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建物明渡し

即決和解|入居者の円滑な立退きを実現するために

不動産の入居者の立退きを確実に実現するためには、「即決和解」の手続きを利用することが有効です。

即決和解を利用すれば、和解調書の執行力をバックにして、期日通りに立退きが実現できる可能性が高まります。

この記事では、即決和解のメリット・手続きの流れ・注意点・費用などについて詳しく解説します。

1.即決和解とは?

即決和解とは、簡易裁判所で行われる和解手続きを意味し、「訴え提起前の和解」とも呼ばれています(民事訴訟法275条1項)。

立退きに関して賃貸人・賃借人間で和解を行う場合、必ずしも裁判所を通す必要はありません。

しかし、裁判外で和解を行った場合、仮に賃借人が合意内容を破って不動産に居座った場合、そのままでは強制執行ができないため、裁判により改めて立退きを求める必要があります。

このような二度手間を避けるため、和解自体を裁判手続きの中で行う方法(即決和解)が、立退き実務上よく用いられています。

【公正証書ではだめなのか?】
訴訟などを経ることなく、そのまま強制執行の債務名義として用いることができる書面としては、即決和解の和解調書以外にも「公正証書」が挙げられます。公正証書の中で、直ちに強制執行に服する旨の債務者の陳述を記載しておけば、「執行証書」として執行力を有するとされているからです(民事執行法22条5号)。
しかし、執行証書(公正証書)による強制執行の対象となるのは、基本的に金銭債務に限定されます。したがって、たとえば建物明渡債務のような非金銭債務については、執行証書(公正証書)に基づいて強制執行の手続きをとることはできないのです。
そのため、立退きに関しては公正証書ではなく、即決和解の方法をとるのが一般的となっています。

2.即決和解のメリット

即決和解のメリットは、主に和解調書の執行力を活用できる点と、手続きが迅速に完了する点の2つです。

(1) 和解調書を用いて直ちに強制執行が可能

即決和解が成立すると、裁判所書記官によって、合意内容を記載した和解調書が作成されます。

この和解調書の記載内容は確定判決と同一の効力を有し(民事訴訟法267条)、そのまま強制執行の債務名義とすることができます(民事執行法22条7号)。

これに対して、裁判外の和解にはこのような執行力が認められていないので、強制執行の手続きをとるには改めて訴訟を提起するなどのステップを踏まなければなりません。

したがって、即決和解の手続きにより裁判上の和解を成立させることには、万が一賃借人が前言を撤回して立退きを拒否した場合に備えて、強制執行に至るまでの二度手間を防げるメリットがあります。

(2) 訴訟よりも迅速に手続きが完了する

即決和解の手続きは、簡易裁判所に対する申立てから1~2か月程度で終了します。
これは、即決和解の内容については、申立ての段階ですでに当事者間で合意に至っているからです。

つまり、即決和解に関する交渉の主戦場は、賃貸人・賃借人間での相対交渉ということになります。

相対交渉で和解案に合意できれば、訴訟で徹底的に権利・義務を争う場合よりも、かなり早期に紛争を解決することができます。

この手続きの迅速性も、即決和解が持つメリットの一つといえるでしょう。

3.即決和解の手続きの流れ

即決和解が成立するまでの手続きの流れは、以下のとおりです。

(1) 当事者間で和解条件を話し合う

即決和解は当事者間に和解条件の合意があり、かつその合意を裁判所が相当と認めた場合に限り成立します。

したがって、簡易裁判所に対して即決和解の申立てをする前に、まずは当事者間で和解条件について話し合うことが必要です。

和解条件を決めるに当たって大きなポイントとなるのは、やはり立退料の金額です。
賃貸人の立場からは、立退料の相場を踏まえつつ、賃借人の交渉姿勢を見極めながら金額交渉を進めることになります。

また、建物の明渡日についても話し合っておく必要がありますが、その際には即決和解の成立スケジュールを考慮しなければなりません。

スケジュールは申立てをする簡易裁判所によっても異なりますが、基本的には、即決和解の申立てを行う予定の日から、おおむね1~2か月以上後の日を明渡日とするとよいでしょう。

(2) 和解条項案を作成する

賃貸人・賃借人間で、立退料の金額をはじめとする和解条件について合意に至った場合には、その内容をまとめた和解条項案を作成します。

合意内容が和解条項案に漏れなく・間違いなく反映されていることを、慎重に確認しましょう。

(3) 簡易裁判所に即決和解の申立てを行う

和解条項案が完成したら、簡易裁判所に対して即決和解の申立てを行います。

申立先は、申立人から見て、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所です。

また、不動産の明渡し(立退き)を請求内容とする場合、以下の書類が必要となります。

  • 申立書
  • 登記事項証明書(建物)(証明日から3か月以内のもの)
  • 賃貸借契約書写し(更新されている場合は、更新契約書を含む)
  • 解除通知(内容証明郵便)控え(解除による終了の場合)
  • 明渡合意書(申立てに先立ってあらかじめ合意書が取り交わされている場合)
  • 滞納賃料額等を証明する書類
  • 当事者の履歴事項全部証明書(当事者が法人の場合)または住民票(当事者が個人で、契約書や登記簿上の住所と現在の住所又は居所とが異なっている場合)

