リバースモーゲージとは?
資金を調達する方法の1つに「リバースモーゲージ」というものがあります。
リバースモーゲージは高齢者向けのローンです。日本は高齢者が多いため、リバースモーゲージを利用できる人も多いでしょう。
高齢者の場合、定年退職までの期間が短く、定収入を長期的に確保できる見込みが薄いなどの理由もあって、通常の住宅ローンなどの審査に落ちることがあります。
しかし、このような場合でもリバースモーゲージを利用できる可能性があります。
この記事では、リバースモーゲージの仕組み、利用条件、メリットやデメリットなどを解説していきます。
1.リバースモーゲージの仕組み
簡単に言うと、リバースモーゲージは「債務者が亡くなったら債権者が家を売却して貸したお金を取り戻す」というシステムです。
債務者は持ち家を担保にしてお金を借ります。この点は通常の住宅ローンと変わりません。
住宅ローンとの大きな違いは2つです。
- 生存中の債務者は基本的に利息のみを毎月返済する
- 担保にした持ち家の売却がある程度前提となっている
通常のローンとは反対に、元金は家の売却金で最後にまとめて返すため「リバース」モーゲージと名付けられています。
ちなみにモーゲージとは「担保」や「抵当」という意味です。
2.リバースモーゲージを利用するための条件
通常のローンと違い、リバースモーゲージを利用するには特別な条件が必要です。
契約するローンによって細部が異なりますが、多くに共通する条件は以下のようなものです。
(1) 年齢制限
多くのリバースモーゲージは「60歳以上~80歳未満」といったようにシニア世代を対象としています。
リバースモーゲージの仕組みには「債務者の死亡」が想定されているため、死亡リスクの低い若年層は対象外です。
(2) 相続人の同意が必要
契約者の死後に家を売却するため、契約前に契約者の推定相続人全員の同意が必要です。
いざ売却というときになって相続人が売却を拒否する可能性を排除するために、こういった条件が設けられています。
(3) 資金の使途が広い
住宅ローンで調達した資金は住宅の購入に、自動車ローンの場合は自動車の購入にといったように、多くのローンは使途が限定されています。
それに対して、リバースモーゲージで調達した資金は、かなり多目的に使えます。老後の生活資金や家のリフォーム代金に充てることも可能です。
ただし、投資や事業用の資金には使えないなどの制限が付くことが多いです。
ローンによってはさらに制限が多い場合もあるので、予め契約内容を確認しておきましょう。
3.リバースモーゲージのメリット
通常の住宅ローンと違い、リバースモーゲージには主に以下のようなメリットがあります。
(1) 自宅を失わない
通常の住宅ローンは、ローンの返済が滞ると抵当権を実行されて家を失ってしまいます。
しかし、リバースモーゲージの場合、利息さえ払っていれば、基本的には生きている限り同じ家に住み続けられます。
契約者が他界しても配偶者が契約を引き継げるリバースモーゲージもあるので、それを利用すれば配偶者が家を失うことを防ぐことが可能です。
(2) 自宅を買い戻すことも可能
リバースモーゲージの特徴は、契約者の死後は基本的に家が売却されることです。
しかし、契約者が生存中であっても、繰り上げ返済をしてローンを完済すれば、抵当権を外してもらうことができます。
契約者が死亡した後であっても、子供などの相続人がローンの残債を返済すれば、やはり抵当権を外すことができます。
何らかの方法で借金を返せれば自宅を失わずに済むので、「リバースモーゲージを使うと将来絶対に持ち家を失う」と考える必要はありません。
(3) まとまった資金を得られる
大抵の場合、短期間で資金を得るには何かを代償にする必要があります。
しかし、リバースモーゲージを利用すれば、持ち家が担保になるものの、同じ家に住み続けることができます。表面上はあまり変わらない生活を継続しながら、まとまった資金を調達できるのです。
(4) 借り入れ方が複数ある
住宅ローンは一括で大金を調達しますが、リバースモーゲージは概ね以下3つのいずれかの方式でお金を借ります。
一括方式
