地代・更新料を滞納すると借地権が消滅する?債務不履行解除
借地権の設定を受けて、借地上に建物を所有している場合、地主に対して毎月地代を支払う必要があります。
また、数十年に一回程度ではありますが、契約更新時には更新料の支払いも発生します。
地代・更新料の支払いを滞納した場合、地主によって借地契約が債務不履行解除され、借地権が消滅してしまうかもしれません。そうならないように、できる限り地代・更新料の滞納は避けましょう。
今回は、地代・更新料の滞納による債務不履行解除の流れなどを中心に解説します。
1.借地権が消滅するケース
借地契約が終了した場合、借地権は消滅します。
借地契約が終了するのは、以下のいずれかの場合です。
(1) 借地契約が合意解約された場合
借地契約の当事者である地主と借地権者は、互いに合意することにより、借地契約を終了させることができます。
これを「合意解約」と言います。
借地契約が合意解約された場合、借地権は消滅します。
(2) 借地期間の満了後、借地契約が更新されなかった場合
借地権には、借地契約によって存続期間が定められています。
借地権の存続期間が満了し、借地契約が更新されない場合には、借地権は消滅します。
なお、一般的な契約であれば、契約更新は当事者全員の合意によるのが原則です。
ただし借地契約については、契約更新に関して、借地借家法により特別なルールが設けられています。
具体的には、借地権の存続期間満了時において、借地上に建物が存在する場合には、借地権者の請求によって契約を更新することが認められています(借地借家法5条1項本文)。
借地権者の更新請求について、地主は異議を述べることもできますが、その場合には「正当の事由」が必要です(同法6条)。
「正当の事由」が認められるハードルはかなり高く、多くのケースでは、地主から借地権者に対する高額の立退料の支払いが必要になります。
(3) 地主が借地契約を債務不履行解除した場合
借地権者の側に何らかの契約違反があった場合、地主は借地契約を債務不履行解除できる場合があります(民法541条、542条)。
地主による借地契約の債務不履行解除が認められると、借地権者は自らの意思にかかわらず、建物を除却して土地を明け渡さなければならなくなるので要注意です。
借地契約の債務不履行解除については、以下の記事でも解説しているので、併せてご参照ください。
[参考記事] 借地契約を解除できる場合とは?解除の要件・方法を解説
2.地代滞納による債務不履行解除の流れ
借地権者が地代の支払いを滞納しても、いきなり地主から借地契約を債務不履行解除されることはなく、その前にいくつかのステップがあります。
借地契約の債務不履行解除を避けるためには、解除に向けたステップの早い段階で、地代を支払うか、または支払いを猶予してもらうように交渉することが大切です。
地代滞納を理由とする債務不履行解除につき、大まかな流れを見てみましょう。
(1) 3か月分以上の地代滞納の発生
地代滞納の場合、おおむね3か月分程度以上の滞納が、債務不履行解除の要件とされています。
1か月や2か月程度の滞納では、未だ地主と借地権者の間の信頼関係が破壊されたとまでは言えず、債務不履行解除が認められないケースが多いのです。
もしうっかり地代の支払いを忘れてしまった場合でも、1か月分や2か月分程度であれば、すぐに支払って債務不履行解除を回避しましょう。
(2) 地主からの支払い催告
地主は、借地契約を債務不履行解除する前に、借地権者に対して地代を支払うように催告する必要があります(民法541条1項)。
地代支払いの催告は、内容証明郵便により行われるのが一般的です。
多くの場合、支払期限を示したうえで、支払いがなければ借地契約を解除するという内容の催告が行われます。
地主から地代支払いの催告を受けた場合、借地契約の債務不履行解除が目前に迫っていますので、速やかに地代の支払いについて目処を付けなければなりません。
(3) 支払期限の経過・契約解除
催告による地代支払いの期限が経過すると、借地契約が債務不履行解除されてしまいます。
なお、支払期限が明示されていない場合でも、地代支払いの準備をするのに「相当の期間」が経過した場合には、地主に債務不履行に基づく解除権が発生します(民法541条)。
地代滞納の場合、「相当の期間」は数日程度、長くても1週間程度となりますので、借地権者は早めの対応が求められます。
(4) 土地明渡請求|訴訟に発展することも
借地契約が債務不履行解除された場合、借地権が消滅するため、借地権者は土地を占有する権原を失います。
借地権者は、地主から土地明渡請求を受けることになりますので、その際には、建物を解体・除却したうえで、土地を地主に返還しなければなりません。
もし借地権者が土地の明け渡しを拒否した場合、地主は借地権者に対して土地明渡請求訴訟を提起する可能性があります。
借地契約の債務不履行解除に対する有効な反論がない場合には、地主の請求が認められ、借地権者に対して土地の明け渡しを命ずる判決が言い渡されることになるでしょう。
そうなると、最終的には強制執行により、建物の収去および土地の明け渡しが強制的に実行され、借地権者は強制執行にかかった費用を地主から請求されてしまいます。
借地契約の解除・建物の解体除却・土地の明け渡しに至ってしまうと、借地権者が被る損害は甚大です。
このような事態が発生しないように、地代の滞納を放置せず、早めに対応することが重要になります。
3.地代を滞納した場合は弁護士にご相談ください
借地権者の方が、もし月々の地代を滞納してしまった場合には、お早めに弁護士へご相談いただくことをお勧めいたします。
お金がなくて地代が払えない場合にも、借地権者が取り得る対処法は残されています。
近い将来に資金が入る具体的な予定がある場合には、地主と交渉して地代の支払いを待ってもらうことも考えられるでしょう。
また、他に借金を抱えていて、返済の負担が重い場合には、債務整理を行うことで地代を捻出できるかもしれません。
借地の地代が払えずにお悩みの借地権者の方は、お早めに弁護士までご相談ください。