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不動産の競売・共有

競売の引渡命令とは何ですか?

不動産競売手続で買い受けた不動産に占有者がいる場合、買受人がその不動産を実際に利用するためには占有者からその不動産を明渡してもらう必要があります。

では、買受人は占有者からどのような方法で明渡してもらうことができるのでしょうか。

今回は、競売で取得した不動産の占有者に対する「引渡命令」について解説いたします。

1.不動産競売とは

「引渡命令」について詳しくご説明する前に、まずは不動産競売手続について簡単にご説明したいと思います。

不動産競売手続とは、裁判所が、債権者の申立てにより、債務者が所有する不動産を差し押さえた上で売却し、その代金を債務の弁済にあてる手続です。簡単に言えば、裁判所が職権で強制的に不動産を売却する手続ということになります。

不動産競売の入札は、オークション形式です。開札期日の時点で最も高額な買受金額を付けた入札者が「最高価買受申出人」となり、その後、裁判所が最高価買受申出人に売却を許可するかどうかの審査をします。売却許可決定が出れば、最高価買受申出人が買受人となります。

そして、買受人は、定められた期限までに代金を納付することにより、競売物件である不動産の所有権を取得し、所有権移転登記がなされます。

[参考記事] 不動産競売の流れ

2.引渡命令とは

上でご説明したように、不動産競売手続では、買受人は代金を納付することにより、競売物件の所有権を取得します。

ですが、元の所有者(債務者)など、競売物件を占有している者が物件を引き渡してくれないと、買受人は実際に物件を利用することができません。
そこで、物件の占有者に引き渡しを求めていくことになります。

まず、競売物件の元所有者(債務者)は、占有権原である所有権を失っていますので、買受人は元所有者に対し、所有権に基づく物件の明渡しを請求することができます。

また、物件の抵当権者や差押債権者等に対抗することができない賃借権や地上権といった用益権に基づいて物件を占有している者は、競売によるそれらの用益権の消滅により占有権原を失いますので、買受人はこれらの者に対しても所有権に基づく物件の明渡しを請求することができます。

このように、買受人は所有権に基づいて元所有者(債務者)や物件の占有者に対して物件の明渡を求めることができますが、買受人による明渡請求に対して、元所有者(債務者)やその他の占有者が任意に明渡してくれるとは限りません。
任意に明渡してもらえない場合には、強制的に明渡してもらうことになります。

そして、強制的に明渡しを実現するためには、明渡しの強制執行をすることになります。

明渡しの強制執行をするには、その前提として明渡請求訴訟を提起し、明渡しを認める確定判決(債務名義)を得るのが一般的な流れです(民事執行法22条1号)。

ですが、この方法は時間と手間がかかります。せっかく競売で物件を買い受けても、その後にまた時間と手間をかけて明渡請求訴訟をしなければ強制執行できないとなると、物件を買い受けたいという人が競売手続での参加(入札)を躊躇してしまうおそれがあります。

そこで、不動産の競売手続を適正・迅速に遂行するために、買受人に対しては、特別に競売手続の中で簡易・迅速に明渡の債務名義を取得できる手続が用意されています。それが引渡命令(民事執行法83条)です。

引渡命令は、申立て方法が簡易で、基本的に書面審査だけですので、一定の要件を満たしていれば、1週間程度で決定(不動産引渡命令)が出ます。

そして、引渡命令が出ても元所有者(債務者)や物件の占有者が明け渡さない場合には、引渡命令をもとに、明渡しの強制執行を申し立てることができます。

3.引渡命令の相手方

上でご説明したように、引渡命令は、不動産競売において競売物件の所有権を取得した買受人のために特別に用意された強制執行の例外にあたる手続ですので、誰に対してもいつでも利用できるというものではなく、利用できる対象や期間が制限されています。

まず、引渡命令が利用できる対象、つまり相手方ですが、「債務者(元所有者)」または「不動産の占有者で対抗力のある占有権原がない者」に限られます(民事執行法83条1項)。

