不動産鑑定士の仕事とは?業務内容・なり方などを解説
不動産に関係する仕事の1つに「不動産鑑定士」というものがあります。
実は、不動産鑑定士は全国に1万人もいません。
「鑑定士」というと、骨董品などの値段を判断する仕事というイメージがあるでしょう。
よって、不動産鑑定士についても、なんとなく「不動産の価格を判断する人」程度の想像はつくと思います。
ここでは不動産鑑定士の業務内容や、不動産鑑定士になる方法などを紹介していきます。
1.不動産鑑定士の業務内容
不動産鑑定士の仕事は、主に以下の2つです。
(1) 不動産鑑定評価書の作成
不動産鑑定士の仕事の核となるものは、土地や建物などの不動産の価値を鑑定・評価して、不動産鑑定評価書を作成することです。
不動産鑑定評価書には、単に「この不動産の価値は◯◯円です」と書けば良いわけではありません。不動産の所在地や地番、不動産の種類はもちろん、確認に利用した書類や対象の不動産に関する権利、評価額を決定した理由なども併記します。
特に理由については、経済状況や地域分析、将来の動向予測まで、多角的な視点から分析したことを記すこともあります。
不動産鑑定士は役所や法務局を回り、現地調査などのフィールドワークを経て不動産に関する情報を収集し、不動産鑑定評価書を作成します。
なお、不動産鑑定評価書の作成は不動産鑑定士の独占業務となっています。不動産鑑定士以外の者が作成することはできません。
(2) コンサルティング業務
不動産に関する知識や鑑定評価に基づいて、相談を受けた内容に合わせて不動産の活用方法に関するアドバイス等を行います。
不動産が絡んだ投資、融資、賃貸活用、売却、転用など、考えなければならないことは多く、顧客が最も利益を得られる方法を的確に見極めるスキルとコミュニケーション能力が問われます。
2.不動産鑑定士の顧客と依頼内容
不動産鑑定士の仕事の中身を具体的に知るためには、どういった人がどのような仕事を依頼しているのかを知るのが近道です。
不動産鑑定士の顧客は大きく分けて「公的機関」と「民間」の2種類があります。
(1) 公的機関からの依頼
公的機関は、様々なシーンで地価を公開したり活用したりする必要があるため、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する必要があります。
例えば、以下のような地価を得るために、不動産鑑定士に協力を仰いでいます。
- 公示地価のための基準地の鑑定評価
- 相続税のための路線価の評価
- 国土利用計画法に基づく基準地の鑑定評価
- 競売に関する不動産の評価
これらは土地取引や相続税の課税などに活用されるため、不動産鑑定士の責任は重大です。
(2) 民間からの依頼
公的機関以外からの依頼内容は様々ですが、主に以下のものがあります。
不動産取引の際の参考
不動産を売買する際の適正な価格の参考にするために、不動産鑑定士に相談する人がいます。
あるいは賃貸物件について、適正な賃料のアドバイスを求めてくる人もいるようです。
担保物権としての価値の査定
銀行などが融資を行う際は、不動産を担保にすることがあります。
対象となる不動産にどれくらいの価値があるのかで、融資額が左右されます。
そのため、銀行が不動産鑑定士に担保不動産の鑑定評価を依頼することがあります。
相続などの際の不動産評価
不動産を相続する際には相続税がかかります。
不動産の評価額を見直すことで相続税が安くなること可能性があるため、節税を狙って不動産鑑定士に相続不動産の鑑定評価を依頼する人もいます。
3.不動産鑑定士のなり方
不動産鑑定士になるには以下のステップを踏みます。
(1) 不動産鑑定士の試験に合格する
まず、毎年1回行われる「不動産鑑定士試験」に合格しなければなりません。
試験は5月の短答式試験(マークシート式)と8月の論文式試験に分かれており、両方に合格しなければなりません。
ただし、短答式試験合格者は、その後2年間、短答式試験が免除されます。
受験資格はないので誰でも受験できますが、不動産鑑定士は弁護士・公認会計士とともに「文系三大国家資格」と言われることもあり、難易度は非常に高いです。
(2) 実務修習
試験に合格しただけでは、まだ不動産鑑定士の仕事ができません。
国土交通大臣の登録を受けた実務修習機関において「実務修習」を受け、最後に「修了考査」という試験に合格する必要があります。
実務研修は講義・基本演習・実務演習の3単元に分かれています。
講義や基本演習は比較的短期間で終わりますが、実務演習には1年コースと2年コースがあります。1年コースはスケジュールがハードであるため、他の仕事をしながら演習を受ける人は2年コースを選ぶようです。
単元ごとに修得確認が行われ、それらをクリアすれば修了考査というテストが行われます。内容は小論文と口頭試験です。
修了考査で修了確認が行われ、その後所定の手続きを経ることで、ようやく不動産鑑定士として登録できます。
(3) 不動産鑑定士として活動開始
登録が済めば、晴れて不動産鑑定士の活動ができます。
不動産鑑定士事務所を設立して独立開業する人もいますし、不動産鑑定士事務所や不動産業者、金融機関などに就職して、企業内不動産鑑定士として働く人もいます。
4.不動産鑑定士は不動産鑑定のプロフェッショナル
不動産の価値を鑑定し、評価するのが不動産鑑定士の仕事です。
公共機関、個人、企業を問わず、様々な人がお世話になる可能性があります。
不動産鑑定士になる試験は難しく、狭き門ですが、興味がある人はチャレンジしてみてもいいでしょう。
不動産を扱う場合は、不動産鑑定士だけでなく、土地家屋調査士、宅地建物取引士、司法書士、弁護士など、様々な専門家の力を借りることになります。
もし不動産に関する法律でお悩みのことがあれば、ぜひ弁護士までご相談ください。