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民法改正により建物賃貸借契約が受ける影響(2020年4月施行)

2020年4月1日に、民法のルールを大幅に変更する改正法が施行され、各方面で実務の見直しが行われました。

マンションオーナーの方が関係する建物賃貸借契約についても、改正民法の影響を受ける部分がありますので、改正のポイントを正確に理解しておきましょう。

この記事では、2020年4月に施行された改正民法によって、建物賃貸借契約が受ける主な影響について解説します。

1.賃貸人による建物譲渡時の取り扱い

賃貸物件の所有者が売買等によって変更された場合、賃貸借契約上の賃貸人たる地位がどのように取り扱われるかについては、長年重要な法律上の論点でした。

今回の民法改正では、主に判例法理を整理する形で、物件譲渡時における賃貸人たる地位の移転に関する取り扱いのルールが定められています(民法605条の2)。

(1) 賃貸人たる地位は原則として譲受人に移転

賃貸物件の所有権が第三者に移転された場合、それに伴って賃貸借契約上の賃貸人たる地位も譲受人に移転するのが、最高裁判例の立場です。

「自己の所有建物を他に賃貸している者が賃貸借継続中に右建物を第三者に譲渡してその所有権を移転した場合には、特段の事情のないかぎり・・・賃貸人の地位もこれに伴って右第三者に移転する」(最高裁昭和39年8月28日判決)

改正民法では、上記の判例法理が明文化され、賃貸不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位が譲受人に移転することが定められました(民法605条の2第1項)。

なお、上記の賃貸人たる地位の移転が発生するのは、賃借人が賃貸借の対抗要件(民法605条、借地借家法10条、31条)を備えている場合に限られます。

対抗要件とは、賃貸人と賃借人間の賃貸借契約が、賃貸人と賃借人以外の第三者に対して賃貸借契約を主張するための要件をいいます。民法605条では登記、借地借家法10条では土地の上に借地権者が登記されている建物を所有していること、同31条では建物の引渡しが必要とされています。

もし賃借人が賃貸借の対抗要件を備えていない場合、譲受人に対して賃借権の存在を対抗できず、賃借権は消滅します。

(2) 譲渡人・譲受人間の合意によるリースバック

前述のように、賃貸物件の譲渡によって賃貸人たる地位は移転するのが原則です。

しかし、不動産ファイナンスの実務においては、投資法人に対して賃貸物件を譲渡した後、投資法人から当該物件をそのまま賃借する「リースバック」がしばしば行われています。

旧民法では、上記のケースで投資法人から賃貸物件を借り受ける立場となった賃貸人が、引き続き賃貸人の立場で賃借人から賃料を受け取るには、賃借人全員の同意を取得しなければなりませんでした。

しかし、投資法人が購入する賃貸物件には、通常多数の入居者が存在するため、賃借人からの同意取得が煩雑になるデメリットが存在しました。

そこで改正民法では、上記のリースバックを円滑に行うため、譲渡人と譲受人の間で合意すれば、賃借人の同意を要せずして、賃貸借契約の賃貸人たる地位を譲渡人に留保できるものと定められました(民法605条の2第2項)。

その一方で、賃貸物件の入居者の地位が不安定になることを防ぐため、譲渡人・賃借人(入居者)間の賃貸借契約が終了した場合には、自動的に譲受人・賃借人間の賃貸借関係へと移行する旨が規定されています。

(3) 賃借人に賃料を請求するには対抗要件具備が必要

従前からの判例法理に従うと、賃貸物件の譲渡等によって賃貸人たる地位の移転が発生した場合、その旨を賃借人に対抗するためには、新賃貸人が所有権移転登記を経由する必要があります。

「本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、民法一七七条の規定上、被上告人としては上告人に対し本件宅地の所有権の移転につきその登記を経由しなければこれを上告人に対抗することができず、したがってまた、賃貸人たる地位を主張することができない」(最高裁昭和49年3月19日)

したがって、新賃貸人は所有権移転登記を経由しなければ、賃借人に対して賃料を請求することができません。

これは、賃借人による賃料の二重払いの危険を防ぐことを目的としています。

改正民法でも、上記の点が明文化され、賃貸物件の譲渡による賃貸人たる地位の移転は、所有権移転登記を経由しなければ賃借人に対抗できないことが規定されました(民法605条の2第3項)。

(4) 敷金返還債務は譲受人に承継

賃貸物件の譲渡等によって賃貸人たる地位が移転する場合、敷金返還債務については、移転時点の残額をもって新賃貸人に移転するのが最高裁判例の立場です。

「建物賃貸借契約において該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があった場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済としてこれに当然充当され、その限度において敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみその権利義務関係が新賃貸人に承継される」(最高裁昭和44年7月17日判決)

