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入居者トラブル

賃貸物件を賃貸人に無断で法人登記したらどうなる?

賃貸物件を法人の本店所在地として登記する場合、その物件を「事務所」として利用していると表明することになります。

賃貸借契約の内容によっては、賃貸人に無断での法人登記はトラブルの原因になり得ますので、契約内容を精査して慎重に対応してください。

この記事では、賃貸人に無断で賃貸物件を法人の本店所在地として登記することについて、法的な問題点や自宅起業の方が取り得る代替案を解説します。

1.賃貸物件を法人登記することは可能?

法人を設立する際には、本店所在地は発起人等が自由に決められます。
ただし、本店所在地を賃貸物件の住所にする場合、賃貸借契約や管理規約に違反するおそれがあるので注意が必要です。

(1) 法律上は特に制限はない

賃貸物件の住所を本店所在地とすることについて、法律上は特に制限がありません。
法人の本店所在地は、自己所有物件である必要はなく、登記の際に賃貸借契約等の内容が確認されることもありません。

したがって、賃貸物件を法人の本店所在地として登記してよいかどうかは、専ら賃貸物件に関する契約や管理規約との関係で決まることになります。

(2) 賃貸借契約上の用法違反に該当する可能性

賃貸借契約では、賃貸物件の利用目的が限定されているのが一般的です。

たとえば、居住用として貸したマンションの一室で、賃借人が勝手に飲食店を営んでしまったら、同じマンションに住む住民は大迷惑でしょう。
また、店舗への来客が居室を汚したりして、普通に居住しているケースでは考えられないほどの損傷が発生するおそれもあります。

そこで「居住用」「店舗用」「事務所用」など、利用目的を契約上限定することによって、賃借人が予想外の方法で賃貸物件を利用することを防ぐことが意図されているのです。

法人の本店所在地として賃貸物件の住所を登記した場合、賃借人は、賃貸物件を「事務所」として利用していることが客観的に推測されます。

もし賃貸借契約上の利用目的が「居住用」である場合には、事務所利用は認められず、契約違反となってしまう可能性があるので注意しましょう。

(3) 管理規約に違反する可能性がある

賃貸借契約上の利用目的を限定するのと同様の理由により、管理規約でも居室の利用方法が制限されているケースがあります。

管理規約に違反して賃貸物件を事務所利用した場合、後述するように、賃貸借契約の解除損害賠償を受けるおそれがあるので要注意です。

2.無断の法人登記はバレる?

仮に賃貸人に無断で賃貸物件の住所を法人の本店所在地として登記したとしても、実際にそのことが発覚するきっかけがあるかどうかはケースバイケースです。

賃貸物件に居住者以外の他人が出入りしている場合、単に居住用として利用されているのではなく、何らかの事業に利用されているのではないかという推測が働きます。

特に、商品や資材の搬入などが頻繁に行われている場合には、明らかに事務所として利用されていることが窺えるでしょう。

このような場合には、法人登記を確認するまでもなく、賃貸人に無断での事務所利用が発覚し、契約上の責任などを追及されるおそれがあります。

これに対して、居室に人の出入りがほとんどなく、外から見て普通に居住しているのと変わらない状態であれば、賃貸人に無断で居室を事務所利用していることを疑われるきっかけがありません

たとえば、インターネット上で完結するビジネスを自宅で営む場合などには、人の出入りはほとんど発生しないでしょうから、居室の事務所利用を疑われる可能性は低いといえます。

とはいえ、法人登記は誰でも確認することができますので、賃貸人が法人登記を調べた結果、事務所利用が発覚してしまう可能性は否定できません。

3.無断で法人登記することのデメリット

賃借人が自ら住んでいる賃貸物件を法人の本店所在地として登記することは、郵便物の受け取りなどの観点から便利な面があります。

しかし、現実に関係者の出入りが発生する場合はもちろん、将来的に顧客や取引先とトラブルを抱えることになる可能性を考慮すると、賃貸人に無断で賃貸物件を法人登記することは望ましくありません。

