不動産仲介業についてさらに詳しく

1.不動産仲介業とは何か

いわゆる不動産仲介業とは、宅地建物取引業の一種で、宅地・建物の売買・交換・賃貸の媒介を業として行うものをいいます(宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という)2条2号)。不動産媒介業という言い方をする場合もあります(以下、不動産媒介業と呼びます)。

例えば、家を売りたい人と家を買いたい人との間を取り持ったりすることを仕事にする場合が、これにあたります。

2.不動産媒介業を営むために必要なもの

(1)免許

不動産媒介業を営むには、都道府県知事の免許を受けなければなりません(宅建業法3条1項、12条)。この免許は5年ごとに更新が必要です(3条2項、3項)。

(2)宅地建物取引士

また、成年かつ専任の「宅地建物取引士」を一定人数そろえた事務所が必要です(宅建業法31条の3)。

この宅地建物取引士は、

  • ① 宅地建物取引士資格試験(いわゆる「宅建」)に合格し、
  • ② 一定の要件を備えて都道府県知事の登録を受け、
  • ③ 知事から宅地建物取引士証の交付を受けること

が必要です(宅建業法18条1項、22条の2)。

なお、宅建の試験は宅地建物取引業すべてで共通です。不動産媒介業に特化した試験というのはありません。

(3)その他

実際に不動産媒介業を始めるには、一定の「営業保証金」を供託する必要がある(宅建業法25条)などの規制があります。

3.「媒介契約」とは何か

不動産の媒介契約は、不動産の売買、交換または賃貸(以下「売買等」といいます)を行いたい人が、その成立の斡旋を委託し、媒介業者が引き受ける契約です。

あくまで「契約の斡旋」が業務なので、媒介業者自身は、不動産の売買等そのものの当事者にはなりません。また、売買等の当事者に代わって契約締結手続きを行うわけでは無い点で、「代理」とも異なります。(なお、「代理」の場合は双方代理の原則無効(民法108条1項本文)等の制限がありますので、媒介業を行う場合は代理に踏み込まないように注意が必要です。)

また、媒介契約は請負とは異なり、委託された売買等を成約させる義務は負いません(契約期間内に売買等が成立しなくても、媒介契約違反にはなりません)。さらに、契約の成立に向けて売り込みを行うといった奔走義務も、負わない場合があります。

4.標準媒介契約約款(売買又は交換の媒介契約の場合)

売買又は交換の媒介契約については、一定の内容を定めた書面を交付することが必要とされていますが(宅建業法34条の2)、国土交通省は、こうした法定の記載事項や実務上必要な事柄について定めた標準的な契約書および約款(「標準媒介契約約款」)を作成・公表しています(平成29年3月28日国土交通省告示第246号)。不動産媒介業者は、基本的にこれを用いることになります。

なお、賃貸の媒介契約については宅建業法34条の2の適用は無いので、標準媒介契約約款はあくまでも売買又は交換の媒介契約についてのものです。

この標準媒介契約約款には、契約内容が異なる3種類の約款があります。

(1)専任媒介契約

この契約を結ぶと、依頼者が他の業者に媒介や代理を依頼できない契約です。もっとも、依頼者が自分で見つけた相手方と取引することは禁止されません。

(2)専属専任媒介契約

この契約を結ぶと、依頼者が他の業者に媒介や代理を依頼したり、依頼者自身が見つけた相手と直接取引をしたりすることができない契約です。

(3)一般媒介契約

この契約を結んだ場合、依頼者は他の業者にも媒介や代理を依頼することができます。

5.報酬

(1)報酬の発生時期

①宅建業者が②媒介契約に基づき③媒介行為を行ったこと④によって⑤売買等の契約が成立した場合に、報酬請求権が発生すると考えられています。

標準媒介契約約款においても、これを前提に「乙(※媒介業者)の媒介によって目的物件の売買又は交換の契約が成立したとき」に報酬を請求できると定めています。

媒介行為を行っても売買等の契約が成立しなかった場合や、媒介行為とは無関係に売買等の契約が成立した場合には、報酬請求権は発生しません。

ちなみに、業界の慣行として、売買等の契約の成立時に報酬の半額を、売買等の完了時(登記や引渡しの完了時)に残りの半額を支払うという条項を設けることが少なくないと言われます。もっとも、この場合も報酬請求権自体は契約成立時(つまり完了前)に満額発生し、ただ半額について行使できない状態にあるのだと考えられます。

