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土地の時効取得の要件・手続きなどを解説

土地を長年占有した場合、「時効取得」によって土地の所有権を得ることができる可能性があります。

土地を時効取得したことを第三者に対抗するには、登記や訴訟などの手続きが必要になるので、弁護士に相談のうえで対応することをお勧めいたします。

この記事では、土地の時効取得に関する要件や手続きなどをわかりやすく解説します。

1.土地の時効取得の要件

(1) 土地の時効取得の趣旨

民法上、土地の時効取得が認められている趣旨は、「長年継続した土地の占有を保護して、法律関係の安定を図ること」にあります。

形式的に見れば所有権がないとしても、事実上所有者として土地を占有した状態が長年継続したならば、その状態を維持することが当事者にとって合理的であり、かつ不都合も生じないと考えられます。

そのため、権利を行使しなかった所有者に対して所有権の行使を許さず、むしろ長年継続した占有状態に、法的な権利である所有権を合わせて、その後の紛争を防止することが意図されているのです。

(2) 土地の時効取得の要件と立証責任

土地を時効取得するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ公然と(他人の物を)占有したこと(民法162条1項)
10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ公然と(他人の物を)占有し、その占有の開始の時に善意無過失であったこと(同条2項)
※「他人の物を」という条文上の要件がありますが、自己物の時効取得も判例上認められています(最高裁昭和42年7月21日判決)。

それぞれの要件に関して、その内容と立証責任を負う側について詳しく見てみましょう。

「平穏」な占有

「平穏」とは、占有者が土地の占有を取得し、または保持するに当たって、違法強暴の手段を用いていないことを意味します。

単に所有者から占有に関する抗議や反論を受けただけでは「平穏」な占有が否定されることはありません。
これに対して、暴行脅迫などの違法行為を用いて占有を続けた事実が認められる場合には、「平穏」な占有が否定されます。

「平穏」の要件については、法律上の推定(民法186条1項)が適用されるので、時効取得を否定する側(所有者側)が、占有が「平穏」でなかったことについて立証責任を負います。

「公然」な占有

「公然」とは、真の権利者(所有者)に対して、占有の事実を隠蔽していないことを意味します。

所有者に対して占有を積極的に宣言する必要はありませんが、所有者から問い合わせなどを受けた際に「土地を占有している事実はない」と明示的に否定したような場合には、「公然」な占有が否定されることになるでしょう。

「公然」の要件についても法律上の推定(民法186条1項)が適用されるため、時効取得を否定する側(所有者側)が、占有が「公然」でなかったことについて立証責任を負います。

「所有の意思」を持った占有

「所有の意思」とは、土地を自分のものだと思って占有することを意味します。この意思をもってする占有を「自主占有」といいます。

土地を占有しているとしても、たとえば賃貸借により所有者から土地を借りているに過ぎない場合にも、時効取得を成立させてしまうことは当事者の意思に反します。
このような場合には「所有の意思」が認められず、土地の時効取得が否定されることになります。

「所有の意思」の要件についても、法律上の推定(民法186条1項)が適用され、時効取得を否定する側(所有者側)に立証責任が転換されています。

所有者側が時効取得の成立を否定するには、「他主占有権原」または「他主占有事情」のいずれかを立証することが必要です(最高裁昭和58年3月24日判決)。

①他主占有権原

性質上、所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得したことを意味します。
(例)賃貸借、使用貸借など

②他主占有事情

外形的客観的に見て、占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情を意味します。
(例)公租公課の不払い、未登記など

なお、他主占有権原または他主占有事情のうち一つが立証されたとしても、それだけで「所有の意思」が否定されるわけではなく、反対の「自主占有事情」の存在・内容なども考慮したうえで、「所有の意思」の有無が総合的に判断されます。

善意無過失(10年間の場合のみ)

後述するように、土地の時効取得には10年間または20年間の占有継続が必要です。

10年間の占有継続による土地の時効取得を主張するには、「占有開始の時点で」占有者が自分の所有物であると信じていたこと(善意)、およびそのことについて過失がなかったこと(無過失)が必要になります。

このうち「善意」については法律上の推定(民法186条1項)が適用されるため、時効取得を否定する側(所有者側)が、占有開始時の悪意を立証しなければなりません。

これに対して「無過失」については、法律上の推定は適用されません。

したがって、時効取得を主張する側(占有者側)が、占有開始時の無過失を基礎づける事実(評価根拠事実)を立証する必要があります。

10年間または20年間の占有継続

土地の時効取得に必要となる占有期間は、10年間(善意無過失が必要)または20年間です。

占有継続の事実に関しては、占有開始時と期間経過時の占有の事実を立証すれば、その間の期間については占有の事実が推定されるとされています(民法186条2項)。

したがって、まず時効取得を主張する側(占有者側)が、占有開始時と期間経過時の占有の事実に関する立証責任を負います。

そして、占有者側の立証が成功すれば、今度は時効取得を否定する側が、途中の期間において占有が途絶していたことについての立証責任を負うことになります。

2.土地を時効取得できる事例

上記で解説した時効取得の成立要件を踏まえて、土地を時効取得できる場合の例をいくつか見てみましょう。

(1) 隣地との境界線付近の土地に物を長年置いていた場合

土地同士の間の客観的な境界線は存在するものの、境界線の存在を日々意識しながら過ごすということは稀でしょう。

そのため、客観的な境界線にかかわらず、どちらかの土地の所有者の物が他方の土地にはみ出して設置されているというケースはよくあります。

このとき、所有物が設置された箇所について時効取得の要件を満たした場合には、時効取得によって土地の境界線が修正されることになります。

(2) 所有者であると偽った賃借人から建物を買い取り、その後長年占有した場合

AがBに対して土地を賃貸していたところ、Bが当該土地を自己の所有物であると偽り、Cに対して売却したケースを考えます。
この場合、Bは土地を処分する権利を有しないので、BC間の土地売買は「他人物売買」となり、Cは土地の所有権を取得することができません。

