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不動産売買

不動産仲介業者が法的責任を負う場合とは?

不動産仲介業者は、不動産取引に関する重要な契約に携わるという業務の性質上、売主や買主(特に買主)から法的責任を追及される場面も発生します。

不動産仲介業者が売主・買主から法的責任を追及された場合、弁護士に相談して、法律上の根拠の有無を確認・検討したうえで対応方針を決める必要があります。

この記事では、不動産仲介業者が負う法的責任の根拠となる法律、法的責任の内容、および売主・買主から責任追及された場合の対処法などについて解説します。

1.不動産仲介業者の法的責任に関する法律

不動産仲介業者の法的責任は、主に「宅地建物取引業法」と「民法」のいずれかを根拠としています。

(1) 宅地建物取引業法

宅地建物取引業法は、宅地・建物の売買や、その仲介(媒介)などを業として行う不動産業者を規制する法律です。

宅地・建物に関する取引には、一般消費者が当事者として参加するケースが多いのが特徴です(例:不動産業者が個人に対して、中古分譲マンションを販売する場合)。

この場合、一般消費者は情報・経験などの観点から相手方に劣るため、取引上搾取されやすい点が問題になります。

そのため、宅地・建物の取引に関与する不動産業者については、その業務を適正化するように、法律で規制しなければなりません。

そこで、宅地・建物の売買・交換、または売買・交換・賃借の代理・媒介を業として行うことを「宅地建物取引業」として免許制とし(宅地建物取引業法3条1項)、宅地建物取引業者には各種の行為規制が設けられています。

(2) 民法

不動産仲介業者は、売主と買主の間に立ち、売買取引を成立させるためにさまざまな業務を行います。

このような業務を行う不動産仲介業者と、売主・買主の関係性は、媒介契約の内容にもよりますが、民法上の「委任」(民法643条)または「準委任」(民法656条)であると解されるケースが多いです。
(ただし、これらに分類されない「無名契約」と解釈するケースもあります。)

  • 委任:当事者の一方(売主・買主)が、相手方(不動産仲介業者)に対して、法律行為をすることを委託する契約
  • 準委任:当事者の一方(売主・買主)が、相手方(不動産仲介業者)に対して、法律行為でない事務を委託する契約

委任・準委任の受任者には、契約の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務があります(民法644条、善管注意義務)。

したがって不動産仲介業者も、委任・準委任の受任者として、売主・買主に対して善管注意義務を負うことになるのです。

また不動産仲介業者は、後述するように、媒介契約を締結していない取引の相手方に対しても、民法上の信義則(民法1条2項)に基づく法的責任を負う場合があると解されています(最高裁昭和36年5月26日判決)。

2.不動産仲介業者が負う可能性のある主な法的責任

不動産仲介業者が宅地・建物の売買を媒介するに当たり、売主・買主に対して負担する可能性のある主な法的責任は、以下のとおりです。

(1) 重要事項の説明義務違反

宅地建物取引業法35条1項では、宅地建物取引業者に、買主に対する重要事項を記載した書面を交付したうえでの説明義務を課しています。

売買契約上の重要な条項や、物件の状態などに関する事項は、それぞれ重要事項説明義務の対象とされています。

これらの事項について、不動産仲介業者が買主への説明を怠った場合、買主から説明義務違反に基づく損害賠償請求などを受ける可能性があります。

[参考記事] 宅建業者の重要事項説明について

(2) 仲介業務の一環としての調査義務違反

不動産仲介業者は、特に買主との関係で、仲介業務の一環として売買に関する事項の一般的な調査義務を負っていると解されます。

  • 売主が有する権利の内容
  • 売主側の契約締結権限の確認
  • 物件に関する利用制限
  • 売買時点での周辺地域の再開発計画の有無

など、売買契約を締結するうえで必要となる最低限の条件や、物件の価値や利用方法などに影響を及ぼす情報については、不動産仲介業者が合理的な範囲内で調査を尽くす義務を負うと考えられます。

不動産仲介業者がこのような一般的な調査義務を怠った結果、買主が何らかの不測の損害を被った場合、買主から損害賠償を請求されるおそれがあります。

(3) 取引の相手方に対する信義則上の注意義務違反

不動産仲介業者は、媒介契約を締結していない取引当事者についても、信義則上の一般的注意義務を負うものと解されています。
(例:不動産仲介業者が、売主のみと媒介契約を締結し、買主との間で売買に関するやり取りを行う場合)

