欠陥マンションの対応
マンションの売買では、残念ながら様々な欠陥が問題になることも少なくありません。
新築であっても中古であっても、また専有部分・共用部分問わず、マンションに何らかの欠陥が存在する可能性はあります。
こうした欠陥マンションの問題は、法的には主に「契約不適合責任」という問題として考えられます(2020年4月1日の民法改正前は「瑕疵担保責任」でした)。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、契約の目的物が種類・品質・数量に関して契約内容に適合しない場合に、買主から売主に対する以下の4つの権利を認めるものです。マンションの欠陥の場合は主に「品質」として契約不適合の問題になります。
① 追完請求権
目的物が契約に適合するように修補・代替物の引渡し等を行うものです(民法562条)。欠陥マンションの場合は修補がよく用いられます。
② 代金減額請求権
上記①の請求をしても追完されないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(民法563条)。また、追完不能な場合などでも請求できます。
③ 損害賠償請求権
債務不履行として損害賠償請求が可能です(民法415条)。ただし、売主の帰責事由が必要になります(民法改正前の瑕疵担保責任では帰責事由は不要です)。
④ 解除権
①の追完を請求しても履行されない場合、契約の解除も可能です(民法541条)。
なお、上記の契約不適合責任を特約によって免除することも可能ですが、個人が不動産業者から購入する場合など、免除できない場合も多く定められています。
また、新築住宅を不動産会社が販売する場合、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)により、引き渡し後10年は契約不適合責任を負うこととされており、この期間を短縮したり、条件を付したりするような、買主に不利になる特約は無効とされます(品確法95条)。
以上が契約不適合責任の基本的な内容ですが、マンションの契約不適合については、専有部分と共用部分でそれぞれ異なる考え方をすることになりますので、以下で簡単に解説いたします。
(1)専有部分の欠陥
専有部分とは、簡単に言えば一部屋一部屋の住戸のことで、区分所有権の及ぶ部分です。なお、廊下や階段などは共用部分になります。
専有部分の欠陥は、例えばフローリングの傷みや、水回りの配管からの漏水などがあります(漏水は場所によっては共用部分の問題になります)。
こうした専有部分の欠陥については、買主自らが売主に対して、上記の契約不適合責任を追及していくことができます。
どこまでの欠陥を契約不適合として責任追及できるかは個別の契約内容によりますが、一般的に漏水などは契約不適合と言えるでしょう。
なお、買主から契約不適合責任を追及された売主としては、ケースによっては不適合の原因とを作った建設会社やリフォーム会社などに、請負契約に基づいて、契約不適合責任を追及できることがあります。
(2)共用部分の欠陥
共用部分とは、専有部分を除いた部分のことで、廊下・階段、エレベーターなどが代表的です。
共用部分の欠陥については、専有部分と同様にそれぞれの区分所有者が契約不適合責任を追及することもできますが、管理組合から責任追及することも可能です(区分所有法26条2項)。
共用部分の契約不適合では、各戸の区分所有者が購入した際の売主が異なるという問題もあります。一斉入居して間もなければ全て分譲業者が売主になりますが、時間が経過するにつれ各戸の売買が進み、中古を購入して入居してきた区分所有者から見れば売主が異なるケースがあります。
なお、共用部分の欠陥が重大な場合(建物としての基本的な安全性を損なう場合)は、建築会社や設計者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求し得ます(最高裁平成19年7月6日判決)。
マンション管理組合の役割
マンションの管理組合は、分譲マンションの区分所有者(購入者)全員が加入する組合で、区分所有法で設立及び加入が義務付けられています。
現実の運営を区分所有者全員で行うことはあまり多くなく、代表者数名~十数名で理事会を組織し、理事会が運営を進めていきます。
管理組合の役割としてはマンションの維持管理がメインです。区分所有権の及ぶ専有部分を除いた全て(共用部分)について、清掃や点検、修繕を行い、管理費や修繕積立金などの管理も行います。
また、毎年1回以上の集会(総会)を開催し、区分所有者に報告や今後の計画の説明を行います。
実際には、管理会社に日常の管理を委託していることも多いです。
マンション所有者の責務
マンションは、区分所有者という各戸の所有者の集まりです。
マンション全体を適切に維持管理していくために、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と定められています(区分所有法6条1項)。
この「共同の利益に反する行為」というのは様々ありますが、例えば管理規約で禁止されている民泊を営業したり(大阪地裁平成29年1月13日判決)、暴力団事務所として使用したり(福岡地裁平成24年2月9日判決)といった事例があります。
また、区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合、他の区分所有者や管理組合は、その行為の停止等の請求(区分所有法57条)、専有部分の使用禁止(同法58条)、区分所有権の競売の請求(同法59条)といった措置を取ることができます。
定期借地権付きマンションの留意点
定期借地権付きマンションとは、マンションの土地に関する権利が所有権ではなく期限付きの借地権であり、別の所有者から土地を借りて建っているマンションのことです。
定期借地権にも3種類ありますが、マンションで利用されるのは主に「一般定期借地権」で、契約から50年以上と長期間存続する権利です。
とはいえ、定期借地権は原則として契約が更新されないため、期間満了後は土地を返還する必要があります。
定期借地権付きマンションは、所有権によるマンションより安価なことが多いですが、上記のような定期借地権の性質上、以下の点に留意する必要があります。
- 存続期間満了後は土地を返還しなければならない(マンションを解体し、居住し続けられないことが通常)
- 地代が値上がりする可能性がある
- 住宅ローンを組む際、定期借地権の残存期間の制限がある場合が多く(10年以上など)、ローンを組めないこともある
- 売却しようと思っても、定期借地権の残存期間が短いと売却できないことがある
現在では定期借地権付きマンションは少しずつ減少傾向にありますが、売買を検討する際には、所有権によるマンションとは異なるということに十分注意する必要があります。