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不動産の重要知識

所有権移転仮登記とは?

不動産を売買するときや不動産を相続して登記を変更するときなどは、通常不動産登記簿を確認します。

不動産登記簿には様々な情報が記載されています。
もし登記簿に「所有権移転仮登記」と書かれている場合は要注意です。この文字が登記簿にあるだけで、その不動産の購入等は控えた方が無難でしょう。

この記事では、「所有権移転仮登記」について解説します。

1.仮登記をする目的

仮登記は「登記順位の保全」をするために行います。
登記順位とは、ここでは「先に登記したか、後に登記したか」という順番です。

例えば、売主Xが同一の不動産を買主Aにも買主Bにも売ったとします。
この場合、不動産の所有権を主張できるのは売買契約や物件の引き渡し、代金の支払いなどの順番ではありません。「先に所有権移転登記を完了させた人」が所有権を得ます。

しかし、買主が何らかの事情で登記ができない状態にあったとします。そういったときに行うのが「所有権移転仮登記」です

所有権移転仮登記とは、その名の通り「所有権が移転したことを仮に登記する」ものです。
これをすると、登記簿上では例えば以下のような状態になります。

令和1年:Aさんへの所有権移転仮登記
令和2年:Bさんへ所有権移転
↓ Aさんが本登記
令和1年:Aさんへの所有権移転
令和2年:Bさんへの所有権移転

すなわち、仮登記が本登記に変わったことで、Aさんが先に本登記したことになるのです。

同じ不動産に2人の所有権者がいることになりますが、登記順はAさんが先ということになるので、AさんはBさんに対して所有権を主張できます
こうなるとBさんへの所有権移転登記は登記官の職権によって抹消されるため、Aさんが単独で不動産の所有権を持っている状態の登記簿になります。

本登記と違い、仮登記はあくまで仮の登記であって、第三者への対抗力はありません。しかし「仮登記を本登記に変更すると登記の順番が変動する」のです。

自分が購入しようとした不動産に仮登記があると、入手後に仮登記が本登記に変更された場合に所有権を主張できなくなってしまいます。
そのため、余程の事情がない限りは、仮登記のある物件を手に入れることは控えた方が無難でしょう。

仮登記について・仮登記の申請方法などについては、以下のコラムで詳しく解説しています。

[参考記事] 仮登記とは?その効力・種類・費用などをわかりやすく解説

2.仮登記の抹消

とはいえ、仮登記のある不動産をたまたま手に入れてしまうことがあります。
代表的な例は相続です。相続した不動産の登記簿を確認して、仮登記に初めて気がつく人もいるようです。

仮登記のある不動産は、本登記されてしまうと所有権を手放さざるをえなくなってしまいます。また、売却しようにも買い手が見つかりづらいです。

そのため、仮登記を抹消する必要が出てきます。

(1) 仮登記を抹消する方法

仮登記を抹消するには、以下3パターンの手続きのいずれかを行います。

共同申請

原則的にこの方法が用いられます(不動産登記法60条)。
登記権利者(不動産の所有者など)と登記義務者(この場合は仮登記をした人)が共同で抹消登記を申請します。

抹消したい仮登記の権利証(登記済証もしくは登記識別情報)が必要です。

[参考記事] 登記済権利証・登記識別情報の違いとは?

仮登記名義人の単独申請

仮登記名義人が単独で抹消登記を申請する方式です(不動産登記法110条)。

やはり抹消したい仮登記の権利証が必要となります。

登記上の利害関係人による単独申請

不動産の所有者や後順位の抵当権者などが単独で申請する方法です。仮登記名義人の実印入りの承諾書と印鑑証明書が必要となります。

承諾書がない場合は、仮登記の抹消に関する裁判等を証明できる書類が必要です。

仮登記を抹消したいのに仮登記名義人が協力してくれない場合は、仮登記抹消登記請求訴訟を提起して勝訴判決を得れば、単独で仮登記の抹消登記を申請することができます。

(2) 仮登記と消滅時効

実は、仮登記には消滅時効という概念がありません。

しかし、売買の予約のために仮登記を使っていた場合は、「予約完結権」という債権に消滅時効が適用されます。

また、「農地法による許可が出たら売買して所有権を移転する」という場合は、農地法の許可を得るために売主と買主が協力して申請する必要があり、買主には売主が許可申請に協力するよう請求する権利があります。これを「許可申請協力請求権」と言います。

これらの権利は10年(2020年4月1日以降の契約なら5年)で消滅時効にかかり、仮登記は実体のないものになります。これに基づいて、不動産の所有者は仮登記名義人に対して仮登記の抹消に協力するよう請求できます。

3.仮登記の抹消や相談は専門家へ

仮登記が本登記に変わると登記の先後が変わり、仮登記後に所有権の移転を受けた人は対抗力を失ってしまいます。そのため、仮登記のある不動産には注意が必要です。

仮登記の抹消をしたい人は、司法書士などの専門家にお問い合わせください。

また、弁護士も不動産登記の知識を備えております。法律の知識を駆使して、ご依頼者様の不動産を守れるよう全力を尽くしますので、不動産についてお悩みの方は弁護士へのご相談もご検討ください。

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