通常の住宅ローンのように、契約時に一括でお金を借りる方法です。まとまった金額のお金が必要になった場合に向いています。
年金方式
年金を受給するように毎月定額を借りる方法です。契約時に設定した年数にわたって、同じ金額が振り込まれます。
この方法は生活費の調達などに向いています。
極度額方式
すぐに現金を借りるのではなく、必要に応じて借りる方法です。契約時に設定した限度額まで借りられます。
急な病気や事故などで現金が必要になった場合の備えとして活用できます。
(5) 持ち家の売却額が債務額を上回ることもある
契約者の死後に債権者が家を売却した場合、売却額が債務額より大きくなるかもしれません。
その場合は相続人が差額を受け取ることができるため、財産を遺せる可能性があります。
(6) 住宅ローンが残っていても利用可能
もし持ち家に住宅ローンが残っていても、条件や金融機関次第によってはリバースモーゲージを利用できます。
その場合はローンの借り換えとなりますが、借り換えた後はリバースモーゲージを返済することになるので、月々の支払いが「利息のみ」で済むようになります。
通常の住宅ローンの場合は、毎月「元金と利息」を支払わなければなりません。
元金部分の負担がリバースモーゲージによって消滅すれば、生活はかなり楽になるはずです。
4.リバースモーゲージのデメリット
良い面に目が行きがちなリバースモーゲージですが、デメリットも存在します。
デメリットを知らずに契約すると後で痛い目に遭いかねないので、予備知識を得るようにしましょう。
(1) 変動金利である
リバースモーゲージは変動金利型ローンです。そのため返済期間中に金利が上がるリスクが存在します。
変動金利型ローン全般に共通したリスクですが、リバースモーゲージの利用者は高齢であるため、収入が年金のみということもあるはずです。
返済が利息部分のみで済むとは言え、収入があまり頼りにならない状態で金利が上昇してしまうと、返済プランに大きな悪影響が生じることがあります。
(2) 不動産価値の下落リスクがある
リバースモーゲージを契約すると、担保となる不動産の価値が定期的に見直されることになります。
不動産価値が下がれば、当然ながら融資限度額も下がってしまいます。
もし既に融資限度額を超えて借り入れていた場合は、超過した部分を返済しなければなりません。
返済できなければ、生存中であっても家を手放す必要が出てくるおそれがあります。
場合によっては追加の担保を要求される可能性も否定できません。
(3) 長生きリスクがある
一般的に長生きは歓迎されるべきことですが、リバースモーゲージを利用した場合はリスクが発生します。
例えば年金方式のリバースモーゲージを契約して、老後の生活資金として使っているとします。想定以上に長生きした場合、契約当初に設定された融資枠を使い果たしてしまうかもしれません。こうなるとそれまで毎月得られていたお金が振り込まれなくなってしまいます。
年金方式以外のリバースモーゲージも例に挙げましたが、他の方式のリバースモーゲージにも同様のリスクは存在します。長生きした結果として融資限度額までお金を使ってしまい、資金の調達ができなくなってしまう可能性があるのです。
(4) 家が売れないリスクを相続人が負うことも
リバースモーゲージを利用すると、原則として契約者の死後に担保に供した家が売りに出されます。
しかし、家が売れない、またはローンの残債以下の金額でしか売れない場合は、足りない部分の請求が契約者の相続人に来ることがあります。
「親の借金は家を売れば解決できる」と考えている相続人が、思わぬ支払いの請求に頭を抱えることになるかもしれません。
5.リバースモーゲージは長所と短所を理解してのご利用を!
多くのローンにはメリットとデメリットがあります。その点はリバースモーゲージも同様です。
ただし、契約者の死亡をある程度前提としているという特殊性もあって、リバースモーゲージには他のローンにはない長所と短所があります。
リバースモーゲージでは自分の死後に住宅が売却されますが、売却のときに自分は他界しているため、何の対処もできません。
自分の人生設計のみならず、相続人のことも考えなければならないローンなので、死後のことも考慮に入れた計画的なご利用をおすすめします。