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日照権とは|法律・判例・トラブル事例・救済方法などを詳しく解説

「住んでいる家の隣に新しく家やマンションなどが建設され、日当たりを妨害されてしまった」というお悩みはよく耳にします。

法的には「日照権」という権利が認められており、日当たりを妨害している建物の建築態様などによっては、工事の中止や損害賠償などを請求できる場合もあります。

もし、ご自身の日照権を侵害されているのではないかと思った場合には、弁護士に相談のうえで適切に対応しましょう。

この記事では、日照権に関する法律・判例・トラブル事例・救済方法などを詳しく解説します。

1.日照権とは?

「日照権」とは、居宅に差し込む日照によって快適で健康な生活を送ることができる権利または法律上の利益をいいます。

(1) 日照権の法律上の根拠

「日照権」という権利について、明文で規定した法律は存在しません。
学説や裁判例上、日照権の法的性質については議論が分かれており、以下の各説が提唱されています。

①物権的請求権説

土地・建物の所有権に、日照を享受する権利が含まれているので、所有権に基づく妨害排除請求等として、日照の確保等を請求できるという考え方です。

②人格権説

日本国憲法13条後段に規定される「幸福追求権」から当然に導かれる「人格権」の一種として、日照を享受する権利が存在するという考え方です。

③不法行為説

日照を享受しながら快適・健康に生活することは、少なくとも法律上の利益として保護されるべきであることを前提に、日照妨害を違法行為と捉える考え方です。

④環境権説(日照権説)

明文のない新たな権利として、「環境権」や「日照権」を直接認めようとする考え方です。

(2) 日照権を認めた判例

いわゆる「日照権」に当たる権利または法律上の利益は、最高裁昭和47年6月27日判決によって、その存在が肯定されています。

同最高裁判決は、「日照権」の内容について以下のとおり判示し、具体的な事情を総合的に考慮したうえで、日照権侵害による損害賠償請求を認容しました。

「居宅の日照、通風は、快適で健康な生活に必要な生活利益であり、それが他人の土地の上方空間を横切ってもたらされるものであっても、法的な保護の対象にならないものではなく、加害者が権利の濫用にわたる行為により日照、通風を妨害したような場合には、被害者のために、不法行為に基づく損害賠償の請求を認めるのが相当である。

2.日照権侵害の「受忍限度」

住民が「日照権」を有するとしても、隣接地の所有者もまた、自ら所有する土地に建物を建築する自由を有していますので、両者の権利・利益の調整が必要となります。

日照権に関する隣家同士の権利・利益を調整するための考え方として、前掲の最高裁昭和47年6月27日判決を含めて、一般的に採用されているのが「受忍限度論」です。

同最高裁判決は、受忍限度論に相当する規範として、以下のとおり判示しています。

「ところで、南側家屋の建築が北側家屋の日照、通風を妨げた場合は、もとより、それだけでただちに不法行為が成立するものではない。
しかし、すべて権利の行使は、その態様ないし結果において、社会観念上妥当と認められる範囲内でのみこれをなすことを要するのであって、権利者の行為が社会的妥当性を欠き、これによって生じた損害が、社会生活上一般的に被害者において忍容するを相当とする程度を越えたと認められるときは、その権利の行使は、社会観念上妥当な範囲を逸脱したものというべく、いわゆる権利の濫用にわたるものであって、違法性を帯び、不法行為の責任を生ぜしめるものといわなければならない。」

受忍限度論によれば、土地の所有者は土地上に建物を建築する権利を有するものの、その建築の内容が、隣家など周辺住民の権利・利益を不当に害していると認められる程度に至っている場合には、権利逸脱または権利濫用として違法となります。

「受忍限度」の範囲は社会観念(社会通念)によって定められるとされていますが、主に以下の観点が重点的に考慮されるものと考えられます。

(1) 建築基準法や行政処分に違反しているかどうか

もっとも重要なポイントは、日照権を侵害していると主張される建物が、建築基準法上の高さ制限・日影規制(建築基準法56条、56条の2)や、建築基準法等の法令に基づいて行われた行政処分に違反する状態にあるかどうかという点です。

建築基準法の高さ制限・日影規制が定められている主な趣旨は、まさに隣家同士の日照に関する権利・利益の調整を図ることにあります。

つまり住民としては、隣地に建物が建つとしても、あくまでも建築基準法の規制の範囲内の高さ等に収まるという合理的な期待を持っているので、その範囲では「日照権」を保障すべきと考えられます。

逆に言えば、建築基準法上適法とされる建物であれば、隣家の日照権を侵害していると評価されることはないのが原則です。

前掲の最高裁昭和47年6月27日判決でも、二階部分の増築行為が建築基準法に違反し、かつ東京都知事からの工事施行停止命令・違反建築物の除却命令を無視して建築工事を強行した点を、日照権侵害を認定した主要な理由として挙げています。

(2) 日照権侵害の程度

被害者が日照に関してどの程度の不利益を受けているかという点も、日照権侵害の有無を判断するに当たって重要な考慮要素になります。

大前提として、加害建物が建っていない状態での日照条件と、建った後の日照条件を、日照時間や日照量の減少に関する客観的なデータを用いて比較することになります。

さらに、被害建物が日照を確保する必要性の高い用途に用いられている場合には、被害者の不利益が大きいと評価されやすい傾向にあります。

たとえば、被害建物が幼稚園や病院などの保育・医療施設である場合には、通常の場合よりも日照権侵害が認められやすくなるでしょう。

(3) その他の判断要素

上記以外の日照権侵害の判断要素としては、以下のものが挙げられます。

  • 加害建物を建築する必要性(公共的な建物などであれば、建築の必要性が高いと評価されやすい)
  • 日照権侵害を回避、軽減するための代替的な手段があるかどうか
  • 建築に至るまでにきちんと周辺住民への説明が行われたかどうか

3.日照権侵害に関するトラブル事例

日照権侵害については、法律で明確にルールが決まっているわけではないため、具体的な事情によっては、日照権侵害の有無についての判断が難しい場合もあります。

以下では簡単な設例を用いて、日照権侵害に関するよくある疑問について解説します。

(1) 日照権を主張すれば近隣に建物は建たない?

