家賃滞納をするとブラックリストに載る?
家賃の滞納は、数日程度うっかり支払いが遅れた程度では大きな問題になりません。滞納後すぐに支払えば、何事もなく同じ物件に住み続けることができます。
しかし、数週間、数ヶ月と滞納を続けるのは問題です。物件の貸主との間でトラブルになるうえに、「ブラックリスト」というものにも登録されてしまい、その後の生活に大きな悪影響をもたらします。
この記事では、家賃の滞納とブラックリストに関することを解説していきます。
1.家賃滞納による悪影響
家賃を滞納すると、以下のような悪影響が発生します。
(1) 信頼関係が破綻して物件から追い出される
貸主は借主に「物件を貸す」という義務を負っており、その義務を果たしています。それにも関わらず借主が一方的に「賃料を支払う」という義務を果たさない以上、追い出されても仕方ありません。
ただ、賃貸借契約には「信頼関係破壊の法理」というものがあります。義務の違反があっても、それが貸主と借主の信頼関係を破壊しない些細なものの場合、賃貸借契約の解除は認められないという法理です。
例えば、借主が数日賃料の支払いを滞納しただけで退去を命じられるのは、借主にとって酷であり、信頼関係を破壊したとまでは言えないとされ、賃貸借契約の解除は基本的に認められていません。
信頼関係が破壊されているかどうかは裁判所が判断しますが、3ヶ月以上家賃を滞納している場合や、1~2ヶ月程度の滞納を何度も繰り返している場合などは、信頼関係が破壊されていると判断される可能性があります。
[参考記事] 家賃滞納をするとブラックリストに載る? 19591959
(2) 滞納家賃+利息や遅延損害金の支払い
滞納した家賃はいずれ支払わなければなりませんが、家賃以外に利息や遅延損害金も併せて支払うことになります。
すなわち、滞納すればするほど当初の予定よりも最終的な支払金額が膨らんでしまいます。
また、連帯保証人がいる場合は貸主から連帯保証人に請求が行くため、連帯保証人に迷惑がかかってしまいます。
(3) ブラックリストへの掲載
ブラックリストとは俗な言い方で、そういったリストが実在するわけではありません。
「お金を借りた」「返済した」「滞納した」などの情報は、借入先の貸金業者やクレジットカード会社などを経て「信用情報機関」という組織のデータベースに登録されます。
貸金業者やカード会社はお金を貸したりカードを発行したりする際に、この信用情報機関の情報を参照して審査します。
そこに「滞納」などの事故情報があると、審査に落とされてしまいます。
すなわち、ブラックリストに載ると基本的にお金を借りられなくなります。
住宅ローンも自動車ローンも組めなくなりますし、クレジットカードの審査にも落ちやすくなります。
信用情報機関に事故情報が登録されているとお金を借りれなくなることは、まるで「お金を貸してもらえない人のリストに載っている」かのような状態であることから、「ブラックリストに載った」などと表現されているのです。
実は、消費者金融(貸金業者)からの一般的な債務の滞納、クレジットカードの支払い滞納だけでなく、家賃を滞納することによってもこのブラックリストに掲載されるケースがあります。
以降の項目で、ブラックリストと家賃滞納の関係について詳しく説明します。
2.ブラックリストと家賃滞納の関係
(1) 家賃滞納でブラックリストに載るケース
家賃滞納でブラックリストに載るのは以下のケースです。
- 家賃をクレジットカード払いしている
- 信販系の保証会社を使っている
クレジットカード会社や信販系など一部の保証会社は、信用情報機関の情報を参照できるため、借主の金融状態を知ることができます。
一方、不動産会社は信用情報機関の情報を参照できませんし、信用情報機関に滞納状況を登録する権限もありませんし、不動産会社独自の信用情報機関というものもありません。
そのため、信販系の保証会社を利用しておらず、クレジットカードを使わずに家賃を支払っている場合は、基本的にブラックリストに登録されないのです。
(2) どのくらいの滞納でブラックリストに載る?
多くの場合は2ヶ月以上家賃滞納するとブラックリストに載るとされていますが、「◯ヶ月以上滞納したら載せます」という情報は公開されていません。
そういった情報を流すと「◯ヶ月までは滞納しても大丈夫」と思う人が出てくるため、それを防ぐために情報公開は控えられているのです。
滞納を頻繁に繰り返すと、2ヶ月以内の滞納でもブラックリストに載る可能性があります。
(3) ブラックリストに載った情報はいつまで残る?