しかし、Cは売買によって土地の占有を取得していますから、Cは当該土地を「所有の意思」を持って占有しているものと考えられます(最高裁昭和52年3月3日判決)。

そのため、Cの占有開始から10年間(善意無過失が必要)または20年間が経過すれば、Cは当該土地を時効取得することができます。

(3) 相続を契機に賃借物件に移住し、公租公課を支払いながら長年住み続けた場合

DがEに対して土地を賃貸していたところ、Eが死亡した際、当該土地をEの所有物とみなして遺産分割が行われ、相続人Fが(遺産分割協議上は)当該土地を承継したケースを考えます。

このとき、客観的にはFは無権利者ですが、Fが当該土地の占有を遺産分割により取得し、建物を建てたうえで移住して、公租公課を支払いながら10年間(善意無過失が必要)または20年間住み続けた場合、土地の時効取得が成立する余地があります(最高裁昭和46年11月30日判決)。

3.土地を時効取得するための手続き

土地を時効取得してそれを第三者に対抗するためには、「取得時効の援用」と「所有権移転登記の手続き」が必要です。

(1) 所有者に対して取得時効を援用する

土地の時効取得を主張するためには、権利者(所有者)に対する「時効の援用」が必要とされています(民法145条)。
「時効の援用」とは、権利者に対して時効取得を主張することを意味し、裁判上および裁判外のいずれかの手続きによって行います。

裁判外で時効の援用を行うには、所有者に対して取得時効を援用する旨を記載した内容証明郵便を送付する方法が一般的です。

これに対して、所有者が土地の時効取得を争ってきた場合には、所有権移転登記請求訴訟などの訴訟手続きを通じて、取得時効の援用を行う(または援用の事実を訴訟上で主張する)ことになります。

(2) 所有権移転登記手続きを行う

土地の時効取得が成立したら、所有権を保全するために、所有権移転登記手続きを行うことが大切です。
土地の時効取得後に、第三者が先に所有権移転登記を備えてしまうと、時効取得者は所有権を失ってしまうことになるので注意しましょう(民法177条)。

所有権移転登記手続きは、原則として、時効取得によって所有権を失った旧所有者と新所有者が共同で行う必要があります(不動産登記法60条)。

ただし、所有権移転登記手続請求訴訟において、土地の時効取得を認め、所有権移転登記手続きを命ずる判決が確定した場合には、確定判決を用いて、時効取得者が単独で所有権移転登記手続きを行うことができます(不動産登記法63条)。

4.土地の時効取得にかかる税金・費用

土地を時効取得する場合、各種の税金や訴訟費用、弁護士または司法書士への依頼費用などが必要となります。

(1) 登録免許税

時効取得に基づく土地の所有権移転登記手続きを行う際には、登録免許税が必要となります。

登録免許税の金額は、土地の価額に1000分の20(2%)の税率を乗じて計算されます。

(2) 不動産取得税

土地を時効取得した場合、不動産取得税も課税されます。

不動産取得税の金額は、令和6年(2024年)3月31日までに時効取得した土地については、土地の価額に100分の3(3%)の税率を乗じて計算されます。

ただし、土地が宅地または宅地評価された土地の場合には、課税標準額が土地の価額の2分の1になります。

(3) 所得税・住民税(一時所得)

土地を時効取得した場合、時効を援用した年において、以下の金額が「一時所得」となり、所得税・住民税が課税されるため、確定申告が必要になります。

一時所得
=時効取得した土地の時価-時効取得に直接要した金額(費用など)-特別控除額(最大50万円)

上記で計算された一時所得の金額が2分の1された後、他の所得と合算した金額を所得として、所得税・住民税が課税されます。

(4) 訴訟費用

時効取得を主張して所有権移転登記請求訴訟を提起する場合には、裁判所に納付する印紙代・郵便費用などの訴訟費用が必要となります。

最終的に勝訴すれば、被告(旧所有者)側に訴訟費用を支払うように請求できますが、訴訟提起の段階では原告(新所有者)側が支払っておくことが必要です。

印紙代は、訴額(=土地の固定資産税評価額の2分の1)に応じて以下のとおりとなります。

訴額 印紙代
100万円までの部分 10万円までごとに1000円
100万円を超え500万円までの部分 20万円までごとに1000円
500万円を超え1000万円までの部分 50万円までごとに2000円
1000万円を超え10億円までの部分 100万円までごとに3000円
10億円を超え50億円までの部分 500万円までごとに1万円
50億円を超える部分 1000万円までごとに1万円

郵便費用は総額数千円程度です。
詳しい金額は、裁判所または弁護士にご確認ください。

(5) 弁護士費用・司法書士費用

時効取得による所有権取得の手続きを弁護士に依頼する場合、および所有権移転登記手続きを司法書士に依頼する場合には、それぞれ依頼費用がかかります。

弁護士費用・司法書士費用は土地の価額や依頼先によって異なりますが、相場はおおむね以下のとおりです。

弁護士への手続き全般の依頼費用 着手金:20万~100万円
報酬金:土地の価額の10~20%
司法書士への登記手続きの依頼費用 5万円前後

5.土地の時効取得に関する手続きは弁護士に相談を

土地の時効取得を主張するためには、民法で定められる要件と立証責任の分担を踏まえて、時効取得の立証に必要となる証拠を確実に収集することが大切です。

弁護士にご相談されれば、時効取得に関する主張・立証の方針について、状況に合わせたアドバイスが受けられます。

土地の時効取得に関するお悩みは、お早めに弁護士までご相談ください。

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