不動産を相続した場合における登記手続き

1.登記の必要性

相続によって得た不動産の所有権自体は、登記しなくてもご自身のものですが、登記しなければ対外的には所有権が誰にあるか不明確ですし、次の相続が発生した際には権利関係が分かりにくく、混乱を招くことになってしまいます。

また、相続によって得た権利(ここでは不動産の所有権等)のうち、法定相続分を超える部分については、対抗要件を備えなければ第三者に対抗(主張)できないとされています(民法899条の2第1項)。
この対抗要件というのが、不動産では「登記」です。

したがって、例えば遺産分割をして不動産を単独で相続することが決まったとしても、その登記をする前に他の相続人が第三者に不動産の権利を譲渡してしまうと、その第三者に対して自分の法定相続分を超える部分について取得したことを主張できず、その第三者が先に所有権移転登記をしてしまった場合にその不動産は第三者との共有になってしまいます。

登記手続きが億劫で放置される方もいますが、ご自身の権利を守るためにも必ず行うようにしましょう。

2.登記時における具体的な方法

不動産登記法では、不動産の権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則となっています(不動産登記法60条)。しかし、相続の場合は、登記義務者である被相続人が存在しないため、登記権利者である相続人が単独で申請できることになっています(不登法63条2項)。

また、相続人が複数存在する場合、本来は相続人全員での申請が原則ですが、相続人全員を登記権利者として法定相続分による共有として表示する場合には、保存行為(民法252条ただし書)として、相続人の一人が単独で登記申請をすることができます。

遺産分割後に登記をする場合、遺産分割により不動産を取得した相続人は単独で登記申請することができるとされています(この場合の登記原因は「相続」となります)。

これに対し、法定相続分による共有登記をした後に遺産分割がなされた場合には、遺産分割により共有持分を取得するものとこれにより共有持分を失う他の相続人の共同申請が必要であるとされています(この場合の登記原因は「遺産分割」となります。)。

3.「相続させる」旨の遺言と登記

「相続させる」という内容の遺言は、特段の事情のない限り遺産分割方法の指定であり、これと異なる遺産分割協議や審判はなしえないし、その権利承継の効果は遺言の効力発生と同時に生じると判示されています(最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁)。

そのため、不動産が被相続人名義である場合には、登記実務上、遺言を原因証書として「相続させる」旨の遺言により相続した相続人が単独で登記申請をすることができるとされています。

なお、民法改正により、相続させる旨の遺言のうち、特定の財産を指定するものは「特定財産承継遺言」と呼ばれるようになりましたが、この場合も単独登記できる点は変わりません。

4.「数次相続」と登記

不動産の登記名義人の死亡により相続が開始したにもかかわらず、その旨の登記がなされないうちに、相続人についてさらに相続が生じた場合、実務上「数次相続」といいます。

この点について、中間相続が単独相続の場合であれば、中間の相続登記を省略して直接現在の所有者名義に登記することができるとされています。例えば、祖父が亡くなった際、相続人が母一人のみであった場合などを指します。

これに対し、中間の相続が共同相続の場合には、中間の相続について共同相続の相続登記をしたうえで、被相続人の共有持分について、さらに相続登記をすることになります。

5.相続登記と第三者

共同相続人の一人が、遺産である不動産について事実とは異なる登記をしたうえでこれを第三者に処分した場合、他の相続人はその持分(法定相続分)については登記をしなくても第三者に対抗することができます(最判昭和38年2月22日民集17巻1号235頁、民法899条の2第1項参照)。

逆に言えば、法定相続分を超える部分については、登記をしなければ第三者に対抗出来ません。例えば、遺言で「長男に遺産の全てを相続させる」と指定されたとしても、他の共同相続人が不動産を第三者に売却してしまった場合、全てを相続させると指定された長男は、不動産の相続登記をしなければ、法定相続分を超える部分についてその第三者に対抗できません(民法899条の2第1項)。

登記しなければ、本来得られるはずの遺産を失うことがあるということです。

6.相続放棄と登記

共同相続人の1人が相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人は初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。この点について、相続放棄は相続人の利益を保護しようとするものであって、その効果は相続放棄時に遡り、かつその効果は絶対的であることから、相続放棄による権利取得は登記なくして第三者に対抗することができます(最判昭和42年1月20日民集21巻1号16頁)。相続放棄があった場合、他の相続人は相続放棄申述受理証明書を添付して、「相続」を登記原因とする被相続人からの移転登記手続きをすることができます。

7.遺産分割と登記

遺産分割の効力は相続開始時に遡るとされていますが(民法909条本文)、その効力は第三者の権利を害することができないとされています(同条ただし書)。そのため、遺産分割により法定相続分と異なる権利を取得した相続人は、登記を経なければその権利取得を第三者に対抗することができません(最判昭和46年1月26日民集25巻1号90頁)。

8.遺贈と登記

遺贈の効果は、包括遺贈の場合は相続の場合と同様(民法990条)、相続開始と同時に権利移転の効果が生じるとされており、特定遺贈の場合も遺言者の死亡によりその効力が生じ、特定遺贈の目的とされた財産は何らの行為を要せずして受遺者に帰属します。

しかし、遺贈は、遺言によって行う財産の無償譲渡という性質を有するため、遺贈による権利取得を第三者に対抗するためには、登記を備えることが必要であると解されています(最判昭和39年3月6日民集18巻3号437頁、最判昭和46年11月16日民集25巻8号1182頁)。この場合、登記原因は「遺贈」となり、受遺者を登記権利者、遺言執行者または相続人を登記義務者とする共同申請が必要となります。

9.相続分の譲渡と登記

相続分の譲渡を受けた場合は、他の相続人との関係では対抗要件を具備しなくても主張することができます(東京高決昭和28年9月4日高民集6巻10号603頁)。しかし、第三者との関係では、相続分の譲渡による権利取得を主張するために登記が必要であると考えられます。そして、相続分の譲渡が相続人以外の者に対してなされた場合には、「相続」を原因として直接譲受人に相続登記することはできず、共同相続登記をしたうえで、「相続分の売買または贈与等」を登記原因とする持分移転登記をすることになります。

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