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不動産の競売・共有

共同名義のアパートを賃貸に出すにはどうすれば良い?

何人か共同で所有する建物の賃貸は、不動産購入資金の負担が軽減され、借主の募集などに共有者の人脈も利用できるといったメリットがあります。

では、共有名義の建物を賃貸するには、法的にどのようにすればいいのでしょうか。

ここでは、共有建物を賃貸する場合の要件などについて考えてみます。

1.共有名義の建物はどうすれば賃貸できるのか

(1) 共有名義の建物を賃貸する際の要件

共有名義の建物、例えば、共同で所有するアパートやマンションであっても賃貸することはできます。ただし、それには、要件を満たす必要があります。

共有物の使用方法は、保存行為、管理行為、変更行為に分類され、それぞれ、これを法的に有効になしうる要件が次のように変わります。

行為の種類 意義・事例 要件
保存行為
(民法252条但書)
価値を保存し、現状を維持する行為 各共有者が単独で可能
管理行為
(同法252条本文)
共有物を利用・改良をする行為 共有者の持分の価格の過半数で決定
変更行為
(同法251条)
共有物の形状・性質に物理的に変更を加える行為及び法律的処分行為(※) 共有者全員の同意が必要

※251条の「変更行為」の内容に「法律的処分行為」を含めるかどうかは議論がありますが、これを含めない考え方でも、共有物の法律的処分行為は他人の共有持分の処分を意味しますから当然に全員の同意が必要となり、結論は同じとなります。

一般的な法律の教科書などでは、保存行為とは、共有者全員の利益となる行為で、例えば共有建物の修繕や共有建物を不法に占有している者への明渡請求などであると説明されています。

他方、管理行為とは共有物を利用・改良する行為であり、変更行為とは物理的な変更を加える行為及び法律的処分をする行為であると説明される例が多いようです。

しかし、実は、この保存・管理・変更の区別は非常に不明確です。

例えば、共有建物の雨漏りを防止する屋根の工事を考えてください。
屋根の小さな穴を埋めるだけなら、保存行為として単独でできそうです。しかし、瓦屋根からトタン屋根に変える必要があるケースはどうでしょう。現状維持を超えるから、もはや保存行為でないとしても、管理行為の「改良」として持分の過半数で足りるのか?それとも物理的な変更を加えている以上「変更」として全員の同意が必要なのか?

雨漏りの補修ひとつとっても、隙間を埋めるだけなのか、一部を葺き替える工事なのか、全部を取り替える工事なのか、その内容によって共有者全員に与える影響は異なります。工事内容は共有物の財産的価値を左右しますし、保存・管理・変更に要した費用は、共有者が持分に応じて負担する義務があるからです(民法253条1項)。

民法が要件に差異を設けたのは、共有者の利益を保護するためです。したがって、各行為が保存・管理・変更のどれにあたるかは、共有者への実質的な影響を考慮して決しなくてはなりません。抽象的に保存・管理・変更のどれにあたるかを論じても意味がないのです。

では、このような考え方を前提として、共有の建物を賃貸する場合は、どの要件を満たせばいいのでしょうか?

(2) 共有名義の建物を賃貸する方法

上に説明したとおり、ある行為が保存・管理・変更のいずれにあたるかは、当該行為の具体的な内容に則して実質的に判断しますから、あくまでもケースバイケースであることを念頭に置いてください。

その上で、一般的な傾向としては、建物の賃貸借契約の締結は契約期間3年以内のいわゆる「短期賃貸借」契約(民法602条3号)であれば、管理行為と評価され易く、この期間を超える場合は変更行為と評価されやすくなると説明されています。

賃貸借契約は、対象物を処分してしまうものではありませんが、契約期間によっては所有者が長期にわたって所有建物を使用することができなくなり、所有権それ自体を処分した場合に近い状態となってしまいます。

そこで民法は、例えば不在者の財産管理人(民法28条)のように所有者の財産を処分する権限のない者には建物の賃貸借契約を許さないとしつつ、例外的に3年に限っては契約を認めました。これが建物の短期賃貸借です。

民法は建物賃貸借契約については、3年以内であれば、所有者本人の利益を害する度合いが少ないものと位置づけたわけです。

この民法の態度から、①3年以内の短期の賃貸借であれば持ち分が少ない共有者への影響も少ないため、「管理」として、共有者の持ち分の価格の過半数で足りると評価されやすくなります。②他方、3年を超える場合は、持ち分の少ない共有者への影響が大きいため、「変更」として、共有者全員の同意が必要と評価されやすいことになります。

ただし、現実には、建物の賃貸借契約は(一時使用目的の場合などの極わずかな例外を除き)、ほとんどのケースで「借地借家法」の適用があります。

借地借家法は借主を強力に保護するための法律であり、同法が適用されれば、期間の定めの有無を問わず、貸主に正当事由がない限り、借主に明渡しを求めることは許されません(借地借家法28条)。これは3年以内の短期の賃貸借契約でも同じです。

このため、同法の適用がある建物賃貸借契約は借主が解約に同意しない限り長期化することが必須です。

したがって、むしろ建物の賃貸借契約は、「変更」行為となるのが原則だとだと理解したほうが実情にあっています。

もっとも、「管理」か「変更」かは、結局、共有者に与える影響を実質的に考慮して決するものですから、借地借家法の適用があるケースであっても、「管理」行為と評価される場合もあります。

例えば、その共有建物が「貸しビル」だった場合です。もともと、賃貸に出して賃料収益を得ることが本来の使用形態であり、他の共有者も持分に応じた賃料を求償できるのですから、借地借家法が適用されるか否かを問わず、「管理」と評価して共有持分の過半数で決めても、他の共有者の利益を害するとは言えないでしょう。これを認めた裁判例もあります(東京地裁平成14年11月25日判決・判例時報1816号82頁)。

