シニア向け分譲マンション購入前に知っておくべきこと
「日本は高齢化社会」と頻繁に言われますが、もはやそのような段階は過ぎており、2007年には「超高齢社会」となっています。
高齢者が多くなったこともあり、シニア世代向けのビジネスや施設が増えました。
その1つが「シニア向け分譲マンション」です。その名の通りシニア世代を対象とした分譲マンションで、通常のマンションにはあまり見慣れない、高齢者向けの施設が設備しています。
では、シニア向け分譲マンションには具体的にどういった特徴があるのでしょうか?
この記事ではシニア向け分譲マンションの購入を考えている方に向けて、概要やメリット・デメリット、注意点などを紹介していきます。
1.シニア向け分譲マンションの特徴
「シニア向けマンション」と言っても多種多様ですが、以下のような特徴や設備があることが多いです。
(1) 入居条件が「60歳以上」などシニア層向け
一般の賃貸物件の中には、高齢者の居住に消極的なものもあります。
一方、シニア分譲マンションは反対に、「◯◯歳以上」の人を対象としています。
また、老人ホーム等と違い、シニア分譲マンションは「自立して生活できるある程度健康な高齢者」が入居できます。
そのため、要介護状態ではない、比較的自由に行動できる高齢者の方々、通称「アクティブシニア」に人気があります。
(2) バリアフリーになっている
高齢者のための施設なので、各所に手すりがあり、階段の横にスロープがあるなどの配慮が行き届いています。
専有部分も同様で、浴室やトイレに手すりがある、段差がないなど基本的にバリアフリー化されています。
(3) 共有スペースが多い
シニアライフを充実させるための設備が多いのも特徴です。
物件によって大きく異なりますが、例として以下のような設備があります。
- 大浴場
- 娯楽室(卓球など軽度な運動や、囲碁将棋等ができる場所)
- 図書室
- 防音ルーム(カラオケや楽器演奏、麻雀等ができる場所)
- シアタールーム
- フィットネスジムやプールなどの運動施設
(4) 生活支援サービスがある
掃除や洗濯、買い物などの日常の家事を援助あるいは代行するサービスが提供されている物件が多いです。
また、食事ができる食堂やレストランが用意されていることもあります。
シニア向け分譲マンションの食堂やレストランではある程度好きなものを選べます。
(5) フロントにコンシェルジュがいる
マンションのフロントには専門のスタッフがいて、入居者のために各種サービスを手配してくれます。
前述の生活支援サービスや共有スペースの予約を受け付けてくれるほか、来訪者への対応や取り次ぎ、郵便物や小包の受け取りなどを行ってくれます。
(6) 見守りサービスがある
定期的に安否確認をして、高齢者の体調に異常があれば救急車や医療機関へ連絡してくれます。
一定時間トイレの利用がないときに駆けつけてくれるサービスをしているところもあるようです。
医療や介護スタッフが常駐していない物件も多いですが、外部の訪問介護事業者や医療従事者などと提携するなどしてサービス向上に努めている事例も多いため、いざというときでも安心できます。
【介護付きマンションについて】
シニア向け分譲マンションでネット検索すると「介護付きマンション」などがヒットすることがあります。単に「介護付きマンション」という言葉だけでは、「シニア向け分譲マンション」なのか「サービス付き高齢者向け住宅(略称:サ高住)」との区別が付きづらいのが現状です。
サ高住は「高齢者の居住の安定確保に関する法律」によって生まれた、高齢者向け賃貸住宅です。法律に基づいた設備の基準が設けられており、安否確認や家事代行などのサービスがあります。専門家による健康面の相談などもできることが特徴です。
一方、シニア向け分譲マンションは賃貸物件ではなく分譲マンションです。サ高住と違って特に法律で規制されているわけではないので、設備やサービスの基準はありません。各マンションが独自に様々な設備やサービスを用意して、高齢者が住みやすいように配慮しています。
2.シニア向け分譲マンションのメリット
