マンション管理規約には何が定められている?主な内容・入手方法
マンションの管理に関するルールは、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)のほか「マンション管理規約」によって定められています。
マンションのオーナーや入居者の方は、トラブル予防や実際のトラブルへの対応を適切に行うため、マンション管理規約の内容に目を通しておきましょう。
今回は、マンション管理規約で定められる主な事項、マンション管理規約の入手方法、および規約違反時の制裁などについて解説します。
1.マンション管理規約の主な規定事項
マンション管理規約は、区分所有法30条1項に基づき、マンション(マンション、つまり建物そのものだけでなく、その敷地若しくは附属施設も含みます)の管理・使用に関する区分所有者間のルールを定める目的で設定されます。
マンション管理規約の設定を決議するには、区分所有者の頭数および議決権の両方で4分の3以上の賛成が必要です(区分所有法31条1項)。
マンション管理規約で定められることの多い事項は、以下のとおりです。
なお、標準的なマンション管理規約のひな形は、国土交通省のホームページに掲載されているので、適宜ご参照ください。
【参考】マンション管理について|国土交通省
(1) 専有部分と共用部分の区別に関する事項
マンション管理規約では、各区分所有者が所有し独占的に使用収益できる「専有部分」と、それ以外の「共用部分」をどのように区別するかが定められます。
特に専有部分と共用部分の境界線となる箇所については、以下のように両者の区別が細かく規定されています。
①天井・床・壁
→躯体部分は共用部分、それ以外は専有部分②玄関扉
→錠および内部塗装部分は専有部分、それ以外は共用部分③窓枠・窓ガラス
→すべて共用部分
また、物件ごとに図面を用いて、共用部分の範囲が図示されるのが一般的です。
専用部分の補修については、「通常の使用に伴う場合には、専用使用権を有している区分所有者が負担する」と管理規約に規定されているマンションが多いので、専有部分と共用部分の区別が重要になってきます。
(2) 区分所有者の費用負担に関する事項
区分所有者は、マンションの管理に関して、管理費や修繕積立金などの各種費用を負担しなければなりません。
また、マンションによっては、駐車場使用料などの費用を個別に区分所有者から徴収するケースもあります。
マンション管理規約では、各費用の負担に関する大枠的なルールを定めておき、金額などの細目については管理組合総会で決定するのが一般的です。
(3) 管理組合に関する事項
管理組合の業務や組織に関する事項も、マンション管理規約で定めておくべき事柄の一つです。
具体的には、以下の事項がマンション管理規約において定められています。
- 組合員の資格
- 管理組合の業務範囲
- 管理組合の役員の役職、人数、選任方法
- 管理組合総会の招集、議事、議決
- 理事会の招集、議事、議決
- 管理組合の会計 など
(4) 区分所有者の禁止事項
区分所有法6条1項により、区分所有者は以下の行為を禁止されています。
①建物の保存に有害な行為
(例)
・専有部分内の耐力壁を撤去する
・専有部分に接続してバルコニーを設置する
・バルコニーを居室に変更するなど②その他建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為
(例)
・共用部分を不当に占有する(私物やごみの放置、駐車、駐輪など)
・悪臭や騒音などで他の区分所有者に迷惑をかける(野生動物の飼育、ごみ屋敷、カラオケ営業など)
・専有部分を暴力団事務所として使用する
・管理費や修繕積立金を滞納する
マンション管理規約では、区分所有法の規定に加えて、区分所有者に対して禁止する行為を定めることができます。
たとえば、居室を住居としてのみ使用する(店舗や事務所としての使用は不可)という制限を加えたり、ペットの飼育を禁止したりすることが考えられるでしょう。
(5) 区分所有者に対する制裁・措置に関する事項
上記で解説した区分所有者の禁止事項に違反した場合、後述するように、区分所有法57条から60条に基づく制裁を受けることになります。
さらにマンション管理規約では、区分所有法上の制裁に加えて、違反是正のため、理事長に対して一定の権限を付与する例が多く見られます。
2.マンション管理規約の入手方法
マンション管理規約は、管理組合集会の決議(区分所有法25条1項)によって選任される管理者が保管義務を負っています(同法33条1項)。
区分所有者等の利害関係人がマンション管理規約の閲覧を請求した際には、拒否する正当な理由がある場合を除いて、管理者は規約の閲覧を認めなければなりません(同条2項)。
したがって、区分所有者がマンション管理規約の閲覧を希望する場合は、まず管理者に対して連絡をとりましょう。
なお、規約の保管場所は、マンションの建物内の見やすい場所に掲示しなければならないとされているため(同条3項)、掲示に記された内容を参考に連絡をとるとよいでしょう。
3.マンション管理規約に違反した場合の制裁
区分所有者や、賃借人などの専有部分の占有者がマンション管理規約に違反した場合、他の区分所有者または管理組合法人は、違反者に対して区分所有法に基づく以下の4つの請求を行うことができます。
4つの請求のうち、3つは訴訟手続きを通じて行うことが必須となりますので、弁護士にご相談のうえで手続きを進めることをお勧めいたします。
(1) 共同の利益に反する行為の停止等の請求
区分所有者等がマンション管理規約に違反した場合、または違反に当たる行為をするおそれがある場合には、当該行為の停止・当該行為から生じる結果の除去・当該行為の予防を請求できます(区分所有法57条1項)。
なお、上記の請求を訴訟によって行う場合は、管理組合集会の決議を経たうえで、区分所有者の代表者が訴訟を提起します(同条2項、3項)。
(2) 使用禁止の請求
マンション管理規約違反による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、行為の停止・結果の除去・行為の予防請求によっては障害を除去して区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合は、違反者に対して一定期間、専有部分の使用禁止を請求できます(区分所有法58条1項)。
上記の使用禁止の請求は、必ず訴訟手続きによらねばなりません。
また、使用禁止請求訴訟を提起するためには、区分所有者の頭数および議決権の各4分の3以上の多数による決議が必要です。
(3) 区分所有権の競売の請求
さらに、使用禁止の請求を含めた他の方法によっては、区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難と認められる場合には、違反者が有する区分所有権および敷地利用権の競売を請求できます(区分所有法59条1項)。
区分所有権の競売の請求は、使用禁止の請求と同様に、区分所有者の頭数および議決権の各4分の3以上の多数による決議に基づき、訴訟手続きを通じて行わなければなりません(同条2項)。
(4) 占有者に対する引渡し請求
区分所有者以外の専有部分の占有者がマンション管理規約に違反したケースで、他の方法によっては区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難と認められる場合には、占有者が区分所有者と締結している賃貸借契約等の解除および専有部分の引渡しを請求できます(区分所有法60条1項)。
占有者に対する引渡し請求を行う際には、使用禁止の請求や区分所有権の競売の請求と同様に、区分所有者の頭数および議決権の各4分の3以上の多数による決議に基づいて訴訟を提起する必要があります(同条2項)。
4.まとめ
マンション管理規約は、区分所有法に基づき全マンションに共通して適用されるルールに加えて、マンションの特性に応じて個別的な管理ルールを定めるものです。
マンション管理規約に違反した区分所有者は、そのまま違反状態を続けていると、専有部分の使用を禁止されたり、最悪の場合専有部分が競売されてしまったりするおそれがあるので注意しましょう。