改正民法605条の2第4項では、上記の点が明文化されています。

2.建物の修繕に関する取り扱い

賃貸物件の修繕費をどちらが負担するかという点は、賃貸人・賃借人の間で揉めやすいポイントです。

改正民法では、賃貸物件の修繕に関する取り扱いが、以下のとおり明文化されています。

(1) 賃貸人・賃借人の責任分担を明確化

旧民法では「賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕をする義務を負う」とのみ定められており、どの範囲で修繕義務を負うかについては、条文上明確ではありませんでした。

この点、賃貸物件の損傷等について賃借人の帰責性がある場合には、むしろ賃借人の側が債務不履行または不法行為に基づき損害賠償義務を負うため、賃貸人は修繕義務を負わないとするのが通説・実務の取り扱いでした。

改正民法606条1項では、上記の取り扱いが明文化され、「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったとき」には、賃貸人が修繕義務を負わないことが定められています。

(2) 一定の場合には賃借人による修繕も可能

賃貸人が修繕義務を負うにもかかわらず、タイムリーに修繕を行わない場合、賃借人が賃貸物件を自ら修繕してよいかどうかは、賃貸物件を円滑に使用する観点から重要な論点です。

しかし旧民法では、賃借人による賃貸物件の修繕に関する明文規定がなかったため、賃借人がどこまで修繕を行ってよいかわからないという問題がありました。

改正民法607条の2では、賃借人による修繕に関するルールを明文化し、以下のいずれかの要件を満たす場合には、賃借人が賃貸物件を自ら修繕できる旨が定められました。

①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
②急迫の事情があるとき

3.賃貸借契約終了時の原状回復

賃借人は、賃貸借契約が終了した際、賃貸物件を原状回復する義務を負います。

旧民法では、賃借人がどの程度の原状回復を行うべきかについての規定はありませんでした。

この点、最高裁平成17年12月16日判決などによって、「社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少」(=通常損耗、経年変化)については、賃貸人・賃借人間の特約がない限り、賃借人が原状回復義務を負わないとされています。

これは、通常の使用によって発生する損耗等は、賃料の対価として既に織り込まれていると考えられるためです。

改正民法621条では、上記の判例法理が明文化され、賃貸人と賃借人の間で、以下のように原状回復に関する責任が振り分けられています。

  • 通常の使用および収益によって生じた賃借物の損傷
    →賃貸人負担
  • 賃借物の経年変化
    →賃貸人負担
  • 賃借人の責めに帰することのできない事由による損傷
    →賃貸人負担
  • 上記以外の、賃借人が賃借物を受け取った後に生じた損傷
    →賃借人負担

4.敷金に関するルールを明文化

建物賃貸借契約では、契約から生じる一切の債務を担保するために、賃借人から賃貸人に対して「敷金」が差し入れられるのが通常です。

この「敷金」については、実務上広く用いられているにもかかわらず、旧民法上は何ら具体的な規定がありませんでした(敷金について判示した判例として、大審院大正15年7月12日判決、最高裁昭和48年2月2日判決、最高裁昭和49年9月2日判決、最高裁昭和53年12月22日判決など)。

改正民法622条の2では、以下の各点について明文化し、建物賃貸借契約に伴う敷金の取り扱いが詳細に規定されました。

  1. 敷金は、その名目を問わず、賃貸借契約から生じる債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に交付される金銭を意味する
  2. 賃貸人は、賃貸借契約終了後、賃借人が賃貸物の返還を受けた後に、敷金から既発生の債務額を控除した残額を賃借人に返還する
  3. 賃貸借契約上の債務不履行が発生した場合、賃貸人は自らの選択により、敷金を弁済に充当できる(賃借人が敷金充当を請求することはできない)
  4. 賃借人が、第三者に賃借権を適法に譲り渡した場合、その時点で敷金の精算を行う

5.まとめ

今回の民法改正による賃貸借に関する条文変更は、大部分が従来の判例法理を明文化したものであり、不動産実務に与える影響は限定的と考えられます。

その一方で、リースバックや賃借人による修繕の取り扱いなど、一部新たに設けられたルールも存在するため、各規定の内容を正確に理解しておくことが大切です。

もし民法改正との関係で、不動産賃貸借契約書の見直し等が済んでいない事業者の方がいらっしゃれば、一度弁護士までご相談ください。

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