賃貸人に無断で賃貸物件を法人登記する場合に、賃借人が被る主なデメリットは以下の通りです。

(1) 賃貸借契約を解除される可能性

賃貸物件の事務所利用が賃貸借契約の違反(管理規約違反を含む)に該当する場合、賃貸人によって賃貸借契約が解除されるおそれがあります。

賃借人としては、自宅と事務所を同時に失うことになりますので、生活・事業の両面に大きな影響が生じてしまうでしょう。

なお、用法遵守義務違反による賃貸借契約の解除は、賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊されたと評価し得る場合に限って認められます(最高裁昭和28年9月25日判決等参照)。

たとえば、本店所在地として賃貸物件の住所が登記されている場合であっても、居住者以外の人の出入りがほとんどなく、実際に賃貸人や周囲に迷惑が及んでいるとはいえないケースも考えられます。

この場合には、賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊されたとまでは言えず、賃貸借契約の解除は認められない可能性が高いでしょう。

これに対して、賃貸人や周囲への迷惑が実際に発生している場合には、用法遵守義務違反による信頼関係の破壊を理由として、賃貸借契約が解除されてしまう可能性があるので要注意です。

(2) 損害賠償を請求されるおそれ

賃貸人や周辺住民が、賃借人による居室の事務所利用によって、実際に損害を被った場合には、賃借人は損害賠償請求を受けるおそれがあります。

現状は事務所利用の痕跡が表に出ていないとしても、将来的に取引先とトラブルになった場合などには、本店所在地として登記されている賃貸物件の周辺で何らかのいざこざが発生する可能性も考えられます。

このような潜在的なリスクを考慮すると、賃貸物件を賃貸人に無断で法人登記することは、決して得策とは言えません。

4.賃貸物件を法人登記せずに起業する方法

賃貸物件の住所を法人の本店所在地として登記することを避け、かつ賃貸物件に居住しながら自宅起業をするための方法の例としては、以下のものが挙げられます。

ご自身の状況に合わせて、取り得る現実的な選択肢を検討してみてください。

(1) 法人化せずに個人事業を営む

法人ではなく、個人事業主として事業を営む場合には、登記が必要ありませんので、本店所在地として賃貸物件の住所が外部に公表されることもありません。

そのため、取引先や顧客などが賃貸物件にやってきてトラブルを引き起こす可能性は減るでしょう。

ただし、個人事業主として事業を営む場合でも、利用目的が「居住用」に限定されているのに「事務所用」として利用していれば用法遵守義務違反であることには変わりませんし、賃貸物件において人の出入りが頻繁に生じる場合には、法人の場合と同様に事務所利用を疑われる可能性があるので注意が必要です。

(2) 実家などを本店として登記しておく

両親の実家が自己所有物件の場合には、そちらを法人の本店所在地として登記させてもらうことも考えられます。

ただし、法人に関係する郵便物が実家の方に届いてしまうなどの不便があるほか、取引先や顧客などが実家にやってくる事態も想定されるので、事前に両親などと十分相談しておきましょう。

(3) バーチャルオフィスを活用する

自宅起業の方の場合、「バーチャルオフィス」を利用することも一つの選択肢です。

バーチャルオフィスとは、法人の本店所在地として登記するための住所を貸してもらえるサービスで、月額数千円~1万円程度で利用できます。
郵便物の転送サービスもセットになっている場合が多く、本店所在地として登記できる住所を持っていない方にとっては便利でしょう。

なお、バーチャルオフィスを利用する場合、本店所在地として登記されている住所には、実際のオフィスが存在するわけではありません。
そのため、対外的な信用度という点では若干難があります。

しかし、インターネットで完結するようなビジネスであれば、オフィスに取引先や顧客が訪問する機会もほとんどないケースも多いです。

そのような方であれば、バーチャルオフィスを利用するメリットは大きいでしょう。

5.まとめ

賃貸人に無断で賃貸物件の住所を法人の本店所在地として登記すると、賃貸借契約の解除や損害賠償を受けるリスクがあるので、可能であれば別の住所を登記しておく方がよいでしょう。

もし賃貸物件を巡って、賃貸人との間で法的なトラブルが発生してしまった場合には、お早めに弁護士までご相談ください。

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