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不動産の競売・共有

競売で取得したマンションの管理費滞納分について

競売に出されている物件は、市場価格に比べて非常に安く入手できます。
しかし、競売にかかった物件である以上、前の持ち主はお金に困っているでしょう。例えば分譲マンションの場合、前の持ち主が管理費や修繕積立金などを滞納していることが多いという実情があります。

競売で分譲マンションを落札した場合、後日マンションの管理組合から「前の持ち主が滞納した管理費等を払ってください」と請求されることがあります。

はたして、前の持ち主が滞納した管理費を支払う義務は、落札者にあるのでしょうか?

1.前の持ち主の滞納管理費の扱い

いきなり結論ですが、落札者は以前の持ち主が滞納していた管理費を支払う必要があります。
これは、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」)という法律の第8条に定めがあります。

以前の所有者がマンションの管理組合に支払うはずだった管理費や修繕積立金を未払いにしていた場合、同じ物件を新しく所有する人は、以前の前所有者が滞納した金額を管理組合に支払わなければなりません。

区分所有法に加えて、マンションの管理規約の中にも同じような規定がある場合が多いです。マンションを購入した以上、購入者は管理組合に加入し、規約に従う必要があります。このため支払義務から逃れることはできません。

これは競売で落札した場合だけではなく、通常の不動産売買で中古マンションを手に入れた場合も同様です。

物件を入手した経緯はともかく、マンションの新所有者は、旧所有者の滞納していた管理費を支払うことになります。

【他にも支払うべきものはる?】
新所有者が支払い義務を負うのは滞納分の管理費だけではありません。修繕積立金や遅延損害金など、旧所有者が管理組合に払っていなかったお金を払うことになります。
特に遅延損害金については、民法の規定の倍である10%か、それ以上の額が上乗せされるケースが多いです。これは管理組合の規約によります。さらに、管理組合が管理費等の回収に弁護士を使った場合、弁護士費用まで請求されることがあります。
競売で安く物件を手に入れても、これらの費用が高額であれば、損失の方が大きくなってしまうかもしれません。

2.前の所有者に請求できるか

新所有者が旧所有者の滞納管理費等を支払ったとします。新所有者はなんとかして旧所有者から支払い分を取り返したいはずです。

しかし、通常の競売の場合、旧所有者からお金を払ってもらうことは基本的にできません。

競売では、裁判所が管理費等の滞納額などを考慮して「売却基準価額(最低売却価額)」を設定します。滞納分を値引きした状態で売られているような状態です。
そのため裁判所としては、「滞納分安くしたからプラマイゼロであり、落札者に損害は発生しない」などの判断を下すことが多いです。

仮に旧所有者に請求したとしても、支払ってもらえる可能性は極めて低いでしょう。請求にあっさりと応じる人は、そもそも管理費の滞納などしないからです。

回収の手間と時間を考えれば、「滞納金がある物件は避ける」のが無難かつ基本の対策と言えます。

3.滞納分が時効で消えることはある?

マンションの管理費等は「5年で時効によって消滅する」ことが、最高裁判所によって判断されています。

しかし、現実的に時効消滅することはほぼありません。債権者である管理組合が「時効の更新(旧民法では「時効の中断」)」をする手続きを行うからです。

時効の更新が成立すると、時効期間がゼロからカウントし直されてしまいます。
時効の更新は以下のような行為で成立します。

  • 裁判上の請求(訴訟の提起)
  • 支払督促
  • 強制執行や競売
  • 債務の承認(滞納金を払うと約束した、または1円でも払った)

また、内容証明郵便で催告された場合、その後6ヶ月は時効が完成しません。

さらに、マンション管理組合と新所有者が「滞納分をいつ支払うのか?」などについて協議をする旨を合意して、その合意を「書面」で行った場合も、一定期間(ケースによって異なる)時効が完成しなくなります。

債権者が時効の完成を阻止する方法は何通りもあるため、消滅時効を待ってもほとんどの場合は失敗に終わります。

4.滞納金等があるかどうか事前にチェックを

競売や売買のときには、その物件に関する書類に滞納金の有無などの情報が記載されます。
ただし、記載してある情報はあくまで「記載した時点で記載者が確認していた事実」を元にしていることにご注意ください。

たまに「この程度の滞納金なら支払えるから大丈夫」と考えて物件を買う人がいますが、情報が記載された後であっても管理費や修繕積立金の滞納は続いており、金額は膨らんでいます。遅延損害金も含めて考えれば、購入検討時に確認していた金額よりも高額になっているはずです。

既存の情報のみに頼るのではなく、購入希望先のマンションを管理している会社や不動産業者等を通じて最新の情報を調査することをおすすめします。

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