競売物件を落札後、リフォームして転売することは違法?
「競売」では、主に借金を返せなくなった人の不動産が入札形式で売られており、落札できれば市場価格よりも遥かに安い価格で不動産を手に入れることができます。
不動産屋の中には、競売を利用して安く不動産を手に入れ、それをリフォームするなどして転売し、利益を出しているところもあるようです。
こう聞くと、「個人で競売を利用し、安く不動産を手に入れて、リフォームしてから転売すれば儲かるのでは?」と考える方がいるかもしれません。
現実問題として、そういったことは可能なのでしょうか?
1.競売物件の転売が難しい理由
競売で手に入れた不動産であっても、あなたが所有する不動産であることに変わりはありません。
入手経路はともかく、所有権が自分にある不動産はリフォームすることも売却することも自由です。
そのため、落札後の不動産のリフォーム・転売が可能か不可能かを問われれば「可能」ということになります。
しかし、現実的には「競売物件の落札→リフォーム→転売」を継続して行うと違法になる可能性が高いです。
問題になるのは「宅地建物取引業法(宅建業法)」という法律です。
この法律では、宅地若しくは建物(建物の一部を含む)の売買や交換、または売買・交換・賃貸の代理や媒介(仲介)を「業として行うこと」が宅地建物取引業(宅建業)に当たると定めています(宅建業法2条2号)。
つまり、転売目的で不動産を手に入れて売却することは、宅建業にあたるということです。
(たとえ1回であっても、「今後も同じことを反復して行うつもり」で転売を行っていれば、『業』であると判断され、転売行為が違法とされる可能性があります。)
違法性なく宅建業を行うには、都道府県知事(複数の都道府県で行う場合は国土交通大臣)の許可を得なければなりません。
【宅建業の許可を得れば大丈夫?】
大手を振って競売物件を落札し、リフォームして転売するには、宅建業の許可を得て登録すれば問題ないことになります。しかし、宅建業の許可を得るには事業所を用意する必要があります。自宅の一室を事業所にする程度では許可が下りないことが多く、ある程度しっかりした事業所が必要です。
また、宅建業を営むには、事業所に宅地建物取引士(宅建士)の資格を持った人を置く必要があります。さらに、宅建業を始める際には宅建協会に加盟することになり、これに100万円以上かかります。加盟しない場合は営業保証金として1000万円を供託しなければなりません。
なお、「知り合いの不動産屋だけを使って、その不動産屋に転売してもらえばいいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、実際に競売物件を何度も落札して他の不動産業者を介して販売し、転売した利益と媒介手数料を得ていた人が逮捕されています。この事例では利益を得ていた人だけでなく、関わった不動産屋も一緒に逮捕されました。
個人の方の競売物件の転売は難しいと考えるべきでしょう。
2.競売物件のリスク
そもそも、競売物件にはリスクが多いです。
せっかく物件を手に入れたとしても、物件に瑕疵(欠陥)があって修理に過大な費用がかかる可能性もあります。家具などが物件内に取り残されている場合は、その処分も落札者の費用で行わなければなりません。
また、抵当権や賃借権などが設定されている物件の場合、その抹消なども落札者の負担で行う必要があります。
時には前の住人が立ち退きを拒み、落札した物件に住み続けていることもあります。裁判所で手続きすれば強制執行によって立ち退かせることができますが、これにも手間と時間がかかります。
色々と手を尽くしても、売りに出した物件に買い手がつかない可能性もあります。仮に売れたとしても、後で欠陥が判明すれば、その対応にさらにお金がかかってしまいます。
数々のリスクを飲み込まなければ、一般の方が競売物件を転売して利益を出すことは難しいのです。
[参考記事] 競売物件購入のリスク|買う前に知っておくべきこと3.不動産に関する疑問は弁護士などへ相談を
このように、競売物件を転売すると違法になる可能性があります。
合法的に行うには宅建業の許可を取らなければなりませんが、手軽に始められるものではありません。
また、いざ競売物件を手に入れたとしても、物件そのものに様々なリスクが潜んでいる可能性があります。
「これは違法なの?」という不動産に関しての不安・疑問がありましたら、独断せずに一度弁護士などの専門家までご相談ください。