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入居者トラブルに関するよくある質問

Q

高齢で無職の賃借人が賃料の支払いを遅滞しています。 この賃借人には、収入のある息子さんがいるようなのですが、扶養義務者である息子さんに賃料の支払いを請求することはできませんか。 なお、息子さんは保証人や連帯保証人にはなっていません。

A
このケースでは、少なくとも法律上は息子さんに賃借人への扶養義務があることを理由に賃料を支払えとは請求できません。

自力では生活できない「要扶養者」は、一定の条件を満たした親族(扶養義務者)に対して、生活を維持するために必要な扶養料を請求できます(扶養請求権)。
要扶養者の子は、経済的に余裕があるときに扶養義務者になります。

今回問題となっている賃借人は、単に無職というだけでなく高齢でもあります。年金収入があるか不明ですし、あったとしても食費など家賃以外の生活費で底をついているかもしれません。賃借人は、要扶養者に当たる可能性が高いでしょう。
その場合、収入があるという息子さんに扶養義務が認められるほどの経済的余裕があれば、賃借人は扶養請求権に基づいて扶養料を支払うよう息子さんに請求できそうです。

ならば賃借人に賃料を請求できる賃貸人としては、その扶養請求権を利用して、扶養義務者である息子さんに賃料相当額を請求したいところですが、法律上、許されていません。

扶養請求権は、要扶養者の生活を守るために特別に認められているものであるため、扶養料を請求できるのは要扶養者に限られているからです(「一身専属権(民法881条)」)。
要扶養者の債権者であっても、扶養請求権への差し押さえや代位行使(請求権を本人の代わりに行使すること)は、認められていません。

なお、保証制度と扶養制度は全くの別物です。
賃借人の保証人等は、債権者である賃貸人へ直接に保証債務を負っています。それに対して、扶養義務は、扶養義務者が要扶養者に対して負う義務であり、しかも、上記のとおり、要扶養者以外は、扶養請求権に手を出せないのです。

もっとも、「事実上」、「任意で」息子さんに賃料を支払ってもらえる可能性はありますので、賃借人への明渡し請求の前に、息子さんにお願いしてみましょう。
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