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入居者トラブル

退去した賃借人が粗大ごみを放置していた場合の対処法

賃貸借契約が終了し、賃借人が退去する際、粗大ごみを敷地内に放置していってしまうケースがあります。

この場合、賃貸人としては、そもそも粗大ごみを処分して良いのかどうか、対応に迷ってしまうかもしれません。
また、処分するにしても費用がかかるため、可能であれば賃借人にその費用を請求したいところです。

今回は、賃貸物件から退去した賃借人が、敷地内に粗大ごみを放置していった場合の対処法や予防策などについて解説します。

1.粗大ごみの定義・処理手数料

粗大ごみの定義は、自治体によって異なります。

たとえば東京都新宿区では、以下のように粗大ごみが定義されています。

「日常生活に伴って生じた大型ごみで、一辺の長さがおおむね30cmを超える家具、寝具、電気製品(家電リサイクル品以外)、自転車などが対象です。」
引用:粗大ごみの出し方|新宿区

粗大ごみには、品目ごとに処理手数料が設定されています。
東京都新宿区の場合、粗大ごみ1つ当たりの最低額は400円、最高額は2,800円です。

参考:粗大ごみの処理手数料一覧|新宿区

なお、家電リサイクル法等によってリサイクルが義務付けられている以下の品目については、粗大ごみとしてではなく、リサイクル品として処分する必要があります。

  • エアコン
  • テレビ
  • 冷蔵庫、冷凍庫
  • 洗濯機、衣類乾燥機
  • パソコン

2.放置された粗大ごみの処分

退去した賃借人が敷地内に粗大ごみと思われる物を放置していった場合、賃貸人としては邪魔になりますので、すぐにでも撤去したいところでしょう。

しかし、粗大ごみとはいえもともと賃借人の所有物であった粗大ごみを処分することになりますので、法的に処分が認められる場合かどうかを確認する必要があります。

(1) 一見して無価値物の場合は処分して良い

粗大ごみが一見して無価値の場合には、賃借人は粗大ごみの所有権を放棄した可能性が極めて高いです。

たとえば、一見して明らかに故障していると分かる家電やごみ袋に入れらているようなものです。

仮に紛争になった場合にも、無価値物については所有権の放棄が認定される可能性が高いため、賃貸人の判断で処分してしまってよいでしょう。
ただ、処分する場合でもどのような状況で放置されていたのか、写真に撮って証拠として残しておくと安心です。

(2) 粗大ごみに価値がありそうな場合は注意が必要

これに対して、粗大ごみに一定の価値が残っていそうな場合には、処分の際に注意を要します。

たとえば、家電・机・椅子のうち使えそうな物や、絵画類などが放置されていた場合、賃借人が後日回収に来る可能性があります。

その際、賃貸人がすでに粗大ごみを処分してしまっていると、賃借人の了解なく勝手に処分したとして、賃借人から損害賠償(民法709条)を請求されたり、器物損壊罪(刑法第261条)で告訴されたりするリスクがあるので要注意です。

これらの価値がありそうな粗大ごみを処分する際には、後述(3-(1))するように、賃借人に対して事前に撤去通知を行っておく方がよいでしょう。

なお、賃貸借契約書に退去時の残置物の処分に関する条項を設けたり、賃貸借契約終了に伴って賃借人が退去する際、残置物があれば賃貸人の判断で処分することに異議を述べない旨の誓約書を差し入れてもらうこともお勧めです。

<残置物処分についての誓約書文案>
賃借人が賃貸借室から退去する際、本物件の敷地内(居室を含みますが、これに限りません)に賃借人が物を残置した場合、賃借人は、当該物を賃貸人の判断によって処分することにつき、一切の異議を述べません。

【賃貸人は、放置された粗大ごみを処分する義務を負う?】
そもそも退去した賃借人が放置した粗大ごみを賃貸人が処分しなければならないとすれば、あまりにも理不尽に感じられることでしょう。
賃借人との関係では、原状回復は賃借人の義務ですので、当然ながら賃貸人に粗大ごみを処分する義務はありません。もちろん、粗大ごみを処分しなければ賃貸物件の利用が阻害されるおそれがありますので、実際には処分が必要になることでしょう。しかし、あくまでも法律上は、賃貸人に粗大ごみを撤去する義務はないのです。
ただし、共用部分に粗大ごみが放置されている場合、管理規約などとの関係上、他の入居者に対して賃貸人が撤去義務を負担する可能性があります。
この点は物件ごとに事情が異なりますので、関連する規約類をよく確認しましょう。