申立書の書式は、裁判所HPからダウンロードすることができます。

【参考】訴え提起前の和解手続の申立てに必要な書類(建物明渡の場合)(裁判所)

(4) 簡易裁判所が申立書類を審査する

簡易裁判所は、即決和解の申立書類を受理した後、和解の条件がそろっているかどうかを審査します。

その結果、簡易裁判所が当事者に対して、書類の追完や和解条項の修正を依頼するケースがあります。

簡易裁判所は、和解条項が法令違反である場合などを除いて、合意内容を実質的に変更するような要請を行うことはなく、形式的な修正等にとどまるケースがほとんどです。

そのため、基本的には簡易裁判所の指示に従い、書類の追完や和解条項の修正の対応を行えばよいでしょう。

審査の結果、和解条項の修正等が完了すると、簡易裁判所と当事者の間で和解期日の調整が行われます。

和解期日は、簡易裁判所から申立人に対する日程調整の連絡が行われた日から14日以上先で、当事者の都合がよい日が指定されます(東京簡易裁判所の場合)。

(5) 追加書類提出・期日呼出状等の送付

和解期日が指定されたら、申立人は以下の書類を簡易裁判所に対して追加提出する必要があります。

  • 和解条項6部
  • 当事者目録4部(相手方に代理人が予定されている場合には、その旨の記載があるもの)
  • 物件目録および図面6部(必要な場合に限る)

それぞれの書式は、上記の裁判所HPからダウンロードできます。

これらの追加提出書類を利用・参照して、簡易裁判所は相手方に対して、期日呼出状と和解条項を一括して発送します。

(6) 和解期日

和解期日では、当事者が簡易裁判所に出頭したうえで、裁判所から和解の意思について確認が行われます。

その場で当事者双方が和解条項について合意し、かつ裁判所が相当と認めた場合に、即決和解が成立します。

即決和解が成立した場合、和解調書に合意内容が記載されます。

和解調書に記載された合意内容は、確定判決と同一の効力を有し、そのまま強制執行の債務名義として用いることが可能です。

なお和解調書の正本は、原則として、和解期日当日にその場で受け取ることができます。

4.即決和解のデメリット・注意点

即決和解には、賃借人の立退きを円滑に実現するうえで多くのメリットがあり、賃貸人にとって非常に便利な手続きです。

その一方で、以下のデメリットが存在することに注意しましょう。

(1) 和解条項案を当事者間で作成する必要がある

即決和解は、基本的には当事者が作成した和解条項案を、簡易裁判所がそのまま認める手続きです。

そのため、和解条項案の作り込みは当事者で行う必要があります。

もし賃貸人・賃借人の間で希望条件がかけ離れている場合には、交渉段階での調整が非常に難しく、即決和解の手続きが利用できない可能性がある点に注意が必要です。

(2) 相手が出頭しない場合は和解が不成立となる

また、即決和解が成立するには、和解期日に当事者双方が出頭することが必要です。

もし相手方が和解期日に出頭しない場合、簡易裁判所によって和解不成立とみなされる可能性があります(民事訴訟法275条3項)。

単に相手方の都合が突然悪くなったというだけであれば、簡易裁判所に和解期日の延期を申し入れれば問題ありません。

しかし、相手方が即決和解に応じない姿勢を見せ、和解期日への出席を拒否する場合には、即決和解が成立する見込みはなくなってしまうことに注意しましょう。

5.即決和解の手続きにかかる費用

即決和解の手続きにかかる費用は、簡易裁判所に納付する手数料と弁護士費用の2つに大きく分かれます。

(1) 申立手数料・送付手数料

即決和解の申立てに際して簡易裁判所に納付する手数料は、以下のとおりです(東京簡易裁判所の場合)。

①申立手数料
1件につき、原則として収入印紙2000円
※申立人・相手方が複数の場合は、事案によって手数料が異なります。

②送付手数料
相手方1名につき郵便切手645円
(内訳:500円切手1枚、50円切手2枚、20円切手2枚、5円切手1枚)
※送付書類の重量によっては、追加で郵便切手が必要になることがあります。

(2) 弁護士費用

立退きに関する即決和解を弁護士に依頼する場合、弁護士事務所の定める報酬体系や、どの範囲の業務を依頼するかによって弁護士費用の金額は異なります。

立退き交渉の段階からフルパッケージで依頼する場合、一般的には、着手金は数十万円~100万円程度、報酬金は着手金と1~1.5倍程度となるケースが多いです。

詳しい報酬体系については、依頼先の弁護士にご確認ください。

6.まとめ

賃借人の立退きを円滑に実現したい建物のオーナーにとって、即決和解は利用価値が高い便利な制度です。

即決和解の手続きには専門的な部分がありますので、スムーズに即決和解を成立させるためには、弁護士への相談をお勧めいたします。

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