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入居者トラブルに関するよくある質問

Q

建物明渡時の賃借人の原状回復義務とはどのようなものですか?

A
賃借人は、賃貸借契約が終了して物件を明け渡す際に、物件を原状に回復して賃貸人に返還する必要があります。これを賃借人の原状回復義務といいます。
賃借人の原状回復義務については、従前の民法では明文の規定がありませんでしたが、2020年4月から施行されている現行民法では、「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。」として明文化されました(民法261条本文)。
この条文からも分かるように、「原状回復」とは、賃借物件を完全に入居時の元通りの状態にすることではなく、賃借人の原状回復義務とは、あくまで通常の使用をした場合に生じた損耗や時の経過によって生じた劣化以外の損傷について、修繕する費用を賃借人に負担させるものです。
このように、賃借人は、原則として、通常損耗や経年劣化について、修繕したり、新しいものに交換したりする義務までは負っていません。なぜなら、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであるところ、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の損耗は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されており、賃貸人は通常それらの修繕等に要する費用も考慮して賃料額を定めているからです(最判平成17年12月16日参照)。
また、民法261条は、ただし書で、「その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」として、賃借人の故意・過失によらない損傷については、賃借人は原状回復義務を負わないとしています。
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