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再建築不可物件とは|リフォームは可能?再建築を可能にする方法は?

不動産市場に出回っている建築物の中には、相場よりも非常に安い価格で取引されているものがあります。
その場合、「再建築不可物件」でないかを念のため確認しましょう。

再建築不可物件は、取引価格がかなり安い反面、建築基準法との関係で、建替えや増改築が厳しく制限されています。
築年数も古いため、実際に購入する際には十分な注意を払い、事前に慎重な検討を行うことをお勧めいたします。

この記事では、再建築不可物件の概要やメリット・デメリット、さらにリフォームの可否・再建築を可能にする方法などについて詳しく解説します。

1.再建築不可物件とは?

再建築不可物件は、建築基準法との関係で建て直すことができない建築物(およびその敷地)です。

再建築が不可とされていることには、「接道義務」に関する規定が関係しています。

(1) 接道要件を満たさない土地に建築された建築物

都市計画区域および準都市計画区域内で建築物を建築する際には、「接道義務」が適用されることになっています(建築基準法41条の2、43条1項)。

「接道義務」とは、建築物が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないという規制を意味します(建築基準法42条、43条1項)。

接道義務が設けられているのは、避難経路の確保や緊急車両の通行経路の確保などを目的としています。

現行の建築基準法上、接道義務を満たさない土地に建築物を建築しようとしても、建築確認が下りないため、着工することが認められません。

ただし実際には、接道義務を満たさない土地に建っている建築物も存在します。

後述する理由から、このような建築物は違法建築ではないことが多いです。
しかし、一度取り壊してしまえば、改めて建築物を建築することができないことから、このような建築物(およびその敷地)を「再建築不可物件」と呼んでいます。

【再建築不可物件が存在する場所】
再建築不可物件が再建築不可となっているのは、建築基準法上の「接道義務」の規制によります。
接道義務の規制は、都市計画区域および準都市計画区域にしか適用されません。
したがって、再建築不可物件が存在するのも、都市計画区域および準都市計画区域に限られます。

[参考記事] 建築基準法とは|主な規制内容をわかりやすく解説

(2) 再建築不可物件が存在する理由

再建築不可物件が存在するのは、その建築物が建築された時点では、建築基準法が施行されていなかったからです。

建築基準法は、1950年に施行されました。
それ以前は、建築基準法上の接道義務は存在しなかったため、現行法下では接道義務を満たすことができない土地においても、建築物を建築することが可能でした。

現行の建築基準法が施行される際に、施行時点ですでに建っている建築物については、接道義務を満たしていなくても、そのまま存続させてよいものとされました。

このような理由から、接道義務を満たしていない土地上に建った建築物が「再建築不可物件」として存在しているのです。

(3) 再建築不可物件となる要件

適法に建築された建築物が再建築不可物件になるのは、以下のいずれかを満たす場合です。

①敷地に接している道路の幅員が4メートル未満の場合
②敷地が道路に接している部分の幅が2メートル未満の場合

なお、再建築不可物件は、あくまでも着工・工事・竣工当時の法令に従い、適法に建築されていることが前提となります。

これに対して、建築確認が必要であるにもかかわらず、それを怠って接道義務を満たさない土地に建築物を建築した場合、その建築物は違法建築ですので注意しましょう。

【再建築不可物件と既存不適格物件の違い】
再建築不可物件としばしば比較されるのが「既存不適格物件」です。既存不適格物件も、再建築不可物件と同様に、完成当時の法令に従えば適法であったものの、現行法に照らせば建築基準を満たしていない状態にあります。
ただし、再建築不可物件は原則として再建築が一切不可であるのに対して、既存不適格物件の場合は、建物のサイズを小さくすれば再建築が可能である点が異なります。
再建築不可物件において問題となる接道義務は、「そもそもその土地に建築物を建築してよいか」という点に関わる問題であり、接道義務を満たさない場合には、再建築は一切不可となります。
一方既存不適格物件は、容積率・建ぺい率など、建物のサイズや構造などが現行法上の建築基準を満たしていないに過ぎません。したがって、これらをクリアできる限りは、既存不適格物件の規模を縮小するなどして、再建築を行うことができるのです。
このように再建築不可物件は、既存不適格物件に比べても、再建築が一層強く制限されているという特徴があります。

2.再建築不可物件を購入するメリット・デメリット

再建築不可物件は、不動産市場において売りに出されることもしばしばあります。

もし再建築不可物件の購入を検討する場合には、以下のメリット・デメリットを十分に踏まえて判断しなければなりません。

(1) メリット|価格がかなり安い

再建築不可物件のメリットは、通常の物件と比べて取引価格がかなり安いという点に尽きます。

再建築不可物件は、敷地の利用に対して強く制限がかかっているため、敷地部分の取引価格がかなり低く抑えられます。
また、建物自体も竣工から相当な年数が経っているため、建物価格も安くなる傾向にあります。

