アパートに反社会的勢力(暴力団員等)が入居している場合の対処法
所有しているアパートに暴力団員などの反社会的勢力が入居している場合、他の入居者に不安を与えてしまったり、抗争などの現場となってしまったりと、多くのトラブルのリスクを抱えることになってしまいます。
オーナーとしては、できる限り反社会的勢力を遠ざけるための対策を打っておきたいところです。
この記事では、所有アパートに反社会的勢力が入居している場合の対処法について、法令・契約の観点から解説します。
1.反社会的勢力とは?
反社会的勢力とは、法務省が公表している指針において、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています。
【参考】企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について|法務省
典型的には、暴力団・暴力団関係企業などが「反社会的勢力」に該当します。
さらに、こうした「属性」の観点に加えて、暴力的な要求行為・法的な責任を超えた不当な要求などの反社会的な「行為」をする主体についても、反社会的勢力と捉えるべきと考えられます。
2.反社会的勢力を理由に賃貸借契約を解除できる?
入居者が反社会的勢力に該当することが後から判明した場合、オーナーは賃貸借契約を解除できる場合があります。
オーナーが反社会的勢力との賃貸借契約を解除する主な方法は、以下のとおりです。
(1) 暴排条項を根拠に賃貸借契約を解除する
賃貸借契約に「暴排条項(暴力団排除条項)」が規定されている場合、暴排条項違反を理由として賃貸借契約を解除できます。
暴排条項とは、契約当事者が反社会的勢力に該当しないことを相互に確約し、違反した場合には損害賠償や契約解除を認める内容の規定です。
入居者の中に反社会的勢力が存在することが判明した場合、まずは契約書の中に暴排条項があるかどうかを確認したうえで、契約の解除ができるかどうかを検討しましょう。
(2) 暴排条項以外の解除・解約事由がないか検討
暴排条項がない場合、単に入居者が反社会的勢力に該当するとの一事をもって賃貸借契約を解除することは困難です。
その場合、別の契約解除事由・解約事由が存在しないかを確認・検討しましょう。
たとえば、以下のような事情が存在すれば、賃貸借契約を債務不履行解除できる可能性があります。
- 物件の構内で他の暴力団関係者と揉め事を起こしている
- 居住用物件として賃貸しているのに、暴力団事務所として居室を使用している
- 単身用住居として賃貸しているのに、オーナーの許可を得ずに複数人で居室に住んでいる
- 賃料を数か月間滞納している
また、定期建物賃貸借の場合には、期間満了に伴いオーナー側からの契約更新拒絶が認められる可能性があるので、契約締結時にやり取りした書面などを確認してみましょう。
3.賃貸物件に反社会的勢力が入居しないようにする予防策
賃貸物件に反社会的勢力が入居すると、対応が完了するまでは物件構内の治安が悪くなってしまうおそれがあります。
そのため、できる限り入居前の段階で、反社会的勢力をスクリーニングして排除することが大切です。
また、万が一反社会的勢力が入居してしまった場合に備えて、契約書類の観点からも万全の対策を施しておきましょう。
(1) 賃貸借契約に暴排条項を規定する
賃貸借契約の中に暴排条項が規定されていないと、暴力団などから「反社チェックが甘いオーナー」と判断され、結果的に暴力団員の巣窟になってしまうおそれさえあります。
暴力団員などに対して入居への心理的なハードルを作るため、および万が一入居者が反社会的勢力に該当することがわかった場合の対策として用いるためにも、暴排条項は必ず賃貸借契約の中に規定しておきましょう。
不動産賃貸借契約書における暴排条項の条文例は、警察庁のホームページで公表されているので、参考にしてください。
【参考】不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項・解説書 賃貸契約条項例|警察庁
(2) 入居者から反社非該当の誓約書を差し入れてもらう
暴排条項に加えて、反社会的勢力に該当しない旨の誓約書の差し入れを入居者に要求すると、反社チェックへの意識の高さを入居者に伝えることができます。
誓約書の規定内容としては、賃貸借契約書の暴排条項と重複する部分も多いですが、暴力団員等にとっては、誓約書の存在によって入居のハードルがさらに上がることになるでしょう。
(3) 外部専門業者に反社チェックを依頼する
反社チェックを専門的に取り扱う外部専門業者に対して、入居者の反社チェックを依頼することも有効です。
外部専門業者は、独自に反社会的勢力のデータベースを活用して、入居者が反社会的勢力に該当しないかどうかを調査してくれます。
ただし、賃貸借契約を締結していない段階で、費用をかけて反社チェックを行うことは、オーナーにとってあまり現実的ではないかもしれません。
その場合は、反社チェックを重点的に行っている管理会社に管理業務を委託し、反社チェックを一任するとよいでしょう。
4.入居者が反社会的勢力と判明した場合は弁護士に相談を
入居者が反社会的勢力に該当すると判明した場合、後にトラブルへと発展してしまうことを防ぐため、速やかに弁護士に相談することをお勧めいたします。
反社会的勢力に関して、弁護士は主に以下の各点につき対応し、依頼者がトラブルに巻き込まれる可能性を最小限に抑えられます。
(1) 依頼者を代理しての契約解除通知など
賃貸借契約上の暴排条項により、契約解除が認められる場面であったとしても、オーナーがご自身で反社会的勢力と連絡をとるのは恐ろしいと感じる場合も多いかと思います。
弁護士にご依頼いただければ、反社会的勢力とのやり取りもすべて弁護士が代行いたします。
オーナーである依頼者にご負担をかけることなく、スムーズに契約解除・明渡しを実現できるように努めますので、ご安心ください。
(2) 物件の明渡請求訴訟・強制執行
入居者側が物件の明渡しを拒否した場合、訴訟・強制執行の手続きを通じて、強制的に明渡しを実現する必要があります。
まず訴訟では、入居者が反社会的勢力に該当する事実などを、証拠によって立証しなければなりません。
弁護士にご依頼いただければ、ご状況に応じて利用可能な証拠を漏れなく収集したうえで、訴訟で依頼者の主張が認められるよう、戦略的に主張構成を組み立てます。
また、訴訟で判決が確定した後、なお入居者が明渡しを拒否する場合には、強制執行の手続きをとらなければなりません。
弁護士は、訴訟から強制執行の手続きに至るまで、ワンストップで明渡しの実現をサポートいたしますので、安心してご依頼いただけます。
(3) 賃貸借契約の内容見直し
賃貸借契約の中に暴排条項が規定されていない場合には、今後反社会的勢力に関係するトラブルに巻き込まれることを防ぐため、改めて暴排条項を規定しておくことをお勧めいたします。
弁護士にご依頼いただければ、今後新たに締結する賃貸借契約書のひな形作成や、既存の賃貸借契約に係る対応などを含めて、反社会的勢力排除のために効果的な予防策をアドバイスいたします。
現状ご利用されている賃貸借契約書の内容にご不安がある方も、お気軽に弁護士までご相談ください。
5.まとめ
所有アパート・マンションに、反社会的勢力が出入りしている疑いがある場合には、深刻なトラブルが発生することを防ぐため、早めに法的な対応をとることが大切です。
反社会的勢力への対応にお悩みの方は、弁護士までご相談ください。