不法占有者が「不動産の占有者で対抗力のある占有権原がない者」に含まれることは当然ですが、賃貸借契約に基づき当該不動産を占有している賃借人等のように、占有権原を有している者の場合には、その占有権原の対抗力の有無(競売手続の事件記録上、抵当権者や差押債権者等に対抗することができるか否か)を検討する必要があります。

たとえば、建物の賃借権の場合は、当該建物の引き渡しと当該建物への抵当権設定登記または差押え・仮差押えの登記の先後により優劣が決まりますので、賃借人への当該建物の引き渡しが抵当権設定登記がなされる前であれば、対抗力がある占有権原を有していることになり、賃借人への当該建物の引き渡しが抵当権設定登記がなされた後であれば、対抗力がある占有権原を有していないことになります。

なお、引渡命令の執行までの間に、債務者や不動産の占有者が第三者に占有を移転してしまうおそれがある場合は、買受人は占有移転禁止の保全処分を申し立てることができます(民事執行法77条1項3号)。

4.引渡命令を申し立てることができる期間

引渡命令を申し立てることができるのは、原則として、買受人が代金を納付してから6か月間です(民事執行法83条2項)。

ただし、買受けの時に民法395条1項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物を買い受けた場合は、6か月ではなく9か月以内となります(民事執行法83条2項)。

これは、民法395条1項に規定する抵当建物使用者には6か月間の明渡猶予が認められるため、買受人は6か月間は引渡命令の申立てができないことから、時間切れで申立てができなくなるということがないように申立期間が3か月長くなっているのです。

なお、「民法395条1項に規定する抵当建物使用者」とは、「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者」であって、「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」または「強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者」をいいます(民法395条1項)。

5.引渡命令の申立て方法

引渡命令の申立て方法は簡単です。申立書等の必要書類を揃えて、申立手数料と予納郵便切手を添えて裁判所に申し立てるだけです。

申立てに必要な書類は、下記になります(裁判所によって異なる可能性がありますので、実際に申立てをする際には申立裁判所にご確認ください。)。

  • 不動産引渡命令申立書
    申立人が作成します。書式は裁判所のサイトで入手可能です。申立書に押印する印鑑は、買受申出の際に使用したものを使用します。「当事者目録」及び「物件目録」も付ける必要があります。
  • 図面の写し
    対象を特定するために不動産引渡命令申立書に図面を使用した場合に必要となります。
  • 資格証明書
    申立人もしくは相手方が法人の場合に必要となります。
  • 調査報告書
    相手方が所有者以外の占有者の場合で、物件明細書の占有認定と違う場合のみ必要となります。
  • 受書

申立手数料と予納郵便切手ですが、たとえば東京地裁の場合ですと、申立手数料として「相手方の数×500円分」の収入印紙を申立書に貼付し、予納郵便切手として(94円×申立人の人数)+(1099円×相手方の数)を添えて申し立てをすることになります。

6.申立後の流れ

申立てに特に問題がなければ、通常は1週間程度で不動産引渡命令の決定が出され、申立人と相手方に郵送されます。

相手方は、引渡命令を受け取った日から1週間は、引渡命令について執行抗告(不服申立て)をすることができます。

その期間内に相手方から執行抗告がなされなかった場合は引渡命令が確定しますが、その期間内に執行抗告がなされた場合は、地方裁判所又は高等裁判所でその不服申立てについての裁判をすることになり、その裁判の結論が出るまで引渡命令が確定しないことになります。

引渡命令が出ても相手方から引渡しがなされない場合は、強制的に引渡しを実現するために、目的不動産の所在地を管轄する執行官に対して強制執行の申立てを行うことになります。

強制執行の流れは、不動産の明渡請求訴訟で確定判決を得て強制執行をする場合と同様です。

[参考記事] 不動産競売手続きにおける執行官の役割と現況調査について

7.まとめ

今回は、競売で取得した不動産の占有者に対する「引渡命令」について解説いたしました。

引渡命令の手続を利用すれば、時間と手間のかかる明渡請求訴訟をしなくて済みますので、競売不動産の買受人は大変助かります。

ただ、申立ての相手方や申立てができる期間は限定されていますので、買受後に引渡命令が利用できそうかどうかは、物件明細書を精査する等して、入札をする段階できちんと検討しておきましょう。

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