3.賃借人に粗大ごみを放置された場合の対処法

賃借人が粗大ごみを放置したまま退去してしまった場合、賃貸人としては、賃貸物件の利用に支障が生じないように、速やかに撤去する必要があります。

ただし、前述のように、賃借人の所有権との関係がありますので、以下の手順で対応するとよいでしょう。

(1) 賃借人に対して撤去を請求する

まずは賃借人に対して、期限を定めて粗大ごみの撤去を請求しましょう。

<撤去要請の文例>
貴殿は、賃貸借契約の終了に伴い、〇年〇月〇日付で本物件より退去しましたが、賃貸借室内に貴殿の所有物と思われる〇〇(以下「残置物」といいます)が残置されていました。
つきましては、△年△月△日(以下「引取期限」といいます)までに、賃貸人宛に連絡のうえ、残置物を引き取るよう請求いたします。
なお、貴殿が引取期限までに残置物を引き取らなかった場合には、残置物の所有権を放棄したものとみなし、賃貸人にて残置物を処分するとともに、処分費用を貴殿に対して請求いたします。

粗大ごみの引取期限を定め、それまでに引き取りがなかった場合には処分することを事前に通知する点がポイントです。

そうすれば、引取期限が経過したことによって、賃借人が粗大ごみの所有権を放棄したことが推認され、賃貸人が法的責任を問われるリスクが小さくなります。

引取期限は多少余裕をもって、1週間~2週間程度に設定するとよいでしょう。

なお、粗大ごみの撤去請求を行った事実とその内容を証拠化するため、内容証明郵便で撤去請求書を送付することをお勧めいたします。

(2) 賃貸人自ら撤去したうえで賃借人に費用を請求

賃貸物件の敷地内に放置された粗大ごみの処理は、本来であれば退去した賃借人の義務であったはずです。
それなのに、賃貸人が粗大ごみを処理せざるを得なくなった場合、処理にかかった費用は賃借人に対して請求できます。

処理費用の請求についても、請求の証拠を確実に残すため、内容証明郵便を送付して行うのがよいでしょう。

ただし、粗大ごみの処理費用が数百円~数万円程度に収まる場合、請求にかかる費用の方が高くなってしまうケースがあるので注意が必要です(費用倒れ)。

実際に処分費用の請求をするかどうかは、コストとリターンを総合的に考慮して決めましょう。

4.粗大ごみを放置されないようにする予防策

退去した賃借人に粗大ごみを放置されてしまうと、賃貸人としては余分な時間的・経済的コストを払うことになってしまいます。

賃借人による粗大ごみの放置を防ぐためには、以下の予防策を講じておくことが効果的です。

(1) 退去時に賃貸人が立ち会う

賃借人が賃貸物件から退去する際、賃貸人が立ち会って原状回復の状況を確認すれば、粗大ごみが放置されるリスクは減少するでしょう。

賃貸人自身が立ち会うことが難しければ、管理会社や親族などに立会いを依頼するのも一つの手段です。

(2) 敷地内に監視カメラ等を設置する

居室外の敷地に粗大ごみを不法投棄する賃借人が存在することも残念ながら事実です。

賃借人による不法投棄を防止するためには、敷地内に監視カメラを設置することが有効です。

監視カメラがあれば、賃借人に対して不法投棄をしないようにプレッシャーを与えることができます。
また、万が一不法投棄が行われた場合でも、監視カメラの映像を確認することで、行為者を特定して責任追及できる可能性が高いでしょう。

不法投棄が行われそうな場所に不法投棄禁止の張り紙を貼っておくことも、ある程度の心理的な抑止効果が見込まれます。

5.まとめ

退去した賃借人が放置していった粗大ごみについては、賃借人の所有権が放棄されていることを確認したうえで、賃貸人自ら処分するのがよいでしょう。
賃借人の退去時に、残置物処分に関する誓約書を差し入れてもらうと、粗大ごみなどが残っていてもスムーズに処分することができます。

不法投棄への対処などを含めて、賃貸物件の管理には、多くの法律上の留意点が存在します。
賃借人との間での法律トラブルについて予防・対処するためには、弁護士と顧問契約を締結することが有効です。

賃貸借契約にまつわるさまざまな法律上の問題について、状況に合わせた適切なアドバイスをご提供いたしますので、一度弁護士までご相談ください。

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