不動産に強い弁護士に無料相談【東京・神奈川・埼玉・千葉】
安心と信頼のリーガルネットワーク弁護士法人泉総合法律事務所不動産問題
不動産の重要知識

借地の地代相場|裁判例から見る地代の計算方法

借地契約に基づいて地主から土地を借りる場合、借地権者は地主に対して「地代」を支払わなければなりません。

地代の設定金額は契約によってまちまちですが、相場や計算方法についての知識を備えておかないと、不当に高額の地代を請求されるおそれがあるので要注意です。

今回は、借地の地代の金額相場や計算方法などにつき、地代に関する紛争の裁判例と併せて紹介します。

1.借地には地代が発生する

借地権者は、あくまでも地主から土地を借りているに過ぎません。
そのため借地権者は、定期的に地主に対して「地代」を支払う必要があります。

借地権を設定する契約は「借地契約」と呼ばれます。

民法上の性質は「地上権設定契約」または「賃貸借契約」となりますが、いずれにしても、地代の支払いについては、これらの借地契約の中で規定されることになります。

2.借地の地代の大まかな金額相場

借地契約における大まかな地代の金額相場は、以下のとおりです。

住宅用物件 更地価格の2~3%(年額)
店舗・事務所用物件 更地価格の4~5%(年額)

更地価格の求め方については複数の考え方が存在しますので、3.で詳しく解説します。

なお、上記の地代相場はあくまでも目安であり、実際の地代の金額は、地主と借地権者の間の交渉・合意によって個別に決定され、計算方法も複数あります。

特に、借地権設定時に借地権者から地主に対して「権利金」が支払われる場合には、権利金額との兼ね合いによって、地代の金額も調整されることが多いです。
たとえば、権利金額が高額に設定される代わりに、地代の金額は低く抑えられるケースもあります。

借地の権利金については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 借地契約の「権利金」の相場|なぜ支払う必要がある?

なお、地代の金額と同じく、地代の支払時期についても、地主と借地権者の交渉・合意によって決定されます。

建物の賃貸借契約であれば、家賃は毎月支払うものと定められるケースが多いですが、地代の場合は一概には言えません。
毎月1回支払うものとされるケースもあれば、四半期・半期・1年に1回など、何か月分かをまとめて支払う方式が採用されるケースもあります。

特に、1か月当たりの地代の金額が僅少な場合には、数か月分をまとめて支払う方式が採用されるケースが多いです。

3.借地の地代の主な計算方法

地代の計算方法には、さまざまなパターンがあります。
どの計算方法を採用するかについては、決まったルールがありません。

そのため、地主と借地権者の双方が妥当だと考えるルールを採用して、実際の地代の金額を計算します。

地代の主な計算方法のパターンは、以下のとおりです。

(1) 公租公課を基準に地代を算出する

1年間に発生する固定資産税・都市計画税の合計額に、一定の倍率をかけて年間地代を算出する方法です。

地域によって異なりますが、固定資産税・都市計画税の税率は、以下のように設定されていることが多いです。

固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
都市計画税:固定資産税評価額×0.3%

たとえば、市街化区域内に存在する固定資産税評価額が2000万円の土地であれば、(特例の適用等を度外視すると)1年間で合計34万円の固定資産税・都市計画税が発生します。

この金額に対して、土地の所在するエリアに応じた以下の倍率を乗じることにより、大まかな地代相場を把握することが可能です。

住宅地:1年間の固定資産税・都市計画税合計額の3~5倍
商業地:1年間の固定資産税・都市計画税合計額の5~8倍

(2) 路線価を基準に地代を算出する

路線価とは、行政が公表している土地の単位地積(1平方メートル)当たりの価格であり、国税庁が公開している「路線価図・評価倍率表」によって確認できます。
参考:路線価図・評価倍率表|国税庁

「路線価図・評価倍率表」では、各道路に数字とアルファベットが付されており、数字は「路線価」、アルファベットは「借地権割合」を表しています。

たとえば、「400C」と記載されている道路に接している土地の路線価と借地権割合は、以下のとおりです。

・1平方メートル当たりの路線価が40万円
・借地権割合が70%※
※A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%

路線価を基準として更地価格を求める際には、以下の計算式を用います。

更地価格=路線価×地積(平方メートル)×1.25※
※路線価基準の土地価格は、実勢価格の8割程度に抑えられるケースが多いことを踏まえた数値。あくまでも目安

上記によって求められた更地価格に、すでに紹介した以下の地代料率を乗じることで、年間の地代相場を求めることができます。

住宅用物件 更地価格の2~3%(年額)
店舗・事務所用物件 更地価格の4~5%(年額)

(例)1平方メートル当たりの路線価が40万円、100平方メートルの土地の場合

更地価格
=40万円×100×1.25
=5000万円

地代(住宅用物件、年額)
=5000万円×2~3%
=100~150万円

地代(店舗・事務所用物件、年額)
=5000万円×4~5%
=200~250万円

(3) 土地の期待利回りを基準に地代を算出する

土地を運用した場合の期待利回りを基準として、地代を算出する方法を「積算法」と言います。
積算法を採用して地代を計算する場合、以下の計算式を用います。

地代(年額)=土地の基礎価格×期待利回り+必要諸経費

積算法には、公租公課や路線価を基準に地代を算出する方法よりも、不動産の実勢相場を踏まえた精緻な検討が要求されます。

積算法による地代を算定したい場合には、不動産業者や不動産鑑定士に依頼するのが一般的です。

(4) 周辺地域の取引価格を基準に地代を算出する

周辺地域で多数の不動産取引事例がある場合には、類似物件の成約事例を参照したり、複数の物件の平均値を取ったりして、土地の更地価格を大まかに求めることができます。

(例)数か月前に、ほぼ同じ地積の土地2筆が、それぞれ4000万円・4200万円で成約しているので、平均値を取って4100万円を更地価格とする

上記の方法で求めた更地価格に、以下の地代料率(再掲)を乗じることで、年間の地代相場を求めることができます。

住宅用物件 更地価格の2~3%(年額)
店舗・事務所用物件 更地価格の4~5%(年額)

