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入居者トラブル

地震で賃貸にひび割れが起きたら誰が責任を負う?

大型地震により、借家にひび割れなどの被害が出たとします。

この場合、賃貸人である大家もしくは賃借人である入居者のどちらが負担しなければならないのか、どちらかが負担するとしてどの範囲で負担しなければならないのかなど、様々な疑問があると思います。

また、万が一に備えて地震保険に加入する必要があるのか、地震保険はどこまでの範囲で補償があるのかなどを気にしている方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、地震で借家に被害が出た場合の法的問題について解説していきます。

1.地震による修繕は誰の責任?

賃貸借契約では、大家は入居者に対して、借家を使用させる義務を負っています(民法第601条)。また、借家の使用に必要な修繕義務も負っています(民法第606条第1項)。

入居者は、大家がこれらの義務を履行することに対する「対価」として家賃を支払っているのですから、地震という不可抗力を原因として修繕が必要となった場合であっても、大家がこのような義務を負うのは当然です。

そのため、地震により借家に修繕が必要となれば、ひび割れや割れた窓の修繕などは、原則として大家の負担でしなければなりません。

もっとも、修繕が必要となった原因が入居者の過失による場合は別ですが(民法606条1項但し書き)、地震による建物の損傷が入居者の過失と判断される例は、ほとんど想定し難いと思われます。

また、地震によって建物の一部を使用できなくなった場合、使用できなくなった部分の割合に応じて、家賃は法律上当然に減額されます(同611条1項)。

さらに、入居者が、大家に修繕を請求したのに相当な期間内に修繕してくれないときや、緊急に修繕をする必要性があるときは、入居者が自ら修繕することも可能であり(同607条の2)、修繕費用を大家に請求することも可能です(同608条1項)。

なお、物件の全部が使用できなくなった場合には賃貸借契約は当然に終了します(同616条の2)。
さらに、一部の損傷にとどまるものの、入居の目的を達成できなくなったときは、入居者は賃貸借契約を解除することができます(同611条1項)。

【大家が補償する範囲】
既に解説したとおり、賃貸借は大家が借家を入居者に使用させる義務、また使用できるように修繕する義務を負っていますので、賃貸借契約が継続している限り、家にひびが入ったり、窓ガラスが割れたりした場合には、大家の費用負担で修繕することとなります。
しかし、地震により、被害の生じた入居者の家財については、後記のごく例外的なケースを除き、大家は損害賠償義務を負うことはありません。

2.耐震設備に問題がある場合

(1)工作物責任

地震は不可抗力ですから、耐震設備に問題なく、法律上求められる基準を有していた場合には、地震によって生じた入居者やその他第三者に生じた損害について、大家が責任を負うことはありません。

もっとも、耐震設備に不具合があり、地震の発生で損害を発生させた場合には、大家は所有者としての責任を負うことになります。

その根拠は、不法行為責任(民法第709条)の特則である民法第717条第1項の規定する土地工作物責任です。民法は、土地工作物責任について、次のように規定しています。

<第717条第1項>
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

「土地の工作物」とは、土地に接着して人工的に築造された設備をいい、建物が該当します。
また「瑕疵がある」とは、その物が通常有すべき品質・安全性を欠いていることをいいます。

この規定は、土地工作物の占有者に第一次的な賠償責任を負わせ、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを立証できれば免責され、その場合には、第二次的に土地工作物の所有者が責任を負うと定めています。

建物が通常有する耐震性能を有していなかった場合には、入居者の注意義務違反は問題となりませんから、所有者である大家が責任を負い、入居者やその他第三者に生じた損害を賠償しなければなりません。

なお、所有者の工作物責任は、いわゆる無過失責任であるため、仮に所有者に過失がなかったとしても損害を賠償する責任を免れることができません。

(2) 契約不適合責任

特別に強度な耐震性能を有する建物であることを前提に賃貸借契約を締結したのに、実際には強度な耐震性能を有していなかったという場合には、賃貸借契約違反による債務不履行責任を問える場合があります。

