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入居者トラブル

賃借人の自殺で事故物件|遺族に損害賠償等の請求はできる?

アパートなどの賃貸物件で、賃借人が自殺・事故死、あるいは孤独死してしまう可能性は0ではありません。
そのようなことが起きた場合には、部屋の原状回復の費用やその後の損害が生じます。

この場合、アパートのオーナーは、誰に、どのような請求ができるのでしょうか。
また、部屋に残留した物は処分できるのか、遺族(相続人)がいない場合にはどうなるのかなども気になるかと思います。

この記事では、賃貸物件で賃借人が死亡した場合にまつわる法律の問題について解説していきます。

1.借主が死亡した場合の賃貸借契約

賃貸借契約は、賃借人である借主の死亡によっては終了しません。
借主が死亡した場合には、民法第896条により、借主の相続人に賃貸借契約における借主たる地位が引き継がれることとなります。

よって、借主が死亡した場合、アパートに関する原状回復と損害賠償についてはその相続人に承継されることとなります。
すなわち、アパートのオーナーは、生じた損害の賠償請求を相続人にすることとなるのです。

また、借主の連帯保証人にも、賃貸物件に生じた損害の賠償をすることができます。

2.家賃・損害賠償・原状回復費用の請求

(1) 損害賠償請求の内容

借主が死亡し、家賃の支払いの滞納がある場合には、滞納分の家賃と支払いが遅延したことについて遅延損害金の賠償請求をすることができます(民法第415条第1項)。

また、自殺の場合にはその賃貸物件は事故物件として扱われることとなり、その後入居者が入りづらくなったり、入居者が入ったとしても通常の賃料よりも格安にすることを余儀なくされたりすることとなります。

その結果、賃貸物件のオーナーとしては、本来得られたはずの適正な賃料が得られないために損害を被ることとなります。

次に見るように、このような損害についても賠償請求ができるかが過去に争われ、認められています。

<東京地方裁判所平成22年9月2日判決>

【事案】
賃貸人が、賃借人に貸渡した賃貸物件を、賃借人が無断でさらに転借人に貸し渡し、その無断転借人が物件浴室内で自殺したため、賃貸人が賃借人に対し、未払い賃料、第三者に賃貸し得ないことによる賃料相当額、又は賃貸できたとしても、本来の適正賃料と実際に設定された賃料額との差額相当額などの損害賠償請求をした事件。

【裁判所の判断】
「賃借人又は賃借人が転貸等により居住された第三者が目的物である建物内において自殺をすれば、通常人であれば当該物件の利用につき心理的な嫌悪感ないし嫌忌感を生じること、このため、かかる事情が知られれば、当該物件につき賃借人となる者が一定期間現れず、また、そのような者が現れたとしても、本来設定し得たであろう賃料額より相当低額でなければ賃貸できないことは、経験則上明らかといってよい。」
「本件物件を第三者に賃貸し得ないことによる賃料相当額、及び賃貸し得たとしても、本来であれば設定し得たであろう賃料額と実際に設定された賃料額との差額相当額も、逸失利益として、賃借人の債務不履行と相当因果関係のある損害ということができる。」

裁判所は、経験則上から、自殺した物件については第三者やその後に借りる者は心理的な嫌悪感が生じることがあるので、借主が見つからない間の損失や借り手が現れたとしても相場の価格よりも低価で貸し渡さなければならないため、その相場との差額が損害として評価できることとなり、相手方に請求できることとしました。

なお、これまでの判例の傾向では、自殺事故から1年分の賃料の全額、その後2年分の賃料の半額が損害として認められることが多いように思われます。

また、マンションなど集合住宅の共有部分において自殺が発生した場合でも、損害賠償が認められるとされた判例があります(東京地方裁判所平成26年5月13日判決)。

【賃借人が病死・孤独死した場合】
病死や孤独死は、自殺と同様に借家で賃借人が死亡したということに変わりはありません。もっとも、これらの死の原因は、人が死に至るという賃借人にとって何らの対応などができない事由によるものであり、自殺のように死の結果を自ら発生させたこととはことなります。
この点を考慮して、孤独死の場合は、賃借人に責任を負わせることができない可能性が高いと考えられます。なぜならば、損害賠償請求は、賃借人に責めに帰することができない場合には認められないためです(民法第415条第1項但し書き)。
【参考】アパートの入居者が居室で病死した場合、損害賠償を請求できる?

