賃貸保証会社(家賃保証会社)の役割と仕組み
賃貸物件を借りる際に「賃貸保証会社(家賃保証会社)」との契約が必要になることがあります。
賃貸保証会社と契約しても、「契約しなければいけないから仕方なく契約した」「実は賃貸保証会社のことはよくわからない」という人は多いかもしれません。
ここでは、賃貸保証会社の役割や仕組み、家賃を滞納した場合はどうなるのかなどを紹介していきます。
賃貸保証会社と契約する前の人や、既に契約中の人はぜひお読みください。
1.賃貸保証会社について
(1) 賃貸保証会社とは?
賃貸保証会社(家賃保証会社。以下、保証会社)は、賃借人が家賃を滞納したときに、賃借人に代わって家賃を立て替え払いしてくれる会社です。
保証会社によっては、滞納家賃だけでなく更新料や原状回復費用、各種違約金等の立て替え払いサービスも行っています。
賃借人が家賃を滞納しても賃貸保証会社が賃貸人に立て替え払いをするため、賃貸人は家賃を取りっぱぐれずに済み、安心して賃貸経営を続けられます。そのため、保証会社との契約を必須としている賃貸人は多いです。
とは言え、あくまでも立て替え払いなので、賃借人は立て替えてもらった金額を、後で保証会社に支払わなければなりません。
もし賃借人が支払わない場合、当然ながら保証会社は支払いの督促を行います。
(2) 賃貸保証会社の仕組み
賃借人が保証会社と契約すると、家賃や共益費に加えて「保証料」などの名目で保証会社へお金を払うことになります。
保証料は年間で家賃0.5~1ヶ月分のことが多いようです。一括払いのこともあれば毎月少額ずつ支払うケースもあります。
1~2年で契約を更新する必要がある場合も多く、更新の際には別途更新料がかかります。更新料は1万円程度のこともあれば、家賃の1~3割など様々です。
保証料や更新料は、敷金などと違い返ってくることはありません。
(3) 保証会社との契約は必須?
「保証会社の取り立ては怖そう」「保証料がかかるなら契約したくない」
こういった理由で保証会社との契約に消極的な人もいるでしょう。
しかし、結論としては「保証会社との契約が必須な物件の場合、契約は必要」ですし、「保証会社との契約を強制されても違法ではない」です。
(※「連帯保証人になってくれる人がいるから保証会社との契約は控えたい」などと交渉する余地はありますが、基本的に通らないと思っておきましょう。)
なお、賃借人は基本的に保証会社を選ぶことはできず、賃貸人側が指定した会社を使うことになります(場合によっては複数の保証会社から1社を選ぶことができますが、そうでないケースの方が多いです)。
保証会社と契約したくない場合は、契約が必須でない物件を探すのが無難です。
【保証会社と契約する際の「審査」について】
賃貸人側が保証会社を使う理由の1つに「審査」があります。保証会社は入居希望者の収入や犯罪的、過去の滞納履歴などを調べて審査します。審査に通った人は滞納リスクが少ないと判断されるので、賃貸人側も安心して貸すことができます。
審査の際に特に重視されるのは滞納履歴です。家賃の滞納だけでなく、クレジットカードやローンの返済に関する滞納履歴も調査されることがあります。特に、過去に利用した保証会社で何度も家賃を滞納し、代位弁済を受けている場合は、審査で落とされる可能性が高いです。
数日の支払い遅れや数回の滞納であれば不問になることもありますが、もし審査に落ちた場合は、別の保証会社を使える物件を探した方がいいでしょう。
参考:賃貸の保証会社の審査に落ちる理由と対策
2.保証会社を使うメリット
入居者が保証会社を使う最大のメリットは、連帯保証人が不要になることです。
親族と疎遠な場合などは連帯保証人になってくれる人がおらず、賃貸物件を利用できないところでも、保証会社を使えば解決できます。
とは言え、保証会社を使うメリットは、大家や不動産業者などの賃貸人側の方に多く存在します。
入居者が家賃を滞納しても保証会社が立て替えるため、賃貸人側に不利益はありません。
立て替えた家賃を督促するのは保証会社なので、賃貸人側が督促をする手間も省けます。
場合によっては更新料や原状回復費用、裁判費用まで保証してくれるので、賃貸人側は経営リスクを大幅に軽減できます。
3.保証会社を使うデメリット
入居者にとってのデメリットは、とにかくお金がかかるということです。
家賃に加えて保証料がかかりますし、保証会社との契約更新時には別途更新料も発生します。
