不動産を相続した場合における税金関係

(1) 基礎控除額

相続税は、相続において、遺産総額が基礎控除額を超える場合に発生します。
基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。
例えば、法定相続人が妻と子2人の計3人の場合、基礎控除は3,000万円+600万円×3=4,800万円ということになります。

(2) 課税における不動産の評価

相続財産に不動産が含まれる場合の評価基準は、地目別に①路線価方式、②倍率方式、③宅地比準方式のいずれかによって評価します。宅地、借地権については、①または②、農地、山林、原野、牧場、池沼、雑種地については、②または③で評価されます。

①路線価方式

路線価方式は、路線価が定められている地域の土地の評価方式であり、路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額のことです。路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状などに応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。

②倍率方式

倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方式です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。家屋の場合は倍率方式が使われており、固定資産税評価額に一定倍率(現行は1.0倍)を乗じて計算します。

③宅地比準方式

宅地比準方式は、市街地農地、市街地周辺農地などの土地の評価方式です。その土地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額から1㎡当たりの宅地造成費相当額として定められた金額を控除して、土地の面積を掛けることによって計算します。

不動産のうち、賃貸されている土地や家屋の場合は、権利関係に応じて評価額が調整されることになっています。また、相続した宅地などが住宅や事業用として使われている場合には、限度面積までの部分についてその評価額の一定割合を減額する相続税の特例があります。

(3) 借地権の評価方法

借地権を相続した場合は、借地権の目的となっている土地が更地であるとした場合の評価額に借地権割合をかけて求めます。この借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。
定期借地権の場合は、原則として、課税時期において借地人に帰属する経済的利益およびその存続期間を基として評定した価額によって評価します。

(4) 相続税の申告と申告期間

納付すべき税額が算出される相続人または受遺者(遺贈を受けた者)は、相続税の申告書を提出しなければなりません。(相続税法27条5項、施行令7条)。申告書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内であり(相続税法27条1項)、申告期限までに申告しない場合は、無申告税(原則として納付すべき税額の15%)、重加算税(同40%)が課されることがあります。納期限は、期限内申告にかかる相続税について、当該申告書の提出期限までとなっています(相続税法33条、国税通則法35条2項)。

(5) 相続税の延納制度

相続税は、納期限に一括して金銭にて納付することが原則ですが、現実には、それが困難であることもあります。そこで、①申告・更正または決定による税額が10万円を超えること、②納期限までに、または納付すべき日に金銭で納付することが困難であること、③担保を提供すること、④相続税の納期限または納付すべき日までに所定の「延納申請書」を提出することの要件を満たした上で税務署長の許可を得た場合、延納(年ごとの分割払い)をすることができます。担保として認められているのは、国債・地方債、社債その他の有価証券、土地、建物等で保険に付したもの、保証人の保証等です。

(6) 相続税の物納制度

納税は、金銭納付が原則ですが、例外的に物納をすることが認められています。物納が認められる要件は、①延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること、②物納申請財産は、納付すべき相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、下記の財産及び順位で、その所在が日本国内にあること、③物納にあてることができる財産が管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと、④物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出することです。

物納に充てられる財産と順位
第1順位 ①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)

②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

第2順位 ③非上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)

④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

第3順位 ⑤動産

管理処分不適格財産

不動産に担保権が設定されているもの、権利の帰属について争いがあるもの、境界が明らかでないもの、借地権の目的となっている土地で当該借地権を有する者が不明であることなどは、管理処分不適格財産とされ、物納できません。

(7) 遺贈によって遺産を取得した場合における相続税

遺言により相続人以外の者が不動産の遺贈を受けた場合、相続税は、遺贈により取得した財産に対しても課されます。その際、受遺者が、被相続人の一親等の親族や配偶者以外の方である場合には、原則としてその方が取得した財産に対応して算出された相続税額に2割に相当する金額を加算した額を持って納付すべき相続税額とされます。こうした相続税の負担のほか、受遺者には、不動産取得税、登記関係費用などの負担も考えられるため、場合によっては、受遺者の納税資金などのために金銭贈与も合わせて行うなど、遺贈に当たっては受遺者の負担への配慮が必要となります。

(8) 特別縁故者と相続税

相続人となるべきものが明らかでない場合、相続財産管理人の選任がなされ、相続財産の管理・清算、相続人の捜索などが行われます(民法951条以下)。そして、最終的に相続人が存在しないことが確定した場合には、その日から3か月以内に、特別縁故者の請求により、家庭裁判所の審判に基づき、特別縁故者に対して相続財産法人にかかる財産の全部または一部が分与されます(民法958条の3第1項)。財産の分与を受けた特別縁故者は、被相続人から遺贈により財産を取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります(相続税法4条)。

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