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定期建物賃貸借契約の契約期間につき、上限や下限はある?

定期建物賃貸借契約の契約期間そのものには上限や下限はありません
ただし、契約期間が長期にわたる場合には、予想外の事態が生じるリスクがあるため注意が必要です。

ここでは、定期建物賃貸借契約の契約期間の上限と下限を解説します。

なお、定期建物賃貸借契約については以下のコラムをご覧ください。

[参考記事] 普通建物賃貸借と定期建物賃貸借の違いを解説

1.上限

民法604条は賃貸借契約期間の上限を50年としていますが、借地借家法(以下省略)29条2項は、民法604条を「建物の賃貸借には適用しない」としているため、定期建物賃貸借の契約期間に上限はありません(なお、普通の建物賃貸借契約も同様です)。

(1) 中途解約

定期建物賃貸借契約でも、特約により期間満了前に当事者の申し入れで契約を終了させる「中途解約」は有効です。
また、賃借人は中途解約の特約がなくても中途解約できることがあります(38条5項)。

具体的には、下記の条件を満たした場合に解約が可能です。

  1. 居住の用に供する建物(店舗併用住宅を含む)
  2. その床面積が200平方メートル未満
  3. 賃借人に、中途解約せざるを得ないやむを得ない事情がある
  4. 賃借人が3の事情により建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となった
  5. 賃借人からの契約終了1か月前の解約申し入れ

この借地借家法に基づく中途解約は、賃貸人にとって予想外の解約リスクとして無視できません。

1と2の条件はたいてい満たすでしょうし、ポイントとなる3と4についても、借地借家法で例示されている「転勤、療養、親族の介護」は、長いスパンで考えれば十分ありえる事態です。

(2) 中途解約リスクは排除できない

38条6項は、中途解約について賃借人に不利な特約を無効としています。
賃借人が中途解約できないようにすることは許されませんし、契約終了までの期間を1ヶ月よりも長くする特約も無効となります。

賃借人がやむを得ない事情で中途解約するときは、少しでも早く契約を終了させるほうが賃借人に有利なためです。

なお、38条5項の「やむを得ない事情」以外のケースにおいて、同項ではなく特約に基づき中途解約するときは、この期間を長くしてもかまいません。

2.下限

定期建物賃貸借契約の契約期間には下限もありません。38条1項後段があるためです。

29条は、1年未満の建物賃貨借契約を「期間の定めがない建物賃貸借」とみなしていますが、38条1項後段は、定期建物賃貸借契約には29条が適用されないとしているのです。

契約期間を1年以上とした際には、「期間満了により契約が終了する通知(38条4項本文)」にご注意ください。
この通知が遅れると、事実上、契約期間が延長されたような状態が生じてしまいます。

通知から6か月を経過するまでは契約終了を賃借人に主張できず、明け渡しなど契約終了を前提とした要求ができないのです(38条4項ただし書き)。

契約終了日を経過してから通知をした場合も同様です(東京地方裁判所 平成21 年3月19日判決)。

なお、中途解約と同じく、期間満了通知の規定に関しても賃借人に不利な内容にすることはできません(38条6項)。

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