このような価格面のメリットを考慮すると、再建築を予定せず、期間限定で物件を使用収益することを想定している場合には、再建築不可物件の購入も検討対象になり得るでしょう。

また、後述する方法によって、現状再建築不可である土地について再建築を可能にすることができれば、取引価格が上昇して売却差益を得られる可能性もあります。

(2) デメリット|老朽化・倒壊時に建替え・増改築ができない

再建築不可物件のデメリットは、建築確認が下りないため、建替え・増改築ができない点にあります。

当初は建替え・増改築を予定していないとしても、老朽化が進行したり、不慮の災害などによって建物が倒壊したりした場合には、建替え・増改築をしなければ建物を存続させられない事態が生じることもあり得ます。

その場合でも、再建築不可物件における建替え・増改築は認められないので、土地の使い道がきわめて限定されてしまいます。

その際、後述する方法によって再建築可能な状態にすることも考えられますが、常に再建築が可能となるわけではないことに注意が必要です。

再建築不可物件を購入する際には、老朽化や倒壊などのリスクを覚悟したうえで、建物を取り壊さなければならなくなった際の出口戦略について、十分なシミュレーションを行っておきましょう。

3.再建築不可物件のリフォームは可能か?

再建築不可物件は、建物の老朽化が進行している場合が多いので、リフォームによって市場価値や耐用年数を向上させることが考えられます。

しかし、再建築不可物件の場合、リフォームに関しても建築基準法上の制限に注意する必要があります。

(1) 建築確認が必要な大規模修繕・リフォームは不可

再建築不可物件についても、内装の小規模なリフォーム程度であれば、建築基準法に違反することなく行うことができます。

ただし、一部の大規模修繕やリフォームについては、建築基準法上の建築確認が必要となる場合があります。
再建築不可物件については建築確認が下りないため、建築確認が必要となる大規模修繕やリフォームはできないことに注意が必要です。

(2) 建築確認が必要となる場合とは?

建築基準法6条1項によれば、「大規模の修繕」および「大規模の模様替え(リフォーム)」について建築確認が必要とされているのは、以下のいずれかに該当する建築物です。

①以下のいずれかの用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの
・劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会堂など
・病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎など
・学校、体育館など
・百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場など
・倉庫など
・自動車車庫、自動車修理工場など

②木造の建築物で、以下のいずれかに該当するもの
・3階建て以上
・延床面積500平方メートル超
・高さ13メートル超
・軒の高さ9メートル超

③木造以外の建築物で、以下のいずれかに該当するもの
・2階建て以上
・延床面積200平方メートル超

なお、「大規模の修繕」および「大規模の模様替え」については、建築基準法上以下のとおり定義されています。

建築基準法(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。

再建築不可物件として一般に取引されている物件の場合、大規模修繕やリフォームについて建築確認が必要かどうかは、「木造かそうでないか」「階数」「延床面積」「高さ(木造の場合のみ)」によって判定されます。

再建築不可物件の大規模修繕・リフォームを検討する場合には、事前に建築確認の要否を必ず確認しましょう。

4.再建築を可能にする方法は?

再建築不可物件は、建築基準法上の接道義務を満たしていないため、再建築・増改築・大規模修繕・大規模なリフォームが不可とされています。

逆に言えば、何らかの方法によって接道義務を満たすことができれば、再建築不可物件に当たる敷地においても、再建築が可能になります。

再建築不可物件において接道義務を満たし、再建築を可能にするための方法は、主に以下の2つです。

(1) 周辺の土地を購入して合筆する

道路に接している間口が2メートル未満であるために接道義務を満たしていない場合には、周辺の土地を購入して合筆することによって、間口を2メートル以上確保する方法が考えられます。

この場合、周辺の権利者との買い取り交渉が必要となりますので、不動産業者などと連携のうえで対応する必要があるでしょう。

(2) セットバックを申請する

再建築不可物件に接している道路の幅員が4メートル未満であるために接道義務を満たしていない場合には、「セットバック」を申請する方法が考えられます。

セットバックとは、道路の中心線から2メートルの位置までに含まれる土地の一部を「道路」として提供することによって、接道の幅員を4メートル以上確保することをいいます(建築基準法42条2項)。

再建築不可物件の権利者にとっては、敷地面積が目減りしてしまうことにはなりますが、接道義務を満たし、再建築が可能となるメリットがあります。

セットバックを実施するには、特定行政庁に対する申請を行ったうえで、実際にセットバックの対象となる道路部分の工事を行う必要があります。

実際の手続きや工事については、弁護士・建築士・施工業者などと連携して対応する必要があるでしょう。

5.再建築不可物件の購入は慎重に検討を

再建築不可物件は、取引価格が安い反面、建築基準法上たくさんの制限が課されており、通常の物件に比べると高リスクといえます。

再建築不可物件については、建築基準法のルールをよく理解せずにリフォーム等を行うと、違法建築に該当する危険もあります。

そのため、建築基準法上の手続きに精通した専門家に相談しながら、購入の可否や活用方法を検討することをお勧めいたします。

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