単ではなく、入居者が勝手に3割減と判断して70%の賃料しか支払わなかった場合、後にそれが不相当な減額と判断され、入居者が不払いの責任を負ってしまうリスクがあるからです。
最悪の場合、家賃不払いを理由に契約を解除されてしまいます。

そこで、現実的な対応としては、前述のとおり修繕義務は大家が負担している(民法606条1項)ことから、まずは修繕を請求するべきです。

他方、大家に修繕を請求したのに相当な期間内に修繕してくれないときや、雨漏りなど緊急に修繕をする必要性があるときは、入居者が自ら修繕することが認められ(同607条の2)、修繕費用を大家に請求することも可能です(同608条1項)。

逆に、大家の立場からは、修繕の必要性を認識しながら、これを放置してしまうと、入居者が選定した業者に修繕されてしまい、相場より高い修繕費用を請求されてしまう危険があります。

修理代金をいくらとして修理業者と契約するかは入居者の自由であり、民法が入居者自らによる修繕を許している以上は、「相場より高額だ」として、後に裁判で争ったとしても、明らかに不合理な金額でない限り、裁判所が大家の言い分を認めることはありません。

したがって大家としては、無用に損失を増やさないために、早急に自ら選定した業者に修繕を依頼するべきです。

3.借家の設備に不具合があり火災になった場合

(1) 大家と入居者の第三者に対する責任

漏電火災など、借家の設備の不具合が原因で火災となった場合には、大家又は入居者は第三者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。この損害賠償責任の根拠としては、不法行為の特則である「土地工作物責任」があげられます。

土地工作物責任は、次のように規定されています。

<第717条第1項>
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

「土地の工作物」とは、土地に接着して人工的に作られた設備をいい、建物は典型例です。また被害者保護の観点から、土地工作物の概念は拡大して解釈されており、多くの場合、建物に付随する設備も含まれます。

次に「瑕疵がある」とは、その物が通常有すべき品質・安全性を欠いていることをいいます。

この規定は、他人に損害を生じさせるおそれのある危険物を管理・所有する者には、危険物から生じた損害を負担させるべきであるという「危険責任の法理」に基づきます。

土地工作物の瑕疵によって生じた第三者の損害については、第1次的には、これを占有管理している者が賠償義務を負担します。

賃貸借契約に基づく入居者は、物件を占有管理している者に該当しますから、この場合に第1次的に責任を負担するのは入居者です。

ただし、入居者は損害の発生を防止するために必要な注意をしたことを立証できれば責任を免れることができます。

占有者である入居者が責任を負わない場合には、借家の所有者が無過失責任を負います。

つまり、漏電など建物の設備の不具合により第三者に生じた損害については、第1次的には入居者、2次的には所有者である大家が賠償をしなければならないのです(ただし、後述の失火責任法の問題があることに注意してください)。

(2) 失火責任法との適用の問題

既に解説したとおり、失火には失火責任法が適用され、故意又は重大な過失がなければ、失火させた者は不法行為責任を負うことはありません。

しかし、建物の設備に不具合が生じ、それが原因となって火災が生じた場合には既に解説したように民法第717条第1項の土地工作物責任を負うこととなります。

この場合に、①失火責任法が適用され、故意・重過失がない限り土地工作物責任を負わないのか、それとも、②失火責任法の適用は否定されて、故意・重過失があっても土地工作物責任を負うのかについては定説がなく、最高裁の判例や下級審の裁判例も分かれています(※)。

※最近の裁判例として、①失火責任法の適用を否定して土地工作物責任を認めるもの(東京高裁平成3年11月26日判決・判例時報1408号82頁)、②延焼部分についてだけは失火責任法を適用して土地工作物責任を否定するもの(横浜地裁平成3年3月25日判決・判例タイムズ768号186頁・①の裁判例の原審)などがあります。

4.火災保険による補償

これまで解説してきたように、大家・入居者の双方が火災による損害を賠償する責任を負う場合があり、また損害を受ける場合があります。その場合には火災保険による損害の補償が重要となります。

建物の賃貸借契約には、入居者が火災保険等に入ることが契約上の義務とされている例がほとんどです。

火災保険は、損害保険の一種で、火災を保険事故(損害の原因となる事故のこと)として発生した損害を補てんする保険です。

もっとも、我が国の保険会社が販売している保険商品は、火災保険と称しながら、火災に限らず、風水害を広く含めて保険事故としています(地震、噴火、津波だけは火災保険の保険事故には含めず、地震保険の保険事故とされています)。

また、あまたある損害の発生原因のうち、どれを保険事故に含め、何を保険目的物(損害発生の客体のこと)として、どの範囲の損害まで補てん対象とするかは、各保険契約の内容次第であり、その保険契約の約款を読まなくては判明しません。

したがって、保険に加入する場合には、契約前に約款を入手して熟読することが不可欠であり、以下の説明は、一般的な例に関するものであることに注意してください。

(1) 入居者が加入する保険

家財を対象とした火災保険

火災保険の目的物(つまり、何に保険をかけるのか)は、物件そのものと家財に分けることができます。入居者が保険目的物とするのは家財です。

仮に、火災による家財の消失・毀損が、隣人の故意・重過失や、大家の過失に基づくもので、法的に損害賠償請求が可能であったとしても、責任を負担する者に資力がなければ賠償を受けることは不可能です。

保険は、まさにそのようなリスクを回避するためのものですから、必ず加入するべきです。

借家人賠償責任保険

他方、火災による物件の焼損が入居者の過失によるときは、入居者が大家に対して債務不履行に基づく損害賠償義務を負担します。

しかし、通常、借家に入居する者には十分な資力がありませんから、実際に賠償することは困難です。

そこで、入居者の大家に対する損害賠償義務を補てんする保険に加入する必要があります。これが「借家人賠償責任保険」です。

通常、賃貸住宅の家財を対象とした火災保険に、「借家人賠償責任補償特約」としてセット販売されています。

賃貸借契約の内容として、入居者に「借家人賠償責任補償特約」付きの火災保険に加入する義務を定めていることが通常です。

(2) 大家が加入する保険

大家が加入するのは、物件そのものを保険目的物とした火災保険です。
ただ、これだけでは、建物自体の焼損被害は補償されますが、それ以外の損害が発生した場合に対処できません。そこで次のような商品を検討する必要があります。

施設賠償責任特約

建物の設備の不具合による火災などで入居者や第三者に損害が生じた場合に大家が負担する賠償を補償するのが施設賠償責任という特約です。

家賃補償特約

火災により借家が使用できなくなる場合には、既に解説したとおり賃貸借が終了します。また、一部の焼損により家賃が減額される場合もあります。

そのため、大家は家賃収入を確保できなくなります。家賃補償特約は、このように得ることができなくなった家賃を一定の期間、補償するものです。

5.まとめ

賃貸物件が火災の被害にあった場合の法律関係について説明しましたが、案外複雑なことに驚かれたかも知れません。

誰に過失があるのか、誰の損害か、失火責任法の適用があるのかといった細かい場合わけをして検討しなくてはならないので、簡単には理解できないでしょう。

賃貸物件で火災の被害にあったときには、弁護士に相談されることをお勧めします。

関連するコラム
38 41
【電話受付】平日9:00〜21:00 / 土日祝9:00〜19:00