家賃滞納による貸主からの契約解除通知書の書式・書き方
賃貸物件の入居者による家賃滞納が発生した場合には、賃貸物件のオーナーとしては大きな損失となってしまいます。
そのため、このような事態が生じた場合には、賃借人に対し、未払い家賃の支払いを請求していくことになりますが、悪質なケースでは長期間家賃の支払いがなされないということもあります。
そのような場合には、家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除して建物を明渡してもらうという方法が有効な手段となります。
もっとも、賃貸借契約を解除するためには、契約解除通知書を賃借人に送付する必要がありますが、どのような内容を記載すればよいのかお悩みの方もいるでしょう。
今回は、家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合の契約解除通知書の書式と書き方について説明します。
1.貸主(家主)からの解約が認められる条件
賃貸人が賃借人に対して家賃の滞納を理由に建物の明渡しを求めるためには、賃貸借契約を解除する必要があります。
では、家賃の滞納を理由に賃貸借契約の解除をすることは可能なのでしょうか。
家賃の滞納が発生した場合には、賃借人の債務不履行になりますので、1回でも家賃の滞納があれば賃貸借契約を解除することができるようにも思えます(民法541条)。
しかし、実務においては、「信頼関係破壊の法理」というものが確立していますので、賃借人の債務不履行があったとしても当事者間の「信頼関係を破壊」するに至っていなければ、賃貸借契約を解除することはできません。
では、どのくらいの家賃滞納があれば信頼関係が破壊されたと認められるのでしょうか。
賃貸借契約における信頼関係の破壊の有無については、家賃の滞納額や期間の他にも、滞納に至った経緯、過去の家賃支払い状況、賃借人の対応などを総合考慮して判断することになりますので、何か月分の滞納があれば信頼関係が破壊されたといえると断言することはできません。
過去の裁判例では、2ヶ月の家賃の滞納で信頼関係の破壊を認めたものがある一方で、4ヶ月の家賃の滞納があっても信頼関係の破壊を認めなかったものもあります。
そのため、信頼関係の破壊に足りる家賃の滞納額はケースバイケースということになりますが、3ヶ月分程度の家賃の滞納があったことが一応の目安になるといえるでしょう。
2.解除通知書の書き方
賃貸借契約を解除する際には、契約解除通知書を作成し、内容証明郵便で賃借人に送るのが一般的です。
[参考記事] 賃料滞納による建物明渡請求の流れ以下では、家賃の滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合の解除通知書の書き方について説明します。
(1) 賃貸借契約解除通知書作成のポイント
家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合には、原則として、まずは滞納した家賃を相当期間内に支払うよう催告する必要があります。
そして、その期間内に支払いがない場合には、契約を解除することができます。
しかし、当初から契約を解除する方針という場合には、1通の通知書で、家賃支払いの催告と契約の解除を通知することも可能です。
なお、賃貸借契約において賃借人に債務不履行があったときには賃貸人は何らの催告もなく解除ができるという特約条項を定めていることがあります。これを「無催告解除特約」といいます。
このような無催告解除特約があったとしても、直ちに無催告での解除はできず、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存在する場合にのみ無催告解除が有効になるとされていますので注意が必要です。
(2) 賃貸借契約解除通知書のテンプレート
以下では、賃貸借契約解除通知書のテンプレートをいくつか紹介します。
<催告に応じなかったことによる契約解除をする場合>
<賃料支払いの催告と契約解除を同時に通知する場合>
<無催告解除特約による解除をする場合>
3.不動産貸主の方は弁護士へご相談を
賃借人による賃料の滞納でお悩みの不動産貸主の方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
(1) 賃借人との交渉を任せることができる
賃貸借契約解除通知書については、今回紹介したテンプレートなどを参考にすれば、ご自身でも作成して送付することは可能です。
しかし、解除通知書を送付すればそれで終了というわけではなく、解除通知書を受け取った賃借人と建物の明渡しに向けた交渉を行っていかなければなりません。交渉に不慣れな不動産貸主の方では、ご自身で交渉を進めていくことが難しいこともありますし、何より交渉による精神的ストレスを抱えることになってしまいます。
弁護士に依頼をすることによって、賃借人との交渉をすべて任せることができますので、不動産貸主の方の負担は軽減されるでしょう。
弁護士が対応することによって、賃借人に対しても本気度が伝わりますので、不動産貸主の方ご本人が対応するよりも早期の解決が期待できるといえます。
(2) 裁判手続きについても任せることができる
賃貸借契約解除通知を送ったとしても、賃借人が任意に建物の明渡しを行わない場合には、建物明渡しおよび未払い賃料の支払いを求める訴訟を提起しなければなりません。
このような裁判手続きは、非常に専門的な手続きになりますので、法律の専門家である弁護士にサポートが不可欠であるといえます。
また、裁判によって債務名義を取得した場合には、次の段階として強制執行の手続きをとることになりますが、これについても弁護士にサポートがなければ適切に進めていくことは難しいといえます。
賃借人が立ち退きを拒否している場合は、早めに弁護士に相談をして法的手段によって建物の明渡しと未払い賃料の回収を実現していくのが得策でしょう。