以上をまとめると次のとおりです。

共有建物の賃貸借契約を結ぶ行為

借地借家法適用あり
(ほとんどのケース)
原則→変更行為(全員の合意必要)
例外(貸しビル)→管理行為(持分価格の過半数)
借地借家法適用なし 原則→変更行為(全員の合意必要)
例外(3年内の建物賃貸借)→管理行為(持分価格の過半数)

なお、上は建物賃貸借契約を「締結する行為」が有効となる要件であり、既に締結済みの契約を「解約・解除する行為」が有効となる要件ではありません。

解約・解除行為は、他の共有者を契約の拘束から解放する点で不利益な行為とは言えませんから、管理行為と評価され易いでしょう。結論としてこれを認める判例もあります(最高裁昭和39年2月25日判決・最高裁判所民事判例集18巻2号329頁)。

2.共有者が反対した場合の法律関係

では、共有建物の賃貸借契約締結が管理行為に該当する場合で、持ち分の価格の過半数で、賃貸借契約が決まったとして持ち分の少ない共有者が反対していた場合は、法律関係はどうなるのでしょうか?

持分価格の過半数の要件をクリアしている以上、借主との間の賃貸借契約は有効であり、借主は目的建物の引渡を受けて使用収益する権利を取得しますから、反対していた共有者は借主に対して明渡を請求することはできません。

ただ、反対していた共有者も、その持分に応じた賃料を受け取る権利があります。ほとんどの場合、契約を締結した共有者に対して賃料の全部が支払われているでしょうから、その者に対して不当利得に基づく金銭支払を請求することが可能です(民法703条、704条)。

なお、管理行為に該当する場合で持分の価格の過半数という要件を満たさなかった場合や、変更行為に該当する場合で一部の共有者の同意を得られなかった場合は、賃貸借契約を有効とする要件を欠くので当該契約は無効となります。

要件を満たしていない無効な賃貸借契約であるにもかかわらず借主が入居している場合は、不法占拠者ですから、共有者は借主に明渡しを請求できます。これは保存行為ですから単独で行使することが可能です。

さらに、実際に入居していた期間に応じた賃料相当額を使用損害金として借主に請求することも可能です。これは建物の使用利益を不当に利得していた不当利得となるからです。

借主が賃貸借契約を締結した共有者に賃料を支払っていた場合は、借主には利得がないので使用損害金を請求することはできませんが、代わりに家賃を受け取っていた共有者に対して、持分に応じた配分を不当利得として請求することができます。

またこの場合、借主は賃貸借契約を締結した共有者に対して、権利金・敷金・仲介手数料・引越費用・休業損害など、無効な契約によって支出させられた費用や明渡しによって被った損害などを不当利得や不法行為に基づき請求することが可能となります。

3.共同で所有する建物を賃貸する場合の注意点

(1) 建物の賃料など収益の共有者への配分

各共有者は、共有者間で特段の合意がなければ、原則としてそれぞれの持ち分割合に応じて、例えばアパートの賃料などの不動産収益を按分することになります。これはアパート経営に必要な経費についても同様です。

前述のとおり、もし共有者の1人が賃料収入を独占しているのであれば、不当利得に該当し、支払を請求することができます。

なお、理屈の上では、賃貸借契約締結時に各共有者の持分に応じた賃料額を明示し、借主が各共有者に配分して支払う方法もとれますが、余計な負担を強いられるので応ずる借主はいないでしょう。契約をした共有者が全額を受領したうえで、各共有者の持分に応じて配分することが現実的です。

(2) 共有者間で詳しい契約書の作成が望ましい

共有名義の建物を賃貸するのであれば、賃貸する前に、共有者間で家賃の配分方法・経費の支出方法・借主に対する窓口役などの細かい点まで決めて合意書(契約書)を作成しておくことが共有者間のトラブル防止となります。

契約書の作成に当たっては、弁護士など専門家にアドバイスを貰うといいでしょう。

(3) 確定申告が必要となる

当然ですが、共有建物の賃料収入を現実に受領した場合には、不動産所得として所得税の確定申告が必要になります。申告額は現実に受領した収入額です。もちろん現実に支出した経費は控除できます。

確定申告は、共有者各自が行います。

(4) 賃貸借契約の解除

契約の解除は民法544条第1項に、「当事者の一方が数人ある場合には、その全員から又は、その全員に対してのみすることがある」とした定めがあります。

この規定が共有建物の賃貸借契約の解除に適用されるかという問題がありました。

民法544条第1項は、当事者が複数ある契約において一部の者のみによって行う解除や、一部の者のみに対する解除を認めると残った契約関係が複雑となりすぎ通常の当事者の意思にも反することから、全部の解除しか認めないことにしたのです。これを「解除権の不可分性」と呼びます。

つまり、この規定は、契約の一部解除を認めないための規定です。

しかし前述したとおり、共有建物の賃貸借契約の解除は、管理行為として、持分の価格の過半数があれば単独でも全部の解除を有効に行えます

逆に持分の価格の過半数という要件を満たさない限り、有効な解除は認められず、また自分の持分だけ解除するということもできませんから、契約の一部の解除ということが不可能です。

したがって、共有建物の賃貸借契約の解除に関し「解除権の不可分性」を定めた民法544条第1項は全く無関係です。前述の判例(最高裁昭和39年2月25日判決)もこのことを明言しています。

4.まとめ

このように、共有建物の賃貸借契約の締結をするには色々と留意しなければならないポイントがあります。

もし不動産についてお悩みであれば、是非一度、泉総合法律事務所にご相談ください。

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