(2)報酬額の上限規制

不動産媒介の報酬については国土交通大臣が上限を定めるものとされており(宅建業法46条1項、2項)、具体的には、売買等の取引額のうち200万円以下の部分の5.5%、200万円を超え400万円以下の部分の4.4%、400万円を超える部分の3.3%とされています(令和元年8月30日国土交通省告示第493号)。

取引額が400万円を超えた場合、400万円以下の部分の額は一定になることから、400万円を超える契約については、「400万円を超える売買金額×3.3%+66,000円(税込)」という簡易計算法が広く用いられています。

(3)報酬請求権の成否が問題となる場合

1 売買契約が解除された場合

成立にあたって問題があって無効や取消しされた場合(詐欺や錯誤など)には、報酬請求権は発生しません。

他方、売買等の契約成立には問題がなく、その後の買主の代金不払い等が原因で解除されたような場合には、報酬請求権はそのまま発生します。

もっとも、解除原因に、媒介業者の義務違反があったような場合(重要事項を説明しなかった等の場合)には、報酬請求権が発生しないことがあります。

2 買主が銀行の融資審査に通らなかった場合

標準媒介契約約款によれば、融資の不成立が理由で売買契約が解除された場合には、媒介報酬を返還しなければなりません。(専任媒介契約約款9条2項など)。

3 売買契約が条件付きで成立した場合

「停止条件付契約として成立したとき」は、条件が成就した場合にのみ報酬を請求できるとされています(専任媒介契約約款8条1項ただし書きなど)。

「停止条件」とは、条件が成就した場合に契約が有効になるような条件を言います。

例えば、「この契約は行政の開発許可が下りた場合に有効となる。」といった特約が付されていた場合には、行政の開発許可が下りて初めて報酬を請求できることになります。

4 仲介していた相手と、直接取引をされた場合

例えば売主Aさんに買主Bさんを紹介していたところ、AさんとBさんがあなたのあずかり知らないところで売買契約を締結してしまった場合などです。

このような場合、AさんとBさんの取引にはあなたの媒介が寄与していることから、その寄与の割合に応じた報酬を請求することができます(専任媒介契約約款11条など)。

5 専属専任媒介契約中に自己発見取引をされた場合

いわゆる自己発見取引とは、媒介契約の依頼者が自ら発見した相手方と売買等を締結することを言います。通常は禁止されておらず、報酬を請求することはできません。

もっとも、専属専任媒介契約では、この自己発見取引も禁止されており、自己発見取引が行われた場合には、約定報酬額に相当する額の違約金を請求できます(専属専任媒介契約約款12条2項)。

6.媒介業者の注意義務

媒介業者は、依頼者や第三者との関係でいくつかの注意義務を負い、これに違反した場合は損害賠償義務を負うことがあります。
明文で定められた義務の他にも、信義誠実の原則(宅建業法31条1項)や善良な管理者としての注意義務(民法656条、644条)によって、さまざまな行為を要求されます。

具体的には、権利関係や物件の状況等について、調査して説明することが要求されています。たとえば所有権や抵当権、競売の有無、法令上の用途制限であるとか、ある程度明らかな瑕疵の有無などについては、調査して問題があれば説明することが求められています。

また、こうした説明義務の一部は、重要事項説明義務(宅建業法35条)として特に法に定められています。逆に言えば、宅建業法35条の重要事項説明義務を果たしたからといって、媒介業者の注意義務としての説明義務等を全て果たしたとは認められないので気を付けましょう。

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