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入居者トラブル

賃貸アパートの当初破損の修繕義務

「老朽したアパートを低廉な賃料で賃貸しているのですが、賃借人から、賃貸借契約締結の当時から存在している破損汚損箇所について修繕の要求がありました。要求に応じて修繕する義務はありますか?

このケースの場合、原則として賃貸人にアパートの修繕義務は生じません。ほとんどの場合は修繕要求を拒否できます。

1. 修繕義務が生じないケース

賃貸物件の破損や汚損を修繕する負担は、通常、賃貸人が負います。賃借人が賃貸物件を使用収益できるようにしなければならないからです。

しかし、破損や汚損があっても、修繕義務が生じないケースがあります。

修繕義務が生じるには、主に以下の2つの条件が必要です。

  1. 修繕が必要なほどの破損であること(修繕の必要性)
  2. 破損を現実に修繕できること(修繕の可能性)

修繕の必要性は、賃借人が物件を借りた目的を達成できなくなるかどうかで判断されます。
賃貸借契約の目的は、個別の事情により大きく異なります。

特に、契約締結当初から破損汚損があった場合、

  • 契約締結時に当事者が想定していた物件の状態
  • 賃料などに象徴される賃貸物件の経済的価値
  • 破損汚損によって賃借人が受ける不利益の程度

などを考慮し、修繕が本当に必要か判断されるのです(東京高等裁判所昭和56年2月12日判決など)。

賃貸物件がもとより老朽化していたのであれば、契約当初からある程度の破損や汚損があることは織り込み済みでしょう。

賃料が相場価格よりも低く抑えられているのですから、老朽化などを踏まえて本件アパートの経済的価値は低く、賃貸借契約で目的とされていた住み心地などの効用はほどほどで仕方がないと想定されていたはずです。

となると、本件のケースでは修繕の必要性が認められにくく、修繕義務が生じる可能性は低いと言えます。

一応、修繕の必要性が全く認められないとは言い切れません。構造的欠陥があり建物全体が傾いているなど、あまりにも賃借人の不利益が大きすぎるケースがあるためです。

もっとも、そのようなケースでも、修繕義務はまず認められないでしょう。

立て直しとなればもはや物理的に「修繕」とは言えません。
工事自体はリフォームで解決できるとしても、経済的に修繕不可能と評価される可能性が高いでしょう。構造的欠陥の修繕費用は高額になりやすい一方、賃料が低廉なのですから、賃貸人への負担が大きすぎます。

なお、この場合は契約の解除などが問題になります。

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