4.地代に関する税金

地代に関して問題となる税金についても、簡単に確認しておきましょう。

まず、地主が受け取る地代収入については、所得税(+復興特別所得税)・住民税の課税対象となります。
地代収入は「不動産所得」に分類され、収入額から固定資産税・借入金利子などの必要経費を控除した後の所得額が、他の所得と合算されて課税されます(総合課税)。

一方、借地権者が地主に地代を支払う際には、原則として消費税は課税されません。

ただし、土地と建物を一体的に貸し付けている場合には、賃料の支払い時に消費税が課税されます。

地代部分と家賃部分を区分している場合も、賃料全体に対して消費税が課されるので注意が必要です。

5.地代が不相当となった場合は「地代等増減請求」

借地契約において取り決めた地代が、その後の事情変更によって不相当となるケースも想定されます。
この場合には、「地代等増減請求」によって一方的に地代を変更する権利が、地主・借地権者の双方に認められています(借地借家法11条1項)。

(1) 地代等増減請求の可否を判断する際の考慮要素

地代等増減請求が適法に行われた場合、その時点から将来に向かって地代が変更されます。
地代等増減請求が認められるかどうかは、以下の3つの要素を考慮して判断されます。

①土地に対する租税その他の公課の増減
(例)
・固定資産税や都市計画税の税率が急激に増加(減少)した場合 など

②土地の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動
(例)
・再開発によって地価が急騰した場合
・震災による液状化によって地価が暴落した場合
・借地契約の締結から時間が経ち、その間に不動産相場が大きく変動した場合 など

③近傍類似の土地の地代等
(例)
・周辺地域の土地に比べて、地代が安すぎる(高すぎる)場合 など

(2) 地代等増減請求を相手方が拒否した場合の処理

地代等増減請求を相手方に拒否された場合、訴訟を提起する必要があります。

地代等増減請求の判決が確定するまでの間は、借地権者は地主に対して、従前の賃料を支払えば足ります(借地借家法11条2項本文、3項本文)。

ただし、もし地代の増額を認める判決が確定した場合には、不足分の地代につき、支払予定日の翌日から年10%の利息を付したうえで、地主に一括で支払わなければなりません(同条2項但し書き)。

反対に、地代の減額を認める判決が確定した場合には、過剰に支払った地代につき、現実に支払った日の翌日から年10%の利息を付した金額を、地主に対して一括で請求できます(同条3項但し書き)。

6.地代等増減請求に関する最高裁判例

訴訟における地代計算の考え方を知るためには、地代等増減請求に関する裁判例を参照することが有益です。

地代等増減請求訴訟の最高裁判例を2つ紹介します。

(1) 地代の大幅な増額を争った判例

最高裁昭和40年11月30日判決

近隣の地代相場や、もともとの地代が低額であったことを踏まえ、地代の大幅な増額を認めた原審(高裁)判決について、借地権者である上告人が不服を申し立てた事案です。

上告人は、地価高騰率が1.3~2.7倍に過ぎないことを理由に、大幅な地代の増額を認めるべきではないと主張しました。

しかし最高裁は、地代の増額を認めるかどうかは、当時の借地法12条に定められる諸契機を総合的に考慮し、裁判所が合理的に判定すべきものであると判示しました。

そのうえで、地価高騰率のみを重視する上告人の主張を排斥し、原審の判断を支持しました。

(2) 増額に関し地代の算定方法を争った判例

最高裁昭和43年7月5日判決

地代の増額を認めた原審(高裁)判決について、借地権者である上告人が不服を申し立てた事案です。
上告人は、土地の期待利回りを基準に地代を算出する「積算法」を用いて、地代を算定すべきではないと主張しました。

最高裁は、積算法も地代計算に関する一つの合理的尺度として使用可能であると言及しました。
しかし、他にも地代の合理的な算定方法は存在し、他の方法に比べて積算法が「本則」であるとまでは言えないと判示しました。

そのうえで、具体的事実関係に即して総合的に相当地代を決定した原審判決を支持し、上告を棄却しました。

7.地代についてのトラブルは弁護士に相談を

上記で紹介した2つの最高裁判例からは、共通して以下の内容が読み取れます。

  • 地代の計算には複数の合理的な方法があること
  • どのような地代の計算方法を採用するかは、具体的な事実関係を総合的に考慮したうえで、裁判所が適宜決定するものであること

したがって、実際に地代等増減請求訴訟を争う場合、最終的に裁判所が相当地代をどのように決定するかは、ふたを開けて見なければわからない側面が大きいのです。

しかし、弁護士にご相談いただければ、過去の裁判例を分析したうえで、どのような結論になるかの見通しを立てることができます。
訴訟の見通しが分かれば、実際に地代等増減請求訴訟を提起すべきかどうか、どの程度のラインであれば和解に応じて良いかなどについて、適切な方針を定めることが可能です。

地代が高すぎるのではないかと感じている借地権者の方は、一度弁護士までご相談ください。

関連するコラム
現在、不動産分野の新規受付を停止しております。
皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。