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入居者トラブルに関するよくある質問

Q

賃貸アパートを経営しており、ある貸室の賃借人から、他の貸室のトイレのように新品で新型の温水洗浄便座に取り替えてほしいと要求があったのですが、応じなければなりませんか?

A
応じる必要はありません。

<基本的な考え方>
賃貸人は、賃借人に賃貸物件を使用収益させる義務や修繕義務を負っています。もっとも、賃借人の言いなりになって物件設備を整えなくともよいのです。

合意の内容は、片方の一方的な主張だけで決まるものではありません。社会通念、つまり常識に基づいて、建物の性質や家賃などさまざまな事情を加味して判断されることが基本です。
備品は賃貸物件を使用収益するために必要となります。アパートではトイレは必要不可欠と言っていいでしょう。しかし、正常に作動し機能を保っているのであれば、通常は問題となりません。形式が古いかどうか、中古かどうかも含めてです。
もちろん、故障などにより通常の機能が損なわれているのであれば、話は別かもしれません。それでも、修理あるいは以前の機種の新品との交換をすればよく、新型にする義務までは負わないのです。

本件では、ほかの貸室のトイレは新品で新型の温水洗浄便座であるという事情があります。
しかし、賃貸借契約はあくまで個人と個人の契約です。賃貸人や物件が同じでも、賃借人が違えば契約内容は異なります。物件に備え付けるべき備品は、各賃借人との間での合意により決まることを忘れてはなりません。
賃貸借契約の特約、あるいは入居時の確認で賃借人から直接クレームがあったなど、賃借人との間で新品新型の温水洗浄便座に取り替えることが合意内容となったといえるような事情がないのであれば、事後的に賃借人が交換を要求してきたとしても、契約に基づく法的な主張とは言えません。

よって、ほかの貸室のトイレが新品新型の温水洗浄便座だからと言って、特約などの特別な事情がない賃借人からの便座交換の要求に応じる必要はありません。
さらに、賃借人が自主的に便座を交換したとしても、賃貸人はその費用を負担することもないのです。


<賃借人による取替え 賃貸人の同意>
賃貸人の同意がなければ、賃借人は自己負担でもトイレを取り換えることはできません。
所有者たる賃貸人に建物を加工する許可をもらわなければいけませんし、賃貸借契約から生じる法律関係の上でも、
・原状回復義務(民法621条)
・造作買取請求権(借地借家法33条)
などの問題があります。
賃借人は、原則として以前の便器を保管し建物明渡の際に再設置しなければいけません。例外的に、期間満了または解約申し入れによる契約終了の際に、建物の付属品である「造作(ぞうさく)」を時価で買い取るよう賃貸人に請求できますが、造作設置につき賃貸人の同意があることが前提です。
そのほか、有益費償還請求権(民法608条2項)などが生じる可能性もあります。

賃借人が自己負担でトイレを取り換えることに同意するときは、下記事項を文書に残しておきましょう。
・新たに取り付ける水洗便座のメーカーや品番など
・賃貸人が賃借人に承諾したこと
・もともとのトイレの保管、処分、および費用負担
・原状回復義務(民法621条)
・造作買取請求権(借地借家法33条)
・そのほか有益費償還請求 民法608条2項
など
[質問 86]
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