信用情報機関の情報は、一般的に約5~10年で抹消されます。
ただし情報が抹消された直後は、「数年間お金を借りたこともクレジットカードを使ったこともない」という、取引履歴がゼロの状態となります。
今の時代にクレジットカードを全く使わない人も珍しいでしょう。審査の際にこの情報を見た金融機関は、「この人は最近までブラックリストに載っていたから取引履歴が登録されていないのでは?」と疑い、審査で落とすことがあります。
3.ブラックリスト掲載を避ける手段
では、ブラックリストへの登録を避ける方法にはどういったものがあるのでしょうか?
(1) 滞納状態を早く解消する
最も望ましいのはそもそも家賃を滞納しないことで、仮に家賃を滞納してしまっても速やかに払って滞納を解決することです。
しかし、現実問題としてどうしても支払いが難しいこともあるでしょう。
早く家賃を払おうとして消費者金融やカードローンを使ってお金を借りる人がいますが、利息の支払いなどで将来苦しくなり、却って事態が悪化する可能性があります。
家賃を支払うためのお金の工面が難しい場合は、一時的に親族から借りる方法もあります。
後で返済しなければなりませんが、利息などの分だけ業者から借りるより負担が少ないはずです。
(2) 貸主側に連絡と相談をする
滞納する前に物件の管理会社に連絡し、「今は払えないけど◯日後なら払えます」などと相談してみましょう。
期限を明示しておけば支払う意思を見せられるため、先方も少しは安心できるはずです。
黙って滞納すると心証が悪くなるので、滞納しそうだとわかった時点で連絡することが望ましいです。
(3) 公的扶助を利用する
コロナ禍の影響で収入が減った人が増えたため、救済のために使いやすく改正された公的扶助がいくつかあります。
例えば「住宅確保給付金」もその1つです。離職や廃業などで家賃を支払えない人が対象で、申請が認められれば3ヶ月(求職中の人は最長9ヶ月)分の家賃相当額が支給されます(自治体ごとに上限あり)。
(4) 債務整理をする
既に借金を抱えており、これ以上の借り入れが難しく、返済のあてもない人もいるでしょう。
そういった場合は「債務整理」を検討することがおすすめです。
債務整理に成功すると、利息が軽減されたり、元金の支払額が減ったり、借金そのものが無くなったりします。月々の負担が一気に軽くなるため、余ったお金を家賃の滞納の支払いに充てるなど、生活の再建がしやすくなります。
実は、債務整理をするとそれだけでもブラックリストに登録されます。
しかし、家賃の滞納を続けていても、いつかはブラックリストに登録されてしまいます。
それならば、借金の利息をいつまでも払い続けるよりも、債務整理に踏み切った方が最終的な負担は圧倒的に軽くなります。
弁護士に相談と依頼をすれば最適な債務整理の方法を実行してくれますし、裁判所での手続きや債権者との交渉も代行してくれます。
4.ブラックリストは次の賃貸契約に影響がある?
ブラックリストに入ってクレジットカードが使えないと、家賃をカード払いする必要のある賃貸物件を借りられなくなります。
また、賃貸物件を借りるときの信販系の保証会社の審査にも落ちやすくなります。
しかし、絶対に賃貸物件を借りられないわけではありません。
具体的には、以下のような物件を選ぶようにしましょう。
- 家賃をカード払いせずに済む物件を借りる
ブラックリストに載っていても銀行口座は開設できるため、銀行振込などでオーナーや管理会社に直接家賃を払える物件を選択しましょう。 - 信販系の保証会社を使う必要のある物件を避ける
信販系の保証会社は入居時の審査が厳しいです。ブラックリストに載っていると高確率で落ちてしまいます。連帯保証人を立てれば済む物件や、信販系以外の保証会社を使う物件を探してください。 - 以前トラブルを起こした保証会社は避ける
ブラックリストから情報が抹消されても、保証会社が独自に滞納などの情報を記録していることがあります。この情報は何年経っても残り続けるため、過去に滞納や未払いをした保証会社は避けた方が無難です。 - UR賃貸を使う
URの物件は保証会社の審査がありません。一定以上の収入があればブラックリストに載っていても基本的に入居することができます。
5.家賃滞納のお悩みも泉総合法律事務所へ
家賃の支払いをうっかり忘れてしまう、ということは有り得る話です。
しかし、滞納を何度も繰り返したり、長期に渡り支払いを放置していたりすると、ブラックリストに登録され、最終的には賃貸物件から追い出されてしまうでしょう。
家賃滞納の問題は早期に解決をする必要があります。どうしても支払えない、他にも借金が多くあるなどのお悩みは、一度弁護士までご相談ください。
泉総合法律事務所はこれまで幾度となく債務整理案件を担当し、多くの方の借金問題を解決してきました。
不動産に関するお悩みや、債務整理のご相談とご依頼は、ぜひ泉総合法律事務所までお問い合わせください。