また、家賃を滞納したときの督促も厳しくなります。保証会社は督促のノウハウを駆使して、適法かつ迅速な方法で督促を行えるからです。
一方、賃貸人側にとってのデメリットはほぼありません。強いて言えば「連帯保証人がいないこと」です。
保証会社の保証範囲は金銭的な部分に留まります。賃借人が騒音や異臭を発生させても、ゴミ出し等の規則を守らなくても、保証会社は関知しません。賃貸人側が貸借人に注意を促すか、法的措置を行うなどの選択肢を採るしかないのが実情です。
これに対して連帯保証人は、賃借人本人の債務を全て保証することになっています。「生活のルールを守る」ことも債務の一種であり、賃貸人側は連帯保証人に「賃借人が迷惑をかけているので改善させてください」と言うことができます。
実際、このデメリットを嫌って、保証会社と連帯保証人の両方を契約時に必須とする賃貸人もいるようです。
4.家賃滞納が発生した後の保証会社の対応
最後に、家賃滞納時の保証会社の対応について紹介していきます。
なお、細かい部分は保証会社によって異なるため、予めご了承ください。
(1) 家賃滞納後の代位弁済
賃借人に家賃の滞納があると、賃貸人側から保証会社へ連絡が行きます。
(※クレジットカードで家賃を払っている場合、賃貸人からの連絡がなくても滞納の事実が保証会社に伝わります。)
滞納を知った保証会社は、賃借人の代わりに家賃を立て替え払いします。これを「代位弁済」と言います。
家賃滞納〜代位弁済までの期間は保証会社によって差がありますが、早ければ報告を受けてから3日という業者もあるようです。しかし、多くは報告を受けた月の月末まで等でしょう。
たった1日の滞納でも、それを数ヶ月続ける場合には代位弁済がされることがあります。
(2) 督促(滞納から1ヶ月まで)
滞納から数日後には、保証会社から賃借人へ電話による督促が始まります。
また、同時に郵便で督促状も届きます。
引き落とし口座の残高不足などでたまたま引き落としできなかった可能性もあるので、この時点では「この日までに払ってください」という比較的優しい口調や文面のことが多いです。
(3) 督促の激化(滞納後1~2ヶ月程度)
滞納が2ヶ月程度まで及ぶと、貸保証会社は本格的に立て替えたお金を回収しなければなりません。
まず、電話での督促頻度が増えます。電話を無視しても、本人が応答するまで毎日数回はかかってくることもあります。
また、保証会社のスタッフによる訪問も行われるようになります。
書面による督促も並行して行われ、内容証明郵便で督促が届くこともあります。
なお、信販系の保証会社の場合、滞納期間が2ヶ月を超えるとブラックリストに登録されるおそれがあります。
こうなると銀行や貸金業者などから融資を受けられなくなり、クレジットカードも使えなくなってしまいます。
(4) 契約解除通知や法的措置の開始(滞納後3~6ヶ月程度)
この時期になると、賃貸人から賃貸借契約の解除通知が届く可能性があります。
「この日までに滞納分の家賃と遅延損害金を払わない場合、賃貸借契約を解除する」という旨の文面であることが多いです。
3ヶ月以上滞納している場合は「お金を払っても賃貸借契約は解除する」旨が書かれていることもあります。当事者間の信頼関係が破壊されたとして、物件の明渡しを求められるのです。
期限になっても支払わない場合、賃貸人や保証会社に訴訟を提起されます。訴訟の内容は概ね以下のようになります。
- 滞納家賃と損害金の支払い
- 賃貸借契約の解除
- 賃貸物件の明渡し
なお、契約解除後でも、滞納家賃や損害金、原状回復費用等は支払わなければなりません。
明渡しを拒んで住み続けていると、裁判所による強制執行が実施され、家財が運び出されるなどして強制的に明渡しさせられてしまいます。
[参考記事] 家賃滞納で建物明渡請求訴訟を提起したい5.賃貸保証会社がいる場合の滞納は厳禁
保証会社を使うかどうかは賃貸人側が決めることで、借りる方は基本的に拒むことができません。
保証会社は滞納した家賃を代位弁済してくれますが、督促は確実に行われ、滞納したままだといずれその物件には住めなくなります。
しかも、滞納した履歴は残るため、他の物件を借りづらくなる可能性まで高くなってしまいます。
「保証会社が保証してくれるから安心」と考えてはいけません。くれぐれも家賃は滞納しないようにしましょう。