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借地契約の「権利金」の相場|なぜ支払う必要がある?

借地契約を締結して土地を借りる際には、地主に対して「権利金」を支払うのが一般的です。

この権利金は、土地全体を購入する際の価格に近いような、きわめて高額な価格が設定されるケースもあります。
なぜ土地を借りるだけなのに、高額の権利金を支払うことになるのでしょうか?

今回は、借地契約における「権利金」の性質や金額相場、さらに「権利金」に関する搾取やトラブルを避けるための対策などを解説します。

1.借地契約の「権利金」とは?

借地契約の「権利金」とは、借地権(地上権または賃借権)を設定することの対価として、借地権者(借りる側)から地主(貸す側)に対して支払われる金銭を意味します。

借地契約の締結に際して、借地権者から地主に権利金が支払われるのは、借地権が非常に強力な権利であり、それに伴って高い財産的価値が認められているからです。

借地権者の権利は、借地借家法という法律で非常に厚く保護されています。
具体的には、借地権者の権利を保護するため、借地借家法では以下のルールが定められています。

  • 借地権の存続期間は、最短でも30年(同法3条)
  • 借地上に建物が存在する場合、地主による借地契約の更新拒絶には正当の事由が必要(同法5条1項、6条)
  • 借地権の存続期間が満了し、借地契約が更新されない場合は、地主に建物を買い取ってもらえる(建物買取請求権。同法13条)
  • 借地借家法の強行規定に反する特約で、借地権者に不利なものは無効(同法9条、16条) など

上記の各ルールにより、いったん借地権を設定すると、その後半永久的に、地主は自ら土地を使うことができなくなってしまいます。
それに加えて、借地契約を終了させる場合にも、建物を買い取らなければならない可能性があるなど、地主に大きな負担が発生します。

借地権の設定に伴い、地主に発生する上記のような不利益を補填するために、借地契約の締結時に権利金の授受が行われることが通例となっているのです。

【契約に定めがなければ「権利金」の支払いは不要】
ただし、借地契約を設定する際に、権利金の授受を必須とする法律上の規定は存在しません。したがって、そもそも権利金の授受を行うかどうか、また権利金の具体的な金額をいくらにするかについては、純粋に当事者間の交渉・合意によって決定されます。
仮に借地契約等において、権利金を授受する旨が定められていない場合には、借地権者は地主に対して権利金を支払う必要はありません。

2. 「権利金」の金額相場

前述のとおり、借地契約における権利金の金額は、当事者である地主と借地権者の間の交渉・合意によって決められます。

借地の権利金については、一定の相場金額が存在するため、相場を参考にして権利金額を決定するのが一般的です。

(1) 「更地価格」と「借地権割合」を参考に決定

借地契約における権利金は、一般に以下の計算式で求められる借地権価格を参照して決定されることが多いです。

借地権価格=更地価格×借地権割合

更地価格は、土地そのものを売買する際の取引価格(実勢価格)を意味し、周辺地域での取引実例などを参考として設定されます。

国が公表している「路線価」も一定の参考となりますが、路線価に基づいて計算した更地価格は、実勢価格の8割前後に割り引かれているケースが多いことに注意が必要です。

借地権割合は、国税庁が公開している「路線価図・評価倍率表」によって確認できます。

参考:路線価図・評価倍率表|国税庁

「路線価図・評価倍率表」では、各道路に数字とアルファベットが付されています。
土地が接している道路に記載された数字とアルファベットにより、その土地の路線価と借地権割合を把握することができます。

[参考記事] 借地権割合とは?相続税への影響や調べ方

たとえば、「400D」と記載されている道路に接している土地の場合、

・1平方メートル当たりの路線価が40万円
・借地権割合が60%※
※A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%

であることを意味します。

(2) 権利金は更地価格の30~90%

「路線価図・評価倍率表」のアルファベットからわかるように、借地の権利金の重要なメルクマールとなる借地権割合は、30~90%の割合で設定されています。

したがって、借地の権利金相場は更地価格の30~90%であり、地域によって異なるということです。

借地権割合は、都会の地域ほど高くなり、田舎の地域ほど低くなる傾向にあります。

たとえば、東京駅周辺や中央区銀座などでは、多くの地域で借地権割合が最大の「90%」に設定されています。
これに対して、地方の中心都市部では60~80%、地方の郊外では30%~40%といった具合に、都市部から遠くなると、借地権割合も下がっていきます。