(2) 原状回復とは

賃貸借契約は、終了後に賃貸物件を原状回復して賃貸人に返還する義務を負います(民法第621条)。

借主が自殺し、室内を汚損するなどした場合には汚損部分を清掃するなどの費用がかかります。そのため、この清掃にかかる費用が損害として評価でき、この損害についてオーナーは相続人に請求することができます。

また、原状回復についても次の事例でみるようにその範囲が問題となります。

<東京地方裁判所平成22年12月6日判決>

【事案】
賃借人が浴槽内で自殺し、損害を被ったとして、賃貸人がその相続人にユニットバス交換費用、その他クロスの貼替費用、エアコンの交換費用などの原状回復請求をした事件。

【裁判所の判断】
「クリーニング費用及び内装造作取替費用について見積書の内容をみるに、本件自殺が行われた浴室以外の部屋に係る補償費用やエアコンの交換に係る費用が含まれており、それらは本件自殺とは無関係のものであり、また、クロスの貼替費用などは通常損耗によるものと考えられるから、損害と認めることはできない。そうすると、本件自殺と関係が認められるのは、本件自殺が行われたユニットバスの交換費用のみである。」

この裁判例をみると、自殺した浴槽内に関するユニットバスの交換費用についてのみ、原状回復を認めています。
すなわち、自殺による原状回復の範囲は、自殺と関係する範囲に限られると考えられます。

[参考記事] 退去時の原状回復義務とは?

3.賃貸物件の残留物の処分

原則として、残留物の所有権は賃借人のものであり、賃借人が死亡した場合には、その残留物の所有権は相続人に承継されます。

そのため、残留物を無断で処分した場合には残留物の所有権を侵害したとして、損害賠償請求をされるおそれがあります。

しかし、「賃貸借契約の終了時に賃貸人が残留物を処分できる」との特約をしていた場合は、(賃借人が死亡し、その相続人との間で賃貸借契約を終了させるとの合意が成立したのであれば)オーナーは残留物を処分することができます。

また、相続人に対し、残留物の処分をお願いするか、残留物を処分することについて同意を得ることをすれば、残留物を処分することができます。

この場合、後に争いにならないよう、相続人が同意したことを証明するための同意書などを書面にして用意しておくことが無難でしょう。

4.相続人に関する問題

(1) 相続人が複数人いる場合

相続人が複数人いる場合には、判例で借主の相続人の借家のオーナーへの損害賠償請求の債務は「不可分債務」となるとされています。

不可分債務とは、仮に相続分の等しい相続人が3人いる場合は、相続分が3分の1であるからといって、「オーナーから損害賠償の請求を受けた場合は3分の1しか支払わない」という主張をすることができないものです。相続人は全部の債務の支払いをしなければなりません。

そのため、オーナーとしては、損害賠償の請求は、相続人の1人にすれば足るということになります。

もっとも、賃貸借契約を解除によって終了する場合には、民法第544条第1項により、相続人全員に対してのみすることができます。そのため、オーナーは相続人全員に対して解除を主張しなければなりません。

したがって、既に解説したとおり、残留物を処分する場面で賃貸借契約を終了させる合意についても合意解除となるため、オーナーとしては相続人全員に対して同意書をもらう必要があります。

(2) 相続人が相続放棄した場合

相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかった者とされます(民法第939条)。
そのため、借家のオーナーは、相続の放棄をした者に対しては、賃貸物件に関する損害賠償請求をすることはできません

なお、相続の放棄は、3か月以内にしなければなりません(民法第915条第1項)。

(3) 相続人がいない場合

相続人がいない場合には、相続財産管理人に対して損害賠償請求の訴えをすることが考えられます。
もっとも、この場合には裁判費用などがかかり、費用を回収できないおそれがあります。

また、既に解説したように相続人以外にも賃貸借契約の連帯保証人に対しても損害賠償請求や原状回復請求ができますので、借家のオーナーとしては、連帯保証人を相手にこれらの請求をする方が費用を回収できることもあるかと思われます。

5.まとめ

以上のように、賃借人が自殺で死亡した場合に生じた原状回復請求及びその他損害賠償請求については、賃借人の相続人や連帯保証人に請求することになります。

しかし、相続放棄をした者に対しては、原状回復請求や損害賠償請求をすることができません。

賃借人が死亡した場合には、法律関係が複雑となります。
お困りのオーナーの方、賃貸人の方は、不動産問題に強い弁護士に一度ご相談されることをお勧めします。

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