次に、シニア向け分譲マンションのメリットを紹介していきます。
(1) 分譲マンションなので所有権がある
分譲マンションということは、専有部分(自分の居室など)に所有権があるということです。
つまり、自己の所有物なのでリフォームすることができますし、必要に応じて売却したり賃貸に出したりすることもできます。自分の親族に相続財産として残すことも可能です。
例えば、老人ホームはお金を払って利用権を得ている形ですし、サ高住は賃貸物件なので所有権はありません。
これに対してシニア向け分譲マンションは、購入者の資産として活用できるというメリットがあるのです。
(2) 他の入居者との交流の機会が多い
シニア向け分譲マンションには共有設備が多く、そこで入居者同士の交流が生まれる可能性が高いです。
同じ高齢者と趣味を楽しむことができ、孤独感も軽減されます。
(3) サービスが充実していることが多い
サ高住のように法律に基づく基準はありませんが、同業他社に負けないようにサービスの充実に力を入れているマンションが多いです。
常駐する医療スタッフがいなくても、テナントにクリニックを入れているマンションもあるなど、医療面・生活面などでのサービスの充実化や差別化を図っています。
単に生活するだけでなく「老後を楽しむ」ことを重視している点も魅力で、マンション内で様々な娯楽を楽しむことができます。
3.シニア向け分譲マンションのデメリットと注意点
(1) 費用が高額
シニア向け分譲マンションは設備やサービスが充実していることもあり、かなりの高額です。購入するには数千万円から1億円程度かかると考えてください。
また、通常の分譲マンションのように修繕積立金や管理費が毎月かかります。
これに各種サービス料などが加算されるため、毎月10万円以上かかることも多いようです。
入居期間が長くなれば出費は膨大なものになるため、予め大量の資金を用意しておく必要があります。
(2) 健康状態の悪化によって入居不可になる可能性
基本的に、シニア向け分譲マンションに入居できるのは「自立して生活できる状態の人」です。
軽度の介護で十分な場合は居住を継続できる可能性がありますが、本格的な介護サービスには対応していないマンションが多いです。
健康状態次第では、老人ホームなどに入居することも考えなければなりません。
購入する前に自分の健康寿命がどれくらいなのかを見極める必要が出てきます。
(3) 将来的な資産の処分問題
シニア向け分譲マンションには共有スペースが多く、他の入居者と交流する機会が多いです。
お互いに仲良く出来ていれば問題ありませんが、人間関係のトラブルが発生するなどで引っ越しを考える事態に陥る危険性もゼロではありません。
しかし、分譲マンションは賃貸物件ほど気軽に引っ越しできません。
マンションを売却したお金で他の物件に引っ越すことはできますが、想定より安値でしか売れないこともあるでしょう。そもそも買い手が見つかる保証もありません。
「シニア向け分譲マンションを賃貸に出して自分は賃貸収入で暮らそう」と思っても、借り手が見つからない可能性があります。
また、例えば(2)のような理由で入居者が老人ホームに入ってしまうと宝の持ち腐れとなり、維持費や税金だけがかかってしまいます。
さらに、入居者の死後は相続人にマンションの扱いを委ねることになります。
ここでも「売れない」「借り手が見つからない」という事態に陥るかもしれません。
マンションという資産を持つことは大きなメリットですが、一歩間違えればデメリットに転じる可能性があるのです。
4.シニア向け分譲マンションは購入前に熟慮を
設備やサービスが充実しているシニア向け分譲マンションですが、購入費と維持費が非常に高額です。
シニア層の中でも自立して生活できる人でないと居住できないため、本格的な介護サービスを求める人には向いていないでしょう。
また、賃貸物件と違って不動産を所有できるのはメリットかもしれませんが、これがデメリットになる部分もあります。
購入前に自分の資金・健康状態・いざというときのマンションの処分方法などをよく考えてから、実際の行動に移すことをお勧めします。