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根抵当権とは?|抵当権との違い

「根抵当権(ねていとうけん)」という言葉をご存知ですか?
「抵当権」と同じようなものと理解している方もいるかもしれませんが、これは抵当権とは大きく異なる特徴を有する担保権です。

これから根抵当権を設定する予定である方や、根抵当権付きの不動産を相続したという方は、根抵当権という制度をしっかりと理解しておかなければ、将来思わぬ不利益を被る可能性もあります。

今回は、「根抵当権」について詳しく解説します。

1.根抵当権とは

根抵当権とは「一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する」と規定されています(民法398条の2)。
特定の債権を担保するものではないため、あらかじめ設定された極度額を上限として、繰り返し融資を受けることが可能という特徴があります。

たとえば、金融機関からA社が融資を受ける際に、極度額5000万円の根抵当権を設定して、2000万円の融資を受けたとします。

その後、追加の融資が必要になったとしても、根抵当権を設定しておくことで、A社は、5000万円の範囲であれば、繰り返し融資を受けることができます。

また、当初借り入れた2000万円を返済したとしても、根抵当権が消滅することはありませんので、資金需要が生じた際に5000万円の範囲であれば、迅速に融資を受けることが可能になります。

そのため、根抵当権は、主に継続的取引を前提とする中小企業の事業者において利用される担保であるといえます。

【一般消費者が根抵当権を設定されるケース】
根抵当権は、主に事業者が利用する手段といえますが、一般消費者が根抵当権を利用するケースもあります。
・リバースモーゲージを利用するケース:リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借入れし、自宅にそのまま住み続け、借主が死亡したときに担保の設定された自宅を処分し、借入金を返済するというものです。根抵当権の設定によるリバースモーゲージであれば、極度額の範囲で何度でも繰り返し借り入れをすることができますので、自宅のリフォーム、生活費、介護費用など老後の生活資金の活用に幅がでる方法といえるでしょう。
・注文住宅を建てるケース:注文住宅の場合には、土地の購入、建物の着手金、中間金、残金の支払いなど建物が完成するまでの間に何度も支払いが発生することがあります。その都度抵当権を設定することもできますが、根抵当権を利用することによって、極度額の範囲内であれば繰り返し融資を受けることができますので、登記費用の節約につながります。

2.根抵当権と抵当権の違い

根抵当権と似た言葉に「抵当権」というものがあります。抵当権の方がイメージしやすいという方も多いかもしれません。以下では、根抵当権と抵当権の主な違いについて紹介します。

(1) 担保する債権の種類

抵当権は特定の債権を担保しますが、根抵当権は一定の範囲に属する不特定の債権を担保するという違いがあります。

「不特定の債権を担保する」とは、設定の段階では具体的にどの債権が根抵当権で担保されるのかはっきりしていないという意味です。

いつ、いくらの債権が発生するのかは、当事者間で具体的な取引をするまで不明です。

(2) 附従性と随伴性

抵当権は、特定の債権の存在を前提としていますので、その債権が消滅すれば抵当権も消滅します(附従性)。また、抵当権によって担保される債権が譲渡されれば、抵当権はその債権とともに移転します(随伴性)。

このように、抵当権は、附従性と随伴性があることが特徴ですが、根抵当権には附従性と随伴性はありません

根抵当権は、極度額の範囲内であれば、繰り返し借り入れを繰り返すことができる担保権ですので、債務をすべて返済したとしても根抵当権は消滅することはありません。また、根抵当権は、債権が譲渡されても当然には移転しません。

ただし、元本確定後は、根抵当権も抵当権と同様に附従性と随伴性を有することになります。

(3) 担保する範囲

抵当権は、元本のほか利息その他の定期金、遅延損害金を担保します(民法375条)。
根抵当権は、極度額の範囲内であれば元本のほか利息、遅延損害金が担保されますが、極度額を超える部分は、一切担保されることはありません(民法398条の3第1項)。

