宅地建物取引士とは何?どうしたらなれるのか
「宅建」という言葉を知っている方は多いと思います。
本屋の資格試験コーナーには宅建試験の対策本が並んでいますし、「コスパの良い資格」「有望な資格」などでネット検索すると、宅建の名前がしばしば挙がるほどメジャーな資格です。
宅建試験に合格して所定の手続きを経れば「宅地建物取引士」を名乗ることができます。
では、宅地建物取引士になるとどういった仕事ができるのでしょうか?
本記事では宅地建物取引士の概要や仕事内容、宅地建物取引士になるための手順などについて紹介していきます。
宅地建物取引士になりたい方や仕事の概要を知りたい方はぜひお読みください。
1.宅地建物取引士の概要
宅地や建物は非常に高価な財産です。日常的に宅地や建物を取り扱っている専門の業者や投資家ならともかく、一般の人が家や土地を買うような機会はそうそうありません。
土地や建物の一部を借りる場合でも、借賃・敷金・礼金などが一般人にとって大きな負担となります。
しかし不動産の利用には様々な法律が関係します。そこに当事者同士の契約が絡んでくるため、法律や契約書独特の文言に慣れていない人にとっては、理解が困難な部分も多いはずです。
悪質な業者などは一般人の法的無知につけ込んで、不利な情報を巧みに隠した契約書を作るなどして金銭を巻き上げようとするかもしれません。
大きな財産である不動産を扱うにもかかわらず、契約内容がわかりにくいものであれば当事者としては不安で仕方がないはずです。
そういった不安を払拭し、公正で安全な不動産取引の実現を担うのが「宅地建物取引士(通称「宅建士」)」の役割です。
資格を持った宅建士が不動産取引の専門家として、不動産の購入者や借主に対して重要な事項をわかりやすく説明し、書面を交付します。
不動産の購入者や借主は契約前に行われる宅建士の説明を聞いて、契約書にハンコを押す前に契約内容や注意点をしっかりと知ることができます。
宅建士は安心して不動産取引を行うために必要な存在なのです。
2.宅建士の仕事内容
宅建士には宅建士以外の人が行えない「独占業務」があります。
独占業務とは、その資格を持っている人のみが「できること」であり、他の人が行ってはいけないことです。
ここでは、宅建士の独立業務を紹介します。
(1) 重要事項の説明
重要事項とは、簡単に言えば「その不動産を利用するにあたって買主や借主が知っておかなければいけないこと」です。
売買または賃貸契約の内容や条件はもちろん、他にも以下のようなものが重要事項に該当します。
- その不動産に関する法令上の制限
- 飲用水・電気・ガスなどの供給状況や排水設備
- マンションなど一つの建物を区切って作られた区分建物の場合は、敷地に関する権利の種類および内容等
これらはほんの一例で、実際には非常に多くの事柄が重要事項として設定されています。
重要事項の数は年々増加しており、消費者意識の高まりを反映して今後も増えていくと予想されています。
宅建士は売買または賃貸契約の「締結前」に、重要事項を口頭で説明しなければいけません。
買主または借主は宅建士の説明を聞いて「この物件にはそういった利用条件があるのか」と契約前に知ることができます。そして「そういう条件なら契約しよう」「契約をやめよう」などの判断を下せます。
宅建士が敢えて口頭で説明するのは、説明を受ける人の反応を見ながら理解しやすくわかりやすい言葉で要点を伝えるためです。単に説明文を棒読みするだけでは説明義務を果たしていないことになります。
もし宅建士が重要事項の説明をしないか、説明に不足があった、虚偽の説明をしたなどで、説明義務を果たさず取引相手に損害を与えた場合は、宅建士と宅建業者が共同で損害賠償責任を負わなければなりません。
(2) 重要事項説明書への記名・押印
重要事項説明書とは、重要事項説明の際に買主や借主などに交付して説明するための書面です。この書面には重要事項を記載する必要があります。
重要事項説明書は、宅地建物取引士が記名押印しなければなりません。
(3) 契約書等への記名押印
売買や賃貸借など契約が成立した場合は、不動産業者が取引の当事者に書面を交付する必要があります。実務上は契約書として作成されることが多いです。
この書面には売買代金や家賃等の金額および支払方法、物件の引き渡し時期などの契約内容を記載しなければなりません。
そしてその書類には、必ず宅地建物取引士が記名押印をすることになっています。
3.宅地建物取引士になるにはどうすればいい?
宅建士になるにはいくつかのステップを経なければなりません。流れを順にご紹介します。
(1) 宅地建物取引士資格試験に合格する
宅建士になる最初のステップは「宅地建物取引士資格試験」という試験に合格することです。
この試験は年に1回(2020年は新型コロナウィルス感染症の影響で年2回)しか開催されない国家資格試験としては、最大の受験者数を誇っています。
試験は50問のマークシート形式で行われます。合格点は毎年変動し、31~37問の正解で合格となります。合格率は毎年平均して15%前後です。
出題範囲は民法や宅建業法、その他法令や不動産関連知識など、多岐にわたります。
受験資格がないため誰でも受験可能ですが、過去の試験で不正行為をした人は3年間受験できません。
受験の際は必ず公式ホームページ等を閲覧し、最新の情報を入手してください。
(2) 2年以上の実務経験を積むか登録実務講習を修了する
試験に合格してもまだ宅建士ではありません。単に「試験に合格した人」です。
宅建士になるには以下の条件のいずれかを満たす必要があります。
- 宅地建物の取引に関して2年以上の実務経験を有する
- 登録実務講習を受講し、修了する
登録実務講習は基本的に2日で終わるので、早く宅建士になりたい人は講習を受講することが多いです。
既に不動産会社などに勤務しており2年以上の実務経験がある人は、すぐに次のステップへ進むことができます。
(3) 宅建士として登録する
前述の条件のいずれかを満たした人は、試験を受けた都道府県知事に宅建士の登録を申請できます。
登録申請を受け付けているのは、各都道府県にある「宅地建物取引業協会」などの団体です。
過去5年以内に禁錮刑や懲役刑を受けたなど一定の条件に当てはまる場合以外であれば、基本的に問題なく宅建士として登録され、後日登録通知書が郵送されてきます。
(4) 宅地建物取引士証の交付を申請する
登録通知書が届いたら「宅地建物取引士証」という書類の交付を申請します。これも宅地建物取引業協会などで行います。
申請をするには以下の条件のどちらかを満たす必要があります。
- 宅建試験に合格して1年以内
- 宅建合格後1年以上経っている場合は、直近6ヶ月以内に「法定講習」を受講している
宅地建物取引士証が交付されると、晴れて「宅建士」を名乗れるようになります。
【5年に1回更新が必要】
宅建試験に合格すれば、その効力は一生続きます。宅建士に登録した事実も一生消えないため、登録を更新する必要はありません。
しかし宅地建物取引士証は5年に1回の更新が必要です。更新に際しては法定講習の受講が義務付けられており、これによって知識をアップデートしていきます。
転職などで宅建士としての業務を行わないのであれば、特に更新の必要はありません。
4.宅建士になりたいならまずは宅建試験合格を目指す
宅建士は不動産取引における法務のプロとして、特定の業種において常に需要が多い資格です。
宅建試験は難関ですが、受験者数が多いため通信教育やスクールの数が多いなど、学習しやすい環境がある試験です。もちろん、独学でもしっかり勉強すれば合格が狙えます。
興味のある人はぜひ挑戦してください。