借地権付き建物の建替えは可能か
土地の所有者に土地を借り、その上に建物を建て、居住している方は多いです。また、相続によりそのような建物を承継した方も少なくないでしょう。
そのような借地権付き建物が老朽化し、建替えをしたいと考えた場合、建替えは可能なのでしょうか。
可能であるとして、借地の所有者(地主)の承諾は必要となるか、建替えにあたって注意すべきことはあるかなど、この記事では借地権付き建物の建替えについてわかりやすく解説していきます。
1.借地権付き建物とは?
まず「借地権」とは、建物の所有を目的に土地を利用することのできる権利(地上権または土地の賃借権)のことをいいます(借地借家法第2条第1号)。
これは、土地の所有者と土地を借りる方との間での、土地を利用することを内容とする契約によって成立します。
借地権付き建物は、このような借地権の上に建てられた建物のことをいいます。
つまり、土地の所有者(地主)は土地を建物の所有者(借地権者)に貸している状態ですので、土地の所有者と建物の所有者が異なる状態となっています。
2.借地権付き建物の建替えは可能?
結論から言うと、借地権付き建物の建替えは可能と言えます。
しかし、次に解説する通り、建替えの場合には原則として所有者(地主)の承諾が必要となります。
【建物を取壊しても借地権は存続する】
建物の建替えをするためには、まずその建物を取壊す必要があります。既に解説した通り、借地権は、建物を所有する目的で土地の利用ができる権利ですが、たとえ建物を取壊したとしても当然には借地権まで失われることはありません。
借地借家法第7条1項も、建物が滅失した後も借地権が存続することを前提とした規定となっています。
(1) 契約の最初の存続期間内の場合
最初の存続期間内の建替えについては、土地の賃貸借契約書に「増改築禁止特約」などのような特約が記載なければ、地主の承諾なしで建替えも可能です。
しかし、地主の承諾がある場合に限って、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間借地権が存続するとされています(借地借家法第7条1項)。
これは、建物の建替えについて地主に承諾を得て新しく建物を建てたのに、これまでの借地権の利用期間を過ぎてしまったとしてすぐに土地を返還しないとなれば、建替えをした意味がなくなってしまい、土地を利用する者に不利なためです。
よって、地主の承諾は得るに越したことはないでしょう。
(2) 契約更新後の建替えの場合
賃貸借契約が一度更新された場合にも、建替えを行う際に地主の承諾があれば、既に解説した通り、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間借地権が存続するとされます(借地借家法第7条1項)。
しかしながら、契約更新後、地主の承諾なく土地の利用期間を超えて存続する建物を建てた場合、地主は、借地権者に対して土地の利用権の消滅又は解約の申し入れをすることができます(同条第8条第2項)。
この申し入れが行われた場合には、この申し入れのあった日から三か月経過すれば、土地の利用権が消滅することとなります。
よって、契約更新後の建替えは地主の承諾を必ず得るようにしましょう。
【建替えを承諾してもらう通知を地主に発送したが返事がない場合】
建物の建替えのために地主に建替えについての承諾書を送付したものの、地主から何らの返答がない場合があります。
その場合には、その通知が地主に到達してから2か月以内に地主から異議がなければ、承諾があったものとみなされます(借地借家法第7条第2項)。
しかし、この規定は契約更新後の建替えの場合には適用されません。そのため、契約が一度更新された場合には、必ず地主の明示的な承諾が必要となります。
なお、建替えには多額に費用がかかります。一括で払えれば問題はありませんが、多くの場合は金融機関の融資を受けローンでの建替えを行うこととなるかと思います。
しかし、金融機関としては後のトラブルを避けるため、地主の承諾を得ることを条件とする場合がほとんどですので、この承諾が得られない場合には融資を受けることは難しいでしょう。
3.契約の更新後の建替えに地主が承諾しない場合
既に解説した通り、契約の更新後には、地主の承諾なしに土地の利用期間を超えて存続する建物を建てることはできません。
地主が承諾をしない場合には、借地権者は、地主の承諾に代わる許可を裁判所に訴えて裁判で取得する必要があります(借地借家法第18条第1項)。
裁判所でこのような地主の承諾に代わる許可は、建替えをすることに関してやむを得ない事情がある場合に認めることができます。
裁判所は、その判断をするにあたって、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失した理由、借地に関するこれまでの経過、地主と借地権者が土地の使用を必要とする事情など様々なことを考慮して判断することとなります(同条第18条第2項)。
また、この裁判で裁判所は、借地権者と地主の公平を考える観点から、借地権者に対し地主へ承諾料の支払いを命じることもできます。
4.承諾料の相場
地主の承諾に代わる許可を得るためには、承諾料の支払いが借地権者に命じられることがあります。
また、裁判所の手続きではなく、地主が任意で建替えの承諾をする際にも、借地権者が承諾料を所有者に支払うとの合意をする場合があります。
承諾料の相場は、どのような建物を建てるかにもより、一概に決まるわけではありません。
一応の目安としては、裁判の場合は借地権価格の2%〜5%程度、任意の話し合いの場合には更地価格の1%〜10%程度の範囲のようです。
5.まとめ
借地上の建物の建替えは、原則として地主の承諾があれば可能です。
承諾なしで建替えを行うと後々トラブルになる可能性が高いでの、無断で建替えに踏み切ることはお勧めしません。
建物の老朽化などの理由を訴え、必ず地主の許可を得るようにしましょう。