<例①>
Aは10階建てマンションの3階(南向き)に住んでおり、現状は十分な日当たりを確保できている。しかし、南側に位置する隣地において、別のマンションの建築計画が持ち上がっていると聞いた。新しく南側にマンションが建ってしまうと、低層階の居室の日照が大きく阻害されてしまう。Aは、日照権を主張して建築工事を阻止したいと思っている。

日照権に基づく建築工事の差止請求は、被害者側の権利侵害の程度によっては可能と考えられています(具体的な差止請求の手段は、次の項目で紹介します)。

ただし、不法行為に基づく損害賠償請求に比べて、建築工事の差止請求は加害者側の不利益が大きいことから、特に日照権侵害の程度が著しい場合に限って認められると考えられます。

実際に差止請求が可能かどうかを判断するには、弁護士に相談して法的な検討を行うとよいでしょう。

(2) 方位は関係ある?

<例②>
Bが住んでいる一軒家の東側に5階建てのオフィスビルが建設され、朝の日照条件が悪くなってしまった。昼間の日照条件はほとんど変わっていないが、Bは日照権侵害を理由として、オフィスビルの所有者に対して損害賠償請求をしたいと思っている。

日照権侵害が認められるのは、加害建物が被害建物の南側に位置している場合に限りません。

そのため、加害建物が被害建物の東側に位置している例②のケースでも、日照権侵害に基づく損害賠償請求が認められる可能性はあります(北側・西側の場合も同様。ただし北側の場合は、日照条件の悪化が軽微であると判断されることが多いと考えられます)。

建築基準法令への違反があることを前提として、日照権侵害に基づく損害賠償請求が認められるかどうかは、実際に日照条件がどの程度阻害されたかを客観的なデータによって調査・評価したうえで判断されます。

例②のケースでは、日照が阻害されている時間の長さや日照量の変化の程度などによって、損害賠償請求の可否が判断されることになるでしょう。

(3) 隣家が2階建て(低層)の場合も日照権侵害を主張できる?

<例③>
Cが住んでいる平屋の一戸建て住宅の南側に、2階建ての一戸建て住宅が新たに建築され、日中の日照が大きく阻害されてしまった。Cは日照権侵害を理由として、2階建ての一戸建て住宅に住む隣人に対して損害賠償を請求したいと考えている。

マンションやオフィスビルなどの高層建物が建築された場合のみならず、2階建て・3階建てなどの低層建物についても、日照権侵害を主張する余地はあります。

低層建物による日照権侵害の有無についても、一般的な規範に沿って、建築基準法令への違反の有無および被害者が受けている日照に関する不利益の程度などを考慮して判断されます。

(4) 樹木やフェンスのせいで日当たりが悪くなった場合は?

<例④>
Dは平屋の一戸建て住宅に住んでいるところ、最近隣人のEが庭に樹木を植えたり、樹木の保護用フェンスを設置したりしたため、日中の日照が阻害されるようになってしまった。DはEに対して、日照権侵害に基づく樹木やフェンスの除去を請求したいと考えている。

日照を阻害する原因が建物自体ではなく、樹木やフェンスなどの設置物である場合にも、日照権侵害を主張する余地はあります。

樹木やフェンスなどの設置物による日照権侵害については、建物による場合とは異なり、主に民法の所有権や相隣関係などの規定に沿って、違法性が判断されます。

なお、樹木やフェンスなどの設置物の場合、建物自体よりも除去することがはるかに容易です。
そのため、加害者側の行為の違法性が認められれば、被害者側の除去請求が認められる可能性は高いでしょう。

4.日照権侵害の救済手段

日照権侵害に対する救済手段は、主に「損害賠償請求」と「建築工事の差止請求」が考えられます。

(1) 損害賠償請求

日照権侵害は民法上の「不法行為」(民法709条)に該当するため、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます。

損害賠償請求には、加害者側との交渉や調停によって賠償内容を合意する方法と、訴訟を提起して損害賠償を認める判決を得る方法の2つが考えられます。

(2) 建築工事の差止請求

日照権侵害による被害の程度が著しい場合には、建築工事自体の差し止めを求める方法も考えられます。

建築工事を差し止めるためには、行政庁による建築確認を取り消してもらうことが必要です。
そのための方法としては、建築基準法上の審査請求(建築基準法94条1項)や、行政訴訟の一種である取消訴訟(行政事件訴訟法8条1項)などがあります。

また、建築工事がまさに行われようとしているか、または進行中であり一刻も早く建築工事をストップさせる必要性が高い場合には、「仮の地位を定める仮処分」(民事保全法23条2項)を申し立てることも考えられます。

ただし、仮処分の申立てには高額の保証金を預託する必要があるので、実際に申立てを行うべきかどうかは、弁護士と相談して慎重に検討することをお勧めいたします。

5.まとめ

日照権には法律上の明確なルールがないため、侵害の有無を判断するには、ケースバイケースで入念な検討を行う必要があります。

そのため、隣家による日照権侵害にお悩みの方は、一度弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

損害賠償請求や差止請求の可否などについて、事情を詳しく聞いたうえでアドバイスをしてもらえます。
(当所では、日照権侵害についてはご相談を承っておりません。)

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