判例でも、「根抵当権についての極度額の定めは、単に後順位担保権者など第三者に対する右優先弁済権の制約たるにとどまらず、さらに進んで、根抵当権者が根抵当権の目的物件について有する換価機能の限度としての意味を有するものであって、その結果、根抵当権者は、後順位担保権者など配当を受けることのできる第三者がなく、競売代金に余剰が生じた場合でも、極度額を超える部分について、当該競売手続きにおいてはその交付を受けることができないものと解するのが相当である」と判示しています(最判昭和48年10月4日)。

【根抵当権の極度額とは】
根抵当権は、極度額の範囲で不特定の債権を担保するものです。「極度額」という言葉からはお金を借りることができる「限度額」をイメージする方も多いでしょう。しかし、極度額と限度額は、厳密にいえば異なるものになります。
根抵当権を設定して金融機関からお金を借りる場合には、多くの場合、極度額の80%前後が貸出限度額とされています。そのため、極度額まで借りることができるというわけではありませんので注意しましょう。このように貸出限度額が極度額の80%前後に設定されている理由は、債務者が支払い不能に陥った場合に、根抵当権者が元金だけでなく、利息や遅延損害金も含めた金額を回収するためです。

3.根抵当権のメリットとデメリット

根抵当権を設定することによって、以下のようなメリットとデメリットが生じます。
根抵当権を設定しようと考えている借主の方は、このようなメリットとデメリットを踏まえて慎重に検討するようにしましょう。

(1) 根抵当権のメリット

①極度額の範囲内で繰り返し融資を受けることができる

根抵当権を設定すれば、極度額の範囲内で、何度でも繰り返し融資を受けることが可能になります。

追加の融資が必要になった場合に、その都度抵当権を設定していては、時間と手間がかかりますし、融資時に先順位の担保権者が存在している場合には、担保価値の不足によって追加の融資を受けることができないこともあります。

このように、根抵当権は、迅速な資金需要に対応することができるというメリットがあります。

②登記手数料が節約できる

抵当権を利用する場合には、融資を受けるたびに抵当権設定登記を行わなければなりませんので、その都度登記手数料が発生します(登録免許税、司法書士費用など)。

根抵当権を利用すれば、根抵当権設定時の登記のみで足りますので、継続的な融資を予定している場合には、登記手数料を節約することができるというメリットがあります。

(2) 根抵当権のデメリット

①他の金融機関から融資が受けにくくなる

根抵当権は、極度額の範囲内で不特定の債権を担保するものです。そのため、極度額が1億円と設定されていた場合には、たとえ1000万円しか借りていなかったとしても、1億円の融資を受けているものとして、当該不動産の担保価値が評価されてしまいます。

そのため、他の金融機関に融資を申し込んだとしても、十分な担保価値がないものとみなされて融資を断られてしまうこともあります。

②根抵当権抹消手続きが複雑

根抵当権は、設定時や繰り返し融資を受ける際には、抵当権よりも時間と手間が省略できる便利な手段ですが、根抵当権を抹消する場合には、複雑な手続きが必要になります。

抵当権であれば、被担保債権を全額返済すればそれによって抵当権は消滅しますので、抵当権の抹消も容易です。しかし、根抵当権の場合には、債権を全額返済したとしてもそれだけでは、根抵当権は消滅せず、根抵当権を設定した金融機関との間で根抵当権解除の交渉をしなければなりません。

金融機関としても根抵当権解除によって大口の取引先を失うことになってしまいますので、抹消を求めても消極的な対応をされるということもあるようです。

4.まとめ

抵当権と根抵当権は、不動産を担保として融資を受けるという点では共通しますが、それぞれ異なる特徴を有する制度になっています。

根抵当権は、主に中小企業の事業者が利用する資金調達手段といえますが、個人でも利用するケースが増えてきています。
メリットだけでなくデメリットも存在しますので、きちんと制度を理解した上で利用するようにしましょう。

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