よって、借地の権利金についても、都会の地域ほど高く、田舎の地域ほど安いのが一般的です。

(3) 「借地権割合」が存在しない地域もある

借地権の取引慣行が定着していない地域の道路については、「路線価図・評価倍率表」においても、借地権割合が設定されていません。
この場合、道路にはアルファベットが記載されておらず、単に数字が記載されています。

(例)「20」と記載されている場合
→1平方メートル当たりの路線価は2万円、借地権割合は設定なし

借地権割合が設定されていない地域は、土地の価値が低い地域であることが多いです。

この場合でも、地主と借地権者の合意によって借地の権利金を設定することはできます。

その一方で、借地権割合が設定されていない土地については、借地契約の締結に当たって、権利金の授受が全く行われないケースもよく見受けられます。

【相場から乖離した権利金を設定する場合、贈与税に注意】
上記で解説した金額相場にかかわらず、地主と借地権者が合意さえすれば、どのような金額の権利金を設定しても構いません。ただし、相場からあまりにもかけ離れた権利金を設定する場合には、借地権者の側で贈与税が課税される可能性があります。
前述のとおり、借地権には高い財産的価値が認められています。そのため、無償または低廉な金額で借地権を設定する行為は、地主の借地権者に対する贈与の一種であるとみなされることがあるのです。
借地の権利金について、贈与税の課税が不安な場合には、税理士へ事前に相談することをお勧めいたします。

3.権利金に関する搾取やトラブルを避けるために

借地契約を締結して土地を借りるに当たっては、不当に高額な権利金を要求されたり、契約トラブルや思わぬ贈与税の課税に直面したりするケースも想定されます。

このような地主による搾取やトラブルのリスクをできる限り未然に防ぐためには、以下の対策を講じましょう。

(1) 周辺の土地の取引相場・路線価・借地権割合をチェック

借地の権利金相場は、前述のとおり、更地価格と借地権割合から求められます。

更地価格は、実際に周辺地域で取引された土地の成約価格を基準として考える必要があります。
地場の不動産業者を見つけて、土地の取引相場に関する情報提供を求めてみると良いでしょう。

また、実際の取引相場に加えて、借地権の取得を検討している土地の路線価を調べておくことも有益です。

路線価と実際の取引相場があまりにも乖離している場合には、その土地の取引相場は過熱気味である可能性があるので、借地権の取得は見送った方が良いかもしれません。

借地権割合については、すでに紹介した「路線価図・評価倍率表」で必ず確認しておきましょう。

[参考記事] 借地権割合とは?相続税への影響や調べ方

(2) 地代の金額を確認する

借地の場合、所有権を有する土地とは異なり、借地権者は地主に対して地代を支払う義務を負います。
借地の権利金が安いように見えても、その反面地代が高額に設定されているケースがあるので注意が必要です。

借地権を取得する際には、初期費用である権利金と、ランニングコストとなる地代をトータルで考えて、借地権者にとってメリットがあるかどうかを判断することが大切です。

(3) 契約や税務については専門家に相談する

不動産取引には、当事者間でのトラブルがつきものであると言っても過言ではありません。

借地権の設定も不動産取引である以上、売買などと同様に、後から地主との間でトラブルになる可能性があります。
たとえば、後から土壌汚染・地盤沈下・地中埋設物などが発覚して、借地権者が想定していた利用ができないケースも考えられます。

借地権者としては、こうしたトラブルが発生する可能性を想定して、借地契約の中でリスクをコントロールしておくことが大切です。

借地権者にとって不当に不利な条項が含まれていないかどうか、トラブル解決の手順はきちんと盛り込まれているかどうかなど、借地契約の内容を十分に確認する必要があります。

4.まとめ

借地権者は、利益を損失しないために借地契約の内容をよく確認する必要があります。

また、借地の権利金の金額によっては、借地権者に贈与税が課される可能性が生じます。
そのため、権利金額の設定に当たっては、税務に関して税理士に事前相談を行うことが推奨されます。

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