最高裁昭和36年5月26日判決の事案では、不動産仲介業者が、媒介契約を締結していない買主に対して、土地の権利を持たない者を過失により真の地主として紹介し、結果的に売買契約が締結されました。

最高裁は、上記の点に関して以下のように判示し、民法上の信義則(民法1条2項)を根拠として、不動産仲介業者の買主に対する注意義務違反を認めました。

「原判決は、……不動産仲介業者は、直接の委託関係はなくても、これら業者の介入に信頼して取引をなすに至った第三者一般に対しても、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があるとしているのであって、右判断は正当である」

上記の最高裁判決を踏まえると、不動産仲介業者は、売主と媒介契約を締結するに当たって、売主の不動産に関する権利の有無・内容を登記簿等で確実に確認することが大切です。

もし不動産仲介業者が確認を怠り、買主に対して虚偽の情報を伝えてしまうと、買主から信義則に基づく注意義務違反を追及されるおそれがあるので注意しましょう。

3.不動産仲介業者が法的責任を問われた場合の対処法

不動産取引の性質上、当事者から取引に関する不満が生じるケースはどうしても発生します。
その際、当事者が不動産仲介業者の責任を追及したいと思う心理は、(実際の法的責任の有無は別として)一応理解できるところです。

もし不動産仲介業者が、不動産取引の当事者から法的責任を問われた場合、以下の要領で適切に対応してください。

(1) 速やかに弁護士へ相談する

取引当事者からの損害賠償請求等に適切に対応するには、十分な法的検討が不可欠です。

そのためには、まず速やかに弁護士へ相談し、検討すべきポイントや手続きの見通しなどについてアドバイスを求めましょう。

弁護士に相談すれば、相手方の言い分の合理性をきちんと検証し、適切な対応方針を見定めることができます。

(2) 相手方の主張の法的根拠を検討する

法的責任を追及された不動産仲介業者としては、相手方の言い分に法的根拠があれば、請求に応じることを検討しなければなりません。

その一方で、相手方の言い分に法的根拠がないならば、不当な請求として争う必要があります。

たとえば損害賠償請求の場合、どちらの方針をとるべきかについては、以下の点に関する検討を行い、相手方の請求に法的根拠があるかどうかを判断したうえで決定しましょう。

① 相手方はどのような法的根拠に基づいて請求を行っているのか
② ①の法的根拠に基づき、損害賠償請求権が発生するための要件を満たしているか
③ 消滅時効など、損害賠償請求権を消滅させ、または制限を加える事由が発生していないか

これらの点について、網羅的な法的検討を行うためには、弁護士に相談することが有効です。

(3) 適切な落としどころ(和解ライン)を探る

不動産仲介業者が損害賠償請求等を受けた場合、相手方と徹底的に争うのも一つの選択肢ですが、適切な落としどころを見つけて和解することにもメリットがあります。

和解が成立すれば、紛争が早期に解決するため、紛争対応にかかる時間と費用を大きく節約できるからです。

相手方の主張が正当であると考えられる場合、仮に訴訟になったら敗訴を覚悟する必要がありますので、ある程度以上の金額を支払うことを前提とした和解を目指すことになるでしょう。

逆に、相手方の主張に理由がないと思われる場合でも、相手方に矛を収めてもらうメリットが大きいと判断すれば、少々の和解金の支払いを提案することも考えられます。

和解ラインについては、紛争解決の見通しやコストなどを比較したうえでの、ビジネス上の判断事項となります。

その前提として、弁護士に法的リスクの有無や程度を精査してもらうことで、適切なビジネスジャッジを下すための十分な判断材料を得ることができます。

4.まとめ

不動産という価値の高い資産の取引を取り扱う以上、不動産仲介業者が損害賠償請求などの紛争に巻き込まれることは珍しくありません。

もし不動産仲介業者が損害賠償請求などを受けた場合には、法的リスクを分析したうえで、ビジネス上の利害得失を考慮しながら対応方針を決定する必要があります。

弁護士にご相談いただければ、ビジネス上の判断の前提となる法的リスクの分析を行うほか、相手方との交渉・訴訟手続きをすべてお任せいただけます。

損害賠償請求などの法的紛争に巻き込まれてしまった不動産仲介業者の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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