債務不履行責任に基づき、入居者が大家に請求できるのは、次の内容です。

①修補請求(民法第559条、第562条第1項)
②賃料減額請求(第559条、563条)
③損害賠償請求(564条、415条)
④賃貸借契約の解除(564条、415条、620条)

借家の耐震性能が法律の基準を充たしていても、大家と入居者との間で、これを上回る「強度な耐震性能を有している」借家であることを重視して契約した場合には、契約の内容に適合していない借家を引き渡したことになり、契約違反となりますから、債務不履行責任を問うことができます。

上記の①修補請求、②賃料減額請求、④契約解除は、大家側の帰責の有無は問いませんが、③損害賠償請求は、大家側に帰責があることが前提となります。

そこで、強度な耐震建物として賃貸借契約を締結したのに、これに適合する耐震性能がなく、このために地震による被害を防げなかったとき(逆に言えば、期待されていた耐震性能が備わっていれば防げた被害であるとき)に、大家に帰責があるならば、③損害賠償請求が可能となります。

[参考記事] 民法改正|瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

3.借家が修繕できず住めなくなった場合

前述のとおり、借家が修繕できず、使用できなくなった場合には、賃貸借は終了することとなります(民法第616条の2)。
入居者としては、その後新居を探し引っ越しをしなければなりません。

しかし、地震は不可抗力であり、大家に責任を認めることのできる例外的なケース(前記の土地工作物責任や契約不適合責任)を除いては、基本的にはその引っ越し等に係る費用を大家に請求することはできません

4.地震保険について

(1) 地震保険とは

地震保険は、地震・噴火・津波による損害を補償する保険です。地震保険の目的物(何に保険をかけるか)は、居住用建物と家財だけが認められます。

地震による損害は、広域に及ぶ巨大なものになる可能性があるのに、発生時期・発生頻度・発生可能性の予測は困難であり、とても民間の損害保険だけでまかなうことはできません。

そこで、「地震保険に関する法律」(地震保険法)によって、国と損保各社が共同で運営している一種の社会保障制度が地震保険なのです。

保険料は一律で、地震保険から損保各社が利益を得ているのではなく、地震に備えて積み立てられています。

地震保険は単独で契約するものではなく、火災保険を主契約として付帯する契約です。

(2) 地震保険の補償範囲

火災保険は、火災にとどまらず、自然災害のうち「大雨による洪水・土砂崩れ」「台風・竜巻」「高潮、「雪災・ひょう災」「落雷」による被害等を補償しています。

しかし、地震・噴火・津波による損害は対象外であり、「地震による火災」も対象外ですから、地震に対処するには、地震保険への加入が必須なのです。

(3) 入居者が地震保険に加入する必要

既に解説したとおり、地震によって借家が被害を受けた場合は、大家がその損失を負うこととなります。そのため、家の修繕のみであれば、入居者は地震保険に加入する必要がないように思われます。

しかし、入居者の家財については、大家は補償をしなくともよいため、家財の損失は入居者が負わなければならなくなります。

地震が原因で新しく引っ越しを余儀なくされる場合には、新居での家電等は新たに買いなおす必要があるなど大きな費用を負担しなくてはならないこともあるでしょう。

地震保険に加入していた場合には、損失を受けた家財の価値について補償を受けることができ、新居での生活に困ることはないでしょう。
もっとも、この場合でも地震保険で対象となる物が何かについては注意が必要です。

30万円を超える高価な絵画や骨とう品等の美術品、現金や有価証券は補償の範囲に含まれていませんので注意が必要です。

5.まとめ

賃貸借契約において地震によって生じた損害の負担と補償について説明しました。

建物の賃貸借契約は、経験することの多い契約ですが、その法律関係は案外複雑で、たとえ複数の物件を賃貸している大家さんや大きな不動産業者でも、きちんと理解できていない場合が珍しくありません。

賃貸借契約について疑問がある場合は、法律の専門家である弁護士の法律相談を利用しましょう。

また、日本は地震大国といわれています。この機会に加入している保